Oh!FM

『Oh!FM』は、かつて日本ソフトバンク（現SBクリエイティブ）が発行していた、富士通製パーソナルコンピュータのFMシリーズに特化した専門雑誌です。FMシリーズのユーザーコミュニティにとって、ソフトウェアやハードウェアに関する豊富な情報を得る上で不可欠な存在でした。本誌はその後、主要な対象機種の変遷に合わせて『Oh!FM TOWNS』、そして『FMVファミリー』へと誌名や焦点を変えながら刊行が続けられました。

歴史

本誌の歴史は1982年12月に始まります。季刊誌として冬号からスタートし（創刊号の発行日付は翌1983年1月1日）、当初はFMシリーズ全般を広く扱いました。その後、早い段階で刊行ペースを上げ、1983年6月の第3号からは隔月刊に移行。さらに1984年3月の4月号からは月刊誌となり、より頻繁に新しい情報を届けられるようになりました。この月刊化号から使われた特徴的なロゴは、「O」の文字が二重丸になっており、誌名が『◎h!FM』と表記されることもありました。

時代の流れと共に、富士通のパソコン主力機種がFM TOWNSシリーズに移ると、雑誌もそれに合わせて内容を刷新します。1991年9月の10月号をもって、誌名は『Oh!FM TOWNS』に改題されました。この際も、創刊からの通算号数は引き継がれました。新しい誌名のロゴもFM TOWNS本体のロゴデザインを踏襲しており、「FM」が小さく書かれた『Oh!FMTOWNS』という表記も見られました。

しかし、パソコン市場全体の変化と、富士通が主力機種をDOS/V|DOS_V機であるFMVシリーズへと大きく転換した影響を受け、『Oh!FM TOWNS』は1996年1月発行の2月号をもって休刊となります。これは、同じくソフトバンクから発行されていた他のパソコン雑誌『Oh!X』の休刊（1995年12月号）に続く動きでした。

『Oh!FM TOWNS』の休刊後、その役割は後継誌に引き継がれます。1996年4月24日、FMVシリーズに特化した専門誌『FMVファミリー』が隔月刊のムック扱いとして創刊されました。この雑誌は『Oh!FM』『Oh!FM TOWNS』とは異なり、号数を新たに第1号からスタートさせました。旧誌の編集体制の多くが『FMVファミリー』に引き継がれています。

『FMVファミリー』は1997年には月刊化を果たし、FMVユーザー向けの主要な情報誌としての地位を確立しました。しかし、パーソナルコンピュータを取り巻く環境の変化は続き、2000年3月24日発行の5月号を最後に、月刊誌としての発行を終了します。その後、2000年6月と同年10月にそれぞれムック形式の「夏号」「秋号」として刊行されましたが、これがシリーズとして最後の刊行となりました。

読者層

本誌が『Oh!FM TOWNS』として刊行されていた1994年のアンケート集計結果（10月・11月合併号）によると、当時の読者の平均年齢は26.1歳でした。年齢層別に見ると、18歳が最も多く、20代から30代にかけても比較的厚い読者層を形成していました。

また、同年の別のアンケート（5月・6月合併号集計）では、FM TOWNSの発売後に『Oh!FM TOWNS』を読み始めた読者が全体の6割以上を占めている一方で、『Oh!FM』時代からの古参読者は1割強に留まるというデータが出ており、対象機種の変遷に伴い読者層にも変化があったことが伺えます。

記事と内容

本誌は、富士通FMシリーズのユーザーに向けて、多岐にわたる技術情報やエンターテイメント情報を提供しました。具体的には、各種ソフトウェアやハードウェアの深い解析記事、最新ゲームの紹介や攻略法、パソコンを使った音楽制作やグラフィック表現、便利なユーティリティプログラム、本体や周辺機器の改造に関する情報、そして市場に登場したばかりの新製品や周辺機器の詳細なレビューなどが掲載されました。これにより、読者はFMシリーズを最大限に活用するための知識を得ることができました。

主な連載記事

谷山浩子の気絶すんぜん☆なのらー: 1986年7月号から最終号まで続いた、シンガーソングライター谷山浩子氏による人気エッセイ。読者投稿がきっかけで連載が始まったという、本誌ならではのエピソードを持つ企画です。
きょうふの水曜日: 1987年7月号から1990年8月号まで掲載された、ユニークなジョークソフトを紹介するコーナー。過去の特集で好評だった企画が連載化したものです。
お気楽♪BASIC: 1991年10月号から1993年8月号にかけて連載された、FM TOWNS向けのF-BASIC386入門ガイド。BASICプログラミングの基礎から応用までを分かりやすく解説し、連載終了後には書籍化もされました。

特徴的な拡張BASIC

本誌は、富士通純正のF-BASICをより便利に、あるいはより高度に活用するための独自の拡張BASICに関する記事を多数掲載しました。特に、ユーザーが投稿する音楽関連のプログラムでは、これらの拡張BASICの使用が前提となることも多くありました。

F-BASIC V3.0 Levelγ/ε/χ: FM-7などの200ライン表示可能な機種で、漢字ROMカードを活用して日本語文字列の処理機能を実現するための拡張。
PLAY@ / HGPLAY / WHGPLAY / EDPLAY: F-BASIC V3.0のPLAY文（内蔵PSG音源対応）を、FM音源カードなどの拡張音源に対応させるための一連の拡張。演奏可能な音源数や表現力が段階的に強化され、最終的にはMIDIにも対応するバージョンが登場しました。

誌上から生まれたゲーム

本誌の企画や読者投稿を発端として誕生し、後にパッケージソフトとして商業展開されたゲームもいくつか存在します。これらのパッケージ版は、雑誌掲載版から大幅な機能拡充が行われているのが特徴です。

リングの上は大さわぎ (1984年11月号掲載): プロレスを題材にしたゲーム。パッケージ版ではリングを囲むロープが追加され、それを利用した技なども実装されました。
GUTCHANBANK（ぐっちゃんばんく） (1985年6月号掲載): 銀行強盗ならぬ「銀行預金」をテーマにしたユニークなアクションゲーム。街中の現金を回収し、制限時間内に銀行に預け入れてスコアを稼ぐのが目的です。パッケージ版では特定の条件で新しいステージが出現する要素が加わりました。
寿司麻雀 (1985年9月号掲載): 麻雀漫画『ぎゅわんぶらあ自己中心派』（片山まさゆき作）に登場する架空の麻雀ルールをゲーム化したものです。
* 少年マイクのひとり旅 (1986年1月号掲載): FM77AV専用として開発されたアクションゲーム。

特徴的な表記法

本誌のソフトウェア紹介記事などに見られる特徴として、フロッピーディスクの容量を示す際に、両面ディスクであることを示す「2」を省略する慣例がありました。例えば、「3.5″HD」は「3.5インチ2HDフロッピーディスク」、「5HD」は「5インチ2HDフロッピーディスク」を意味します。これは、富士通FMシリーズで広く使われていたのが両面ディスクだったことに起因する、当時のパソコン雑誌の一部に見られた表記法です。

付録

雑誌の号数表記の後ろに「（○○号）」と記されている号は、当時の雑誌に関する付録規定により、ムック扱いとして刊行されたものです。

CD-ROM付録

本誌は、日本の雑誌としては非常に早い時期に、付録としてCD-ROMの添付を試みました。1989年8月号に付属予定だった「太っ腹No.1」がそれですが、当時は定期刊行物にCDをそのまま付録として添付することが認められていなかったため、雑誌にはCD-ROMの引換券を封入し、購入者が主要な書店などでCD-ROMと引き換えるという異例の形をとることになりました。その後、時代が進むにつれてCD-ROMの添付が可能となり、「天晴CD Vol.1 飛龍の巻」（1994年11月号）や「天晴CD Vol.2 鳳凰の巻」（1995年8月号）などが付録として提供されました。『FMVファミリー』に移行してからは、毎号CD-ROMが付録となるのが通例となりました。

フロッピーディスク付録

CD-ROMが一般的になる前は、3.5インチフロッピーディスクが付録として添付されることもありました。「太っ腹FD平成1号」（1991年10月号）から「太っ腹FD平成10号」（1995年3月号）まで、主に「春の特別号」や「夏の特別号」といった増刊的な扱いの号で、プログラムやデータを収録したフロッピーディスクが付録となりました。

別冊

過去に掲載された記事を再構成した別冊も刊行されました。「FILES Oh!FM」（1983年11月）は、創刊初期の第1号から第3号までの内容を再編集したものです。他にも「FMショートプログラム集」（1985年）などが刊行され、本誌で紹介されたプログラムがまとめられました。

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