NGTS-4b

系外惑星NGTS-4bは、地球から見て約920光年彼方、はと座の領域に位置する橙色矮星NGTS-4を周回する天体です。この惑星は、2018年にチリ共和国のパラナル天文台で行われた観測プロジェクト、次世代トランジットサーベイ（NGTS）のデータ解析によって、ウォーリック大学を中心とした国際研究チームによって発見されました。

NGTS-4bは、そのサイズが地球の約3.18倍と比較的小さく、これは海王星よりも若干小さい大きさに相当します。質量については地球の約20.6倍と計測されています。主星NGTS-4に非常に近接しており、その軌道は約284万キロメートル以内という狭い範囲にあります。そのため、わずか約1.3地球日という極めて短い周期で主星を一周しています。この近距離にあるため、惑星の表面温度は非常に高く、約1,650ケルビン（摂氏約1,377度）に達すると推定されています。これらの特徴から、NGTS-4bはしばしば「ミニ・ネプチューン」や「ホット・ネプチューン」といった分類に位置づけられることがあります。さらに、測定された密度は約3.45 g/cm³であり、これは組成が完全に水である場合や、岩石質の中心核の周囲を揮発性の物質が覆っている構造である場合の密度と整合性が見られます。

NGTS-4bの存在は、トランジット法と呼ばれる手法によって確認されました。この方法は、惑星が主星の手前を通過する際に生じる主星のわずかな減光を捉えることで惑星を検出するものです。驚くべきは、NGTS-4bのトランジットによって観測された主星の減光率がわずか0.13 ± 0.02パーセントしかなかったことです。これは、これまでに地上からの観測によるトランジット法で発見された系外惑星の中で最も小さい減光率を記録しました。それまで地上からの観測で最小の減光率を示していた惑星、KELT-11bの減光率が約30パーセントであったのと比較すると、NGTS-4bの減光がいかに微弱であったかがわかります。この発見は、NGTSプロジェクトが高い観測精度を有していることを証明するものでした。

NGTS-4bを特に注目すべき存在にしているのは、この惑星が「ネプチュニアン砂漠」と呼ばれる領域で発見された点です。ネプチュニアン砂漠とは、恒星から非常に近い軌道に位置する領域でありながら、海王星程度の質量を持つ惑星がほとんど存在しないことが知られている領域です。従来の惑星形成・進化理論では、恒星に近い位置にある惑星は、主星からの強力な紫外線やX線の放射を浴びることで、その厚い大気が宇宙空間へ蒸発してしまい、最終的には岩石の核だけが残されると考えられてきました。この理論に基づけば、公転周期が4日未満のような恒星に非常に近い軌道には、海王星や天王星のようにガスを主成分とする厚い大気を持つ惑星は存在しないはずでした。しかし、NGTS-4bは、海王星クラスの質量を持ちながら、明らかにガスからなる固有の大気を保持している様子が観測され、この従来の理解に疑問を投げかけました。

厚い大気を維持できている理由については、いくつかの可能性が議論されています。一つは、NGTS-4bが現在観測されている軌道に移動してきたのが比較的最近、具体的には過去100万年以内の出来事であるという可能性です。この場合、惑星にはまだ大気が蒸発しきるほどの時間が経過していないことになります。もう一つの可能性として、NGTS-4bは元々もっと大きな惑星であったが、主星からの放射を受けて大気が徐々に剥ぎ取られ、小型化していく過程にあるという説も挙げられています。実際に、NGTS-4bは主星から放射される強い極紫外線（EUV）やX線の影響を受けており、大気蒸発によって質量が減少していると考えられています。

このように、海王星クラスの惑星が存在しないと考えられていた領域である「ネプチュニアン砂漠」で厚い大気を伴って発見されたことから、NGTS-4bは研究者たちから「Forbidden planet」（禁断の惑星、または禁じられた惑星）という興味深いニックネームで呼ばれています。この発見は、系外惑星の大気散逸プロセスや惑星の移動、そしてネプチュニアン砂漠が形成されるメカニズムについて、我々の理解を深めるための重要な手がかりを提供しています。NGTS-4bは、従来の理論だけでは説明しきれない、多様な惑星の進化の可能性を示唆する存在と言えるでしょう。

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