OK-GLI

OK-GLI、正式にはブランアナログBST-02と呼ばれる機体は、ソビエト連邦が開発した宇宙往還機「ブラン」計画において、大気圏内での飛行試験に特化した重要な役割を担いました。1970年代に米国が進めるスペースシャトル計画への対抗として開始されたブラン計画は、その一環として複数の試験機を生み出しましたが、中でもOK-GLIは、動力飛行から滑空着陸までの一連の操作を検証するための、唯一の自力離陸能力を持つ機体でした。

この機体は1984年に建造され、翌1985年から1988年にかけて、カザフスタンのバイコヌール宇宙基地を拠点に合計25回の試験飛行を実施しました。さらに飛行試験に先立ち、地上でのタクシー試験も9回行われています。これらの飛行を通じて、ブランの設計や大気圏内での操縦方法に関する貴重なデータが収集されました。OK-GLIの大きな特徴は、後部に搭載された4基のリューリカ＝サトゥールン AL-31ターボファンエンジンです。これらのエンジンを駆動させるための燃料タンクは、機体後部の貨物室の約4分の1を占有していました。米国のスペースシャトル試験機「エンタープライズ」が自力で離陸する能力を持たず、母機からの空中発射に依存していたのに対し、OK-GLIは自身のジェットエンジンで滑走路から直接離陸することが可能でした。離陸後、目的の高度に達するとエンジンは停止され、そこから滑空に移行し、着陸までパイロットが機体を制御するという方式が取られました。この試験方法は、ブランが大気圏再突入後に迎える滑空フェーズの挙動を正確に把握するために不可欠でした。

ブラン計画がソビエト連邦の崩壊とともに中止された後、OK-GLIはその役目を終え、しばらくはモスクワ近郊のジュコーフスキー空軍基地で保管され、航空宇宙ショー「MAKS」などで展示される機会もありました。しかし、2000年には転機が訪れます。オーストラリア人宇宙飛行士ポール・スカリー＝パワーが経営する「ブラン・スペース・コーポレーション」という企業に売却されたのです。OK-GLIは分解された後、船に積まれ、スウェーデンのヨーテボリ港から遠くシドニーを目指しました。2000年2月9日にシドニーのダーリングハーバーに到着した機体は、現地の観光名所として数年間展示されることとなりました。

特に、2000年に開催されたシドニーオリンピックの期間中には、OK-GLIの再組立ての様子が一般に公開され、大きな注目を集めました。来場者は、宇宙船の周りを歩くだけでなく、貨物室内部に特別に設けられた通路を通って、その巨大な内部構造を見学することができました。当初はオーストラリア国内やアジア各地での巡回展示も計画されていたようですが、残念ながらオリンピック後に所有企業が破産してしまい、OK-GLIの運命は暗転します。機体は防水シートをかぶせられただけの状態で、何年もの間、屋外に柵で囲まれて放置されることになりました。この過酷な環境下で、機体の素材は劣化し、心ない破壊行為によって損傷も受けたとされています。

その後、OK-GLIは再び売りに出されます。ロサンゼルスのラジオ局が行ったオークションでは、開始価格が600万ドルという高額設定でしたが、買い手は現れませんでした。2004年9月には、ドイツのジャーナリストたちが中東のバーレーンでこの機体を目撃したことが報じられます。そして2005年、ドイツのジンスハイム自動車・技術博物館がOK-GLIを購入するに至ります。しかし、バーレーンでの保管期間はさらに5年間続きました。これは、機体の所有権や移送に関する国際法上の問題が解決されるまでに時間を要したためです。

最終的に、2008年3月4日、OK-GLIは船によってドイツへと輸送されました。ドイツ国内での輸送中、河川用の艀から大型輸送船に移す際に、船尾を支える装置に不具合が生じ、機体の尾部が甲板の高さから落下するという事故が発生しました。幸いにも、この事故による負傷者はなく、機体および輸送船への損傷も軽微で済みました。無事にシュパイヤー技術博物館に到着したOK-GLIは、修復作業を経て、現在では来場者がその内部に入って見学できる魅力的な展示物として公開されています。かつてソ連の威信をかけて開発され、数々の試験飛行を行ったこの機体は、波乱に満ちたその後の歴史を経て、多くの人々に宇宙開発の夢と現実を語りかけています。

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