Oh!X

『Oh!X』とは

『Oh!X』（オー! エックス）は、かつて日本ソフトバンク（現ソフトバンクグループ）およびソフトバンクパブリッシング（現SBクリエイティブ）から発行されていたパソコン雑誌です。この雑誌は、シャープのMZシリーズを対象とした『Oh!MZ』（オー! エムゼット）を前身とし、シャープのパソコン市場の変化に伴い、誌名を変更しました。

概要

日本ソフトバンクは、かつて「Oh! シリーズ」として、機種別パソコン雑誌を多数発行していました。その中で『Oh!MZ』は、シャープのMZシリーズを対象としていました。しかし、シャープからMZシリーズとは別にX1やX68000シリーズが発売され、それらが主流となったため、『Oh!MZ』は『Oh!X』へと誌名を変更しました。対象機種の衰退とともに1995年に休刊しましたが、後にムックとして復刊し、2001年までに5号が発行されました。2023年9月には、東京ゲームショウで復刊版が発表され、2024年6月8日に発売される予定です。

歴史

1982年5月: 『Oh!MZ』6月号創刊
1987年11月: 12月号より『Oh!X』に改題
1995年11月: 12月号をもち休刊
1998年11月: 復刊記念号発刊
1999年5月: 1999春号刊行
1999年9月: 1999夏号刊行
2000年3月: 2000春号刊行
2001年3月: 2001春号刊行
2024年6月: 「令和版Oh!X」刊行予定

記事内容

記事の内容は、広告、製品情報、読者投稿などが中心です。初心者向けの記事も存在しますが、全体として読者に一定の知識や理解を求める内容が多く、マシン語のダンプリストやソースコードが掲載されることもありました。特に『Oh!MZ』は「ドラゴン」と評されるほど、内容が難解で手強い雑誌でした。ダンプリスト入力には、セルフリロケータブルな入力ツール「MACINTO-S」が用意され、入力の補助として縦横、ブロックのトータルサムがリアルタイムで表示されました。後に、CRCチェックサムを表示する「MACINTO-C」が提供され、入力精度が向上しました。また、他のパソコン雑誌と比較して、他機種への批判が多く、シャープ製品への偏愛が目立つこともありました。

創刊号

『Oh!PC』と同時期に創刊された『Oh!MZ』の創刊号は、定価620円で104ページ（内、広告19ページ）でした。編集人は田鎖洋治郎が務めました。副題は「MZ-80B K/C ポケコンシリーズ」で、ページ数が少ないため、製本は平綴じでした。寄稿者には、林剛正、神谷誠、粕谷昌朗などがいました。特集記事は「MZ-80KIIを生体解剖」などでした。また、社員募集の広告も掲載されていました。「Oh!MZ質問箱」では、編集者が考えたであろう質問に対し、シャープ以外のメーカーのパソコンも勧めるなど、公平な視点も見られました。

創刊初期には、以下のような連載がありました。

絵夢絶登面白玉手箱／有田隆也
PASCAL SB-4510入門／鈴木芳昭
誰でもできる経営ゲーム／渡辺明
ポケコンPC-1500入門／粕谷昌朗
マシン語・魔神語・DEUS EX MACHINA／長瀬敏之
COMPUTER CHESS／馬場隆信
言いたい放題／伊藤のり子
すぐに使えるプログラム／塚田洋
オークスターのお姉さん

初期の表紙には、アメリカンコミック風の露出が多い女性が描かれていました。また、シド・ミードやティム・ホワイトが表紙画を担当したこともありました。

S-OS

THE SENTINEL

1985年6月号から1995年12月号まで連載された「THE SENTINEL」は、Z80を使用した機種共通のプラットフォーム、アプリケーション、解説記事を提供しました。当初は読者からの投書欄でしたが、後に編集部からのメッセージ欄となり、この特集記事全体を指す名称としても使われました。1985年1月号に掲載されたアセンブラ特集で異機種間の共通入出力処理系の構想が発表され、それが本特集につながりました。S-OSは、この特集で提供されたZ80のコードをコアとしたプラットフォームの名称です。バージョンは「MACE」「SWORD」と名付けられ、読者参加で成長させていく意向を示しました。S-OSは、機種依存部分を分離することで複数機種に対応し、同一バイナリが異機種でも動作するという画期的な試みでした。カセットテープベースのMACEではファイルフォーマットがMZフォーマットで統一され、ディスクベースのSWORDではX1のHu-BASICフォーマットが共通フォーマットとなりました。S-OSはオペレーティングシステムではなく、最強のマシン語モニタとされ、メモリ保護やシステムコールなどの機能は持っていませんでしたが、BASIC、FORTH、LISPなどの言語や、インベーダーゲームやテトリスなど、多くのアプリケーションが掲載されました。

コマンド

S-OSのコマンドは、OSよりもモニタに近く、一文字の命令にスペースでパラメータを記述する形式でした。使用できないコマンドも存在しました。

`#D <デバイス名>:`: ディレクトリの表示
`#DV <デバイス名>`: デフォルトデバイスの設定
`#J <アドレス>`: 指定アドレスをコール
`#L <ファイル名>[:<アドレス>]`: バイナリファイルのロード
`#K <ファイル名>`: ファイルの削除
`#N <旧ファイル名>:<新ファイル名>`: ファイル名の変更
`#S <ファイル名>:<開始アドレス>:<終了アドレス>:<実行アドレス>`: 該当範囲のアドレスの保存
`#ST <ファイル名>:P(若しくはR)`: ファイルの書き込み禁止属性を設定/解除
`#M`: モニタへ遷移
`#!`: ブートコマンド
`#W`: 80桁/40桁表示の切り替え

拡張キットでは、RAMDISKやトランジェントコマンドが追加され、バッチ処理やコメント、ポーズ処理がサポートされました。

デバイス名

A-D: FDD
E: RAMDISK
S: 各システムの標準テープデバイス
T: S-OS共通フォーマットのテープデバイス
Q: クイックディスク

対応機種

S-OSは多くの機種に移植され、『Oh!X』誌面でも掲載されました。以下に代表的なものを挙げます。

MZ-80K/C/1200
MZ-700/1500
MZ-80B/2000/2200
MZ-2500/2861
X1/C/D/Cs/Ck/F/G/Twin
X1turbo/II/III/Z/ZII/ZIII
PC-8001/8801
SMC-777C
PASOPIA/5/7
FM-7/77
X68000
PC-286/386/486/586/9801
MSX/2/2+/turboR

これらの他に、雑誌掲載されていないもの、個人で移植されたものも存在します。

仕様

MACEはZ80プロセッサをコアとし、40桁25行の英数字と半角カナのキャラクタ画面、MZフォーマットのデータレコーダを基本とします。システム空間が予約され、共通部分と機種依存部で構成されます。アプリケーションはユーザ空間に配置され、ジャンプテーブルを介して入出力を行います。SWORDではフロッピーディスクがサポートされ、グラフィックスVRAMを持つ機種では、80桁表示もサポートされます。S-OSはBIOSやモニタプログラムをラップし、機種ごとの文字コードやデバイスに対応します。速度的なデメリットはあるものの、共通システムとしての側面と、機種ごとの開発システムとしての側面を併せ持っていました。

主なアプリケーション

言語、開発ツール

ZEDA/改造版ZEDA/ZEDA-3: アブソリュートアセンブラ
ZING: Z80ソースジェネレータ
SOURCERY: Z80ソースジェネレータ
REDA: Z80アブソリュートアセンブラ
RING: REDA対応のソースジェネレータ
OHM-Z80: 高機能アセンブラ
Inside-R: 逆アセンブラ
SLANG: Cを意識した構造型コンパイラ言語
FuzzyBASIC、FuzzyBASICコンパイラ: 整数BASICインタープリタとコンパイラ
WINER: テキストエディタ
WZD/WLK/WLB: リロケータブルアセンブラとリンカ、ライブラリアン

ユーティリティー

JACKWRITE: 日本語表示プログラム

ゲーム

INVADER GAME: インベーダーゲーム
ELFESシリーズ: シューティングゲーム
グラフィックスインタープリタMAGIC: グラフィックスインタープリタ
SIONシリーズ: 3Dシューティングゲーム

連載

言わせてくれなくちゃだワ: 読者投稿特集
「MZ-700 に不可能はない」: MZ-700用ゲームや技術の紹介
皿までど～ぞ
試験に出るX1: X1ハードウェア解説
猫とコンピュータ: エッセイ
知能機械概論-お茶目な計算機たち: 人工知能エッセイ
パソコン千夜一夜
between the lines

別冊

Z-MUSICシステムver.2.0
EX-System リファレンスマニュアル
Z-MUSICシステムver.3.0

まとめ

『Oh!X』は、1980年代から1990年代のパソコン黎明期において、技術的な深さと、ユーザーコミュニティの活発さを特徴としたパソコン雑誌でした。S-OSをはじめとした独自の取り組みや、多様なゲーム、開発ツールは、当時のパソコンユーザーに大きな影響を与えました。2024年の復刊版発売は、往年のファンにとって、非常に喜ばしいニュースと言えるでしょう。

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