Napster

Napster（ナップスター）

Napsterは、P2P（ピアツーピア）技術を用いたファイル共有サービスとして始まり、その後、音楽配信サービスへと展開したブランドです。その歴史は、音楽業界におけるデジタル化の波、著作権問題、そしてオンライン音楽配信の変遷を象徴しています。

企業としてのNapster

Napsterは、その歴史の中で複数の企業体によって運営されてきました。

初代Napster社

ファイル共有サービスを提供していた初代Napster社は、1999年 5月、ショーン・ファニング、ジョン・ファニング、ショーン・パーカーの3名によって設立されました。しかし、著作権侵害に関する訴訟により、2003年 6月に連邦倒産法第7章に基づき清算されました。

2代目Napster社（旧Roxio社）

初代Napster社の資産は、2002年11月にRoxio社によって買収されました。Roxio社は、パッケージソフトの製造・販売事業を展開していましたが、音楽配信サービス「Napster 2.0」を開始し、2004年8月には社名をNapsterに変更しました。その後、2008年にBest Buyに買収され、2011年には音楽配信事業をRhapsodyに売却し、Napsterブランドは一時的に消滅しました。Roxioのソフトウェア部門は、その後、Sonic Solutions、Rovi Corporationを経て、2012年にCorel Corporationに譲渡され、Roxioブランドとして存続しています。

ファイル共有ソフト・サービスとしてのNapster

誕生と仕組み

Napsterは、1998年にショーン・ファニングによって開発されたP2Pファイル共有ソフトです。ユーザーは、共有したい音楽ファイルのメタデータをNapster社のサーバーに登録し、他のユーザーがそのリストからファイルを検索・ダウンロードする仕組みでした。ファイルの実際の共有は、ユーザー同士が直接行うハイブリッドP2P方式を採用していました。

ソフトの詳細

Napsterは、単なるファイル共有ツールではなく、ユーザー間のコミュニケーションを促進する機能も備えていました。利用にはメールアドレスや個人情報の登録が必要であり、共有するファイルのフォルダごとに公開設定を調整できました。公開されたファイルの情報には、IPアドレス、ポート番号、ファイル名、サイズなどが含まれていました。

プロトコルとネットワーク負荷

Napsterのプロトコルは公開されていませんでしたが、暗号化されていなかったため、解析され、互換ソフトウェアが登場しました。初期のインターネット環境では、Napsterの利用は大学や企業内ネットワークに集中し、ネットワーク負荷が問題となることもありました。

法的懸案と訴訟

Napsterは、[著作権]]を無視したファイル共有が横行したことにより、アメリカレコード協会]から訴訟を起こされ、敗訴しました。この訴訟は、[[インターネットにおける著作権問題に大きな波紋を広げました。

音楽配信サービスとしてのNapster

北米・欧州での展開

2代目Napster社は、2003年10月に「Napster 2.0」として音楽配信サービスを開始しました。当初はDRM（デジタル[[著作権管理]]）技術を使用していたものの、2008年にはDRMフリー化を発表しました。2011年にRhapsodyに買収され、一時サービスは終了しましたが、2016年にはRhapsodyがブランド名をNapsterに変更し、ブランドが復活しました。

日本での展開

日本では、2006年にタワーレコードとの合弁会社「ナップスタージャパン」が設立され、音楽配信サービス「Napster Japan」が開始されました。月額定額制のサブスクリプションサービスを提供し、携帯端末への転送機能も備えていました。しかし、2010年にサービスを終了し、その後、Napsterの楽曲はRakuten Musicに提供されました。

沿革

1999年 5月：Napster, Inc.設立、ファイル共有ソフトが普及。
2000年 7月：RIAAがNapster社を提訴。
2003年 5月：Roxio社がNapster社の資産を買収。
2004年 8月9日：Roxio社が社名をNapsterに変更。
2006年 10月3日：日本で音楽配信サービス開始。
2008年 1月7日：ダウンロード販売の楽曲をDRMフリー化。
2010年 3月1日：日本法人のサービス終了を発表。
2017年 5月31日：Napsterの楽曲がRakuten Musicに提供開始。

注釈

Napsterは、その革新的な技術と著作権問題によって、音楽業界に大きな影響を与えたサービスです。ファイル共有ソフトとしての登場から、音楽配信サービスとしての復活まで、その歴史は複雑であり、多くの教訓を与えてくれます。