PANG (航空母艦)

フランス海軍次世代原子力空母PA-Ng計画：シャルル・ド・ゴールの後継艦

フランス海軍は現在、原子力空母「シャルル・ド・ゴール」を運用していますが、老朽化に伴い、その代替艦として新世代航空母艦（Porte-avions de nouvelle génération、PA-Ng）の建造計画を進めています。PA-Ngは、2038年の就役を目指し、フランス海軍の将来における海上戦力の中核となることを期待されています。

PA-Ng計画の経緯

フランスは1980年代、クレマンソー級航空母艦の後継として原子力空母2隻の建造を計画しました。「シャルル・ド・ゴール」はその1隻目として2001年に就役しましたが、2隻目の建造計画はその後変更されました。当初は原子力空母として計画されましたが、後にイギリス海軍のCVF計画（後のクイーン・エリザベス級航空母艦）との設計共通化が検討され、最終的には計画が中止されました。

「シャルル・ド・ゴール」の老朽化が進むにつれて、代替艦の必要性が認識され始めました。2018年にパルリ国防相が代替艦の検討開始を発表、2年間の予備研究を経て、2020年にマクロン大統領がPA-Ngの建造計画を正式に公表しました。

PA-Ngの特徴と仕様

PA-Ngは「シャルル・ド・ゴール」を大幅に上回る規模を誇り、最大7万5千トンの排水量を持つと予想されています。「シャルル・ド・ゴール」の満載排水量が約4万2千トンであることを考えると、その大型化は顕著です。

この大型化に対応するため、最新の原子炉技術が採用されます。PA-Ngは、「シャルル・ド・ゴール」のK-15加圧水型原子炉よりも熱出力が50％高い、220メガワット級のK-22原子炉を搭載する計画です。この高出力原子炉は、より多くの電力を供給し、電磁式カタパルト（EMALS）などの電力需要の高いシステムの運用を可能にします。

飛行甲板はアングルド・デッキを採用し、航空機の離着艦を円滑に行うためのエレベーターを2基設置します。これは「シャルル・ド・ゴール」と同様の設計ですが、艦橋構造物（アイランド）は艦尾側に移動されるなど、レイアウトの見直しも行われています。

PA-Ngの最も注目すべき点は、電磁式カタパルト（EMALS）の採用です。EMALSは、従来の蒸気カタパルトに比べて、航空機の運用効率を向上させ、様々なタイプの航空機の発艦を可能にする高度な技術です。これにより、PA-Ngの運用能力は大幅に向上すると期待されます。

建造スケジュールと今後の展望

PA-Ngの建造は、2025年の鋼材切出しを皮切りに、10年以上にわたる長期計画となっています。海上公試は2036年に開始され、2038年の就役が予定されています。

PA-Ngの完成は、フランス海軍の戦略的影響力強化に大きく貢献すると考えられます。先進的な技術と大型化によって、PA-Ngはフランスの海洋戦略における重要な戦力となるだけでなく、NATO等の国際協力における役割も担うと予想されます。しかし、長期にわたる建造期間と、多額の予算が必要となることから、計画の進捗状況や技術的な課題への対応が注目されます。

参考文献

Saunders, Stephen (2015), Jane's Fighting Ships 2015-2016, Janes Information Group, ISBN 978-0710631435
岡部いさく「世界の空母事情2021 (世界の空母2021)」『世界の艦船』第953号、海人社、85-91頁、2021年8月。NAID 40022633762。

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