NAVI

『NAVI』の歴史と特徴

『NAVI』は、東京都に本拠を置く二玄社が1984年から2010年まで発行していた月刊自動車雑誌です。この雑誌は『カーグラフィック』の姉妹誌としてスタートし、その名称は「New Automobile Vocabulary for the Intellectuals（インテリのための新たな自動車のボキャブラリー）」を表しています。当初は社会学や技術的視点で自動車に関する情報を提供していましたが、徐々に自動車関連のライフスタイルにも焦点を当て、交通安全や環境問題など様々なテーマを扱うようになりました。

創刊と内容の進化

1984年4月に創刊された『NAVI』は、初代編集長大川悠のもと、フランス車、イタリア車、イギリス車やスウェーデン車などの輸入車を特集し、後には日本車も多く取り扱うようになりました。また、自動車愛好者を指す「エンスー」という言葉も、渡辺和博による造語で、本誌で初めて使われました。

誌面は、自動車評論家徳大寺有恒や吉田匠、清水和夫などの専門的記事に加え、小説家や学者による評論や対談記事も掲載され、多様な視点から自動車文化を紹介しました。また、田中康夫と渡辺和博の連載による東京モーターショーに関する批評も人気を集めていました。特に、毎年3月号には前年に登場した自動車を座談会形式で総括する「ナビトーク」が掲載され、多くの読者に支持されていました。

鈴木正文編集長の任期

1989年から1999年にかけて二代目編集長となった鈴木正文は、新左翼の活動家として知られていますが、編集方針はファッションを重視し、高級ブランドの紹介が増えました。鈴木の時代には、ファッション雑誌的な記事やタイアップが向上し、彼自身も湾岸戦争に対する反戦集会を誌上で呼びかけるなど、社会的な問題にも関与しました。しかし、その後の編集部員の抗議行動により、彼の退任後は編集方針が変わり、品質の維持に苦労しました。

休刊とその背景

2010年になると、広告収入の減少や読者層の高齢化が影響し、4月号で休刊することが決まりました。最後の編集長、塩見智は、誌面刷新を試みるも、状況の改善には至りませんでした。高まる若者の車離れ傾向も、さらなる発行部数の減少を招いた要因として挙げられます。

主なコーナーと特色ある記事

『NAVI』には数多くの連載やコーナーが設けられていました。特に注目されるのが、清水和夫による「ダイナミック・セーフティーテスト」で、様々な車両の性能を比較する内容です。また、「矢貫隆の交通問題シリーズ」では自動車を取り巻く問題に焦点を当て、「志賀正浩の車中対談」では有名人とクルマに関する会話が繰り広げられるなど、多様性のあるコンテンツが魅力的でした。

さらに、驚くべきことに、過去の一時期には白洲次郎が「日本国憲法とベントレー」という題で連載を行い、寬仁親王との対談なども取り上げられました。これにより、『NAVI』は単なる自動車雑誌に留まらない文化的な発信源ともなったのです。

最後に

『NAVI』はその28年間の歴史の中で、自動車の情報だけでなく、ライフスタイルや社会問題など多岐にわたるテーマを取り上げ、多様な読者層に支持されてきました。その終焉は時代の流れを反映し、車に対する興味や関心の薄れを感じさせるものでしたが、かつての輝かしい記録と影響力は今も多くの人々に語り継がれています。

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