P-5 (ミサイル)

P-5 巡航ミサイル

P-5（ロシア語: П-5）は、ソビエト連邦で開発された長射程の潜水艦発射型巡航ミサイルです。GRAUインデックスは4K44。非公式には、数字の5の愛称形であるピャチョールカ（«Пятерка»）とも呼ばれていました。

西側諸国では、アメリカ国防総省（DoD）識別番号としてSS-N-3C、NATOコードネームとしては「シャドック」の名で知られています。P-5から派生したP-6/35も同じNATOコードネームを持っていますが、DoD識別番号ではP-6/35の方がSS-N-3A/Bと若い記号を与えられています。

開発の経緯

第二次世界大戦後、ソ連はドイツからV-1やHs 293などの巡航ミサイル技術を導入しました。1944年より、V-1をモデルにウラジーミル・チェロメイ主任設計官が巡航ミサイルの開発に着手していましたが、ドイツからの技術導入によって研究は加速しました。1953年に水素爆弾の保有に成功すると、軽量かつ安価な巡航ミサイルはソ連海軍にとって「絶対兵器」と見なされるようになりました。

チェロメイが率いる第52設計局（OKB-52）は、まずV-1を基にラストチカ10Xを試作。その後、1951年から発射後に自動で翼を広げるARK-5自動開翼装置の開発に着手し、1956年に実用化しました。この装置を採用して開発されたのがP-5です。

設計

P-5は、窒素を充填した密閉型コンテナに格納された状態で潜水艦に搭載されます。発射時には、潜水艦が浮上し、コンテナに15度の仰角をつけます。ミサイルは2基の固体燃料ロケットブースターによって射出され、ブースターは2秒後に切り離され、KRD-26ターボジェットエンジンが始動して巡航に入ります。初期型では、巡航高度は気圧高度計によって400メートルに制限されていました。射程と速度は気温によって変動し、例えば40℃の場合、射程は650キロメートル、速度はマッハ0.99となります。

初期型の平均誤差半径（CEP）は3,000メートルと精度が悪く、弾頭は核弾頭とせざるを得ませんでした。核出力は初期型でTNT換算200キロトン、後に650キロトンに増強されました。また、巡航高度を気圧高度計で管理するため、山を越えて目標を攻撃できないという欠点がありました。

その後、改良されたAP-70D自動操縦装置の導入により、CEPは1/2～1/3に縮小、巡航高度も250メートルまで低高度化された改良型のP-5Dが実用化されました。

配備

P-5は1957年から地上および洋上での実射試験が開始され、1959年6月19日に制式化されました。改良型のP-5Dは、1961年3月2日から海軍への引き渡しが開始されました。

地上配備型はSPU-35V "Redut"（NATOコードネーム：SSC-1 Sepal）と呼ばれ、ZIL-135 8輪重トラックに搭載された沿岸防衛ミサイルとして運用されました。

搭載艦

651型潜水艦（ジュリエット型）
659型潜水艦（エコーI型）
644型潜水艦（ウィスキー・ツイン・シリンダー型）
665型潜水艦（ウィスキー・ロング・ビン型）

イナリ湖事故

1984年12月28日、SS-N-3ミサイルが標的として使用され、フィンランドの国境を越えてイナリ湖に墜落する事故が発生しました。

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