Natron

Natron（ナトロン）について

Natronは、オープンソースのノードベースのデジタル合成ソフトウェアです。そのユーザーインターフェースとコンセプトは、Avid Media Illusion、Apple Shake、Blackmagic Fusion、Autodesk Flame、Nukeといった業界標準のソフトウェアから大きな影響を受けています。OpenFX 1.4 APIに準拠したプラグインをサポートしており、幅広いOpenFXプラグインとの互換性があります。

名前の由来

Natronという名前は、タンザニアにあるナトロン湖に由来しています。この湖は、その独特な環境によって動物の死骸が自然に保存されることから、「自然の視覚効果」を生み出す場所として、Natronの開発責任者であるアレクサンドル・ゴーティエによって名付けられました。

歴史

Natronは、2012年6月にアレクサンドル・ゴーティエ氏によって個人プロジェクトとして開始されました。その後、このプロジェクトはフランス国立情報学自動制御研究所が主催する「2013 Boost Your Code」コンテストで優勝を果たしました。この受賞により、Natronは研究所内でオープンソースソフトウェアとして開発するための12ヶ月間の雇用契約が結ばれました。

最初に広く公開されたリリースはバージョン0.92（2014年6月6日）で、このバージョンではロトスコープ機能とクロマキー機能が導入されました。その後のベータ版では、モーションブラー、OpenColorIOによるカラーマネジメント、ビデオトラッキングなどの追加機能が実装されました。2014年12月22日にはバージョン1.0がリリースされ、プロのコンピュータグラフィックアーティストであり教師でもあるフランソワ・"CoyHot"・グラサールによる大規模なサンプルプロジェクトを通じて、Natronが100を超えるノードでインタラクティブにグラフを実行できることが実証されました。さらに2015年1月には、パリ第8大学のArt and Technology of Image（ATI）部門が、学生やアーティストにコンピュータグラフィックスを教えるために、Blender、Krita、Natronといったプロ品質の自由なオープンソースソフトウェアに切り替えることを発表しました。

ライセンス

バージョン2.0以前のNatronは、Mozilla Public Licenseバージョン2.0に基づいて配布されており、クローズドソースのプラグインでの再配布が可能でした。しかし、バージョン2.0以降、ソフトウェアの商業化を促進するため、GNU General Public Licenseバージョン2以降に変更されました。Natron 2.0以降のバイナリとともに配布されるすべてのプラグインはGPLv2と互換性がある必要があります。商用プラグインを含むクローズドソースのプラグインはNatronで使用できますが、FSFに基づくGPLでは、クローズドソースのプラグインやGPLv2で配布されていないプラグインのロードやリンクは許可されていません。GPL互換ライセンスについては、個別に配布する必要があります。Natronによって生成されたデータはGPLライセンスの影響を受けず、プログラムの出力の著作権はユーザーに帰属します。

特徴

ハードウェア要件

• - 最小動作要件：64ビットプロセッサ、少なくとも6GBのRAM（8GB推奨）。
• - OpenGL 2.0またはOpenGL 1.5をサポートするグラフィックカードと、いくつかの一般的な拡張機能（ARB_texture_non_power_of_two、ARB_shader_objects、ARB_vertex_buffer_object、ARB_pixel_buffer_object）が必要です。

レンダリングエンジン

• - 32ビット浮動小数点リニアカラー処理パイプラインを採用し、すべてのフレームは浮動小数点RGBAサンプルとして表現され、アルファ合成演算子を利用できます。
• - マルチコアアーキテクチャに対応し、すべての処理はスレッドプールパターンを使用してマルチスレッド化されています。
• - カラーマネジメントは、OpenColorIOライブラリによって処理され、アカデミー賞科学技術部門が提案したACESカラーエンコーディングシステムもサポートしています。
• - OpenImageIOを使用して、マルチレイヤーOpenEXRを含む多くの画像形式をサポートしています。追加の画像レイヤーを使用して、複数のカラーレイヤーや深度、オプティカルフロー、視差、マスクなどの非カラー情報を保存できます。
• - FFmpegライブラリを通じて、DNxHDやApple ProResなどのデジタルインターミディエイトフォーマットを含むビデオファイルの読み書きをサポートしています。
• - OpenFX 1.4 APIを完全にサポートしており、オープンソースまたは商用プラグインを使用できます。
• - 計算負荷の高い視覚効果の出力をプレビューするための低解像度レンダリングをサポートしています。

編集能力

• - 画像変換（位置、回転、スケール、スキュー）
• - ビデオトラッキング機能
• - キーイング：キーヤー、クロマキーヤー、差分キーヤー、色相キーヤー、PIKキーヤー
• - ペイント：ソリッド、鉛筆、消しゴム、クローン、リビール、ぼかし、にじみ、覆い焼き、焼き込み
• - ベジェ曲線を使用した手動ロトスコープ
• - カラー変換、幾何学的変換、画像ジェネレーターなど、さまざまな追加効果が利用可能
• - ベルンシュタイン多項式（ベジェ曲線の背後にある多項式基底）を使用したキーフレームベースのパラメータアニメーション。
• - アニメーションカーブ編集：カーブエディター
• - キーフレーム編集：ドープシート
• - ステレオ3Dおよびマルチビュー処理のサポート

その他の機能

• - コマンドラインによるバッチモードレンダリングのサポートにより、最終レンダリングをレンダーファームで処理できます。
• - プロジェクト形式はXMLで記述されており、人間が簡単に編集できます。
• - ノードプリセットは、XMLを介して簡単にインポート/エクスポートできます。
• - Python（Python 2.7）によるスクリプト記述。
• - SeExpr（ウォルト・ディズニー・アニメーション・スタジオ）によるスクリプト記述。
• - ハードウェアアクセラレーションによる2D/3D視覚効果開発のためのWebGL 1.0スクリプト言語（Shadertoy）。
• - カスタマイズ可能なUI。
• - 「PyPlug」カスタムノード作成システム（Nuke Gizmosに相当）。

関連項目

• - ビデオ編集ソフトウェアの一覧
• - ビデオ編集ソフトウェアの比較

脚注

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外部リンク

• - 公式サイト

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