PC-6600シリーズ

NEC PC-6600シリーズ：8ビットパソコンの進化系

日本電気ホームエレクトロニクス（NEC-HE）が1980年代に発売したPC-6600シリーズは、同社のPC-6000シリーズをベースに開発されたパーソナルコンピュータです。PC-6000シリーズの機能を継承しながら、内蔵フロッピーディスクドライブを搭載することで、データ保存やソフトウェアの利用環境を大幅に向上させました。NEC-HEの家庭電化製品卸ルートと、NECの特約店ルートを通じて販売され、多くのユーザーに親しまれました。

PC-6601：高機能と充実のバンドルソフト

1983年11月21日に発売されたPC-6601は、PC-6001mkIIの上位機種として登場しました。メーカー希望小売価格は143,000円。PC-6001mkIIの機能に加え、3.5インチフロッピーディスクドライブ（1D/片面倍密度）を標準搭載。オプションでさらに1基追加することも可能でした。音声合成機能も強化され、2オクターブの音高で歌を歌う機能が追加されました。

バンドルソフトの充実も大きな特徴です。日本語ワードプロセッサ、英文ワードプロセッサ『パソワード』、表計算ソフト『パソカルク』、ソングエディタなどが同梱され、さらに小松左京氏監修のアドベンチャーゲーム『コロニーオデッセイ（冒険編）』も付属していました。このアドベンチャーゲームでは、音声合成機能を活かしたロボットの会話が実現され、当時としては革新的な体験を提供しました。

ただし、CP/M|CP_Mなどの汎用OSは付属しておらず、別売もありませんでした。また、PC-6001mkII用ソフトの一部は、PC-6601背面のFDD切り離しスイッチを操作しないと動作しないものもありました。オプションの拡張漢字ROMカートリッジ（PC-6601-01）を使用することで、漢字表示能力を向上させることもできました。

PC-6601のイメージキャラクターは、PC-6001mkIIと同様に武田鉄矢氏が務めました。

PC-6601の主な仕様

CPU：μPD780C-1 4MHz
RAM：64KB+1KB（FDバッファ）
テキスト表示：40桁×20行
グラフィック表示：320×200ドット 4色、160×200ドット 15色
サウンド：PSG AY-3-8910 / 音声合成
BASIC：N66-BASIC（RAM64KB）、N60-BASIC (RAM 16KB/32KB)、N60-拡張BASIC（RAM 16KB/32KB）
インタフェース：RF接続、コンポジットビデオ出力、専用デジタルRGB出力、オーディオ出力、CMT、プリンタ（セントロニクス準拠）、専用カートリッジスロット、アタリ規格ジョイスティック×2、スーパーインポーズ、RS-232C（オプション）

PC-6601SR：セパレート型デザインとFM音源

1984年11月20日に発売されたPC-6601SRは、PC-6601の後継機種であり、PC-6001mkIISRの上位機種にあたります。メーカー希望小売価格は155,000円。「Mr.PC（ミスターピーシー）」という愛称と「六本木パソコン」というキャッチフレーズで販売されました。

PC-6601SRはPC-6000/6600シリーズで唯一のセパレート型モデルで、赤外線ワイヤレスまたは有線接続のキーボードを採用していました。本体とキーボード、専用ディスプレイテレビPC-TV151は黒と赤のツートンカラーで、PC-6601とは異なるスタイリッシュなデザインが特徴です。

PC-TV151と組み合わせることで、ワイヤレスキーボードからテレビの操作や番組予約、スーパーインポーズなどが可能となり、「テレビパソコン」として機能しました。ただし、PC-6601で利用可能だったスーパーインポーズユニットPC-60m54は使用できませんでした。

サウンド面では、AY-3-8910互換機能に加えてYM2203を搭載し、FM音源による3音の表現が可能になりました。

PC-8800シリーズなどの8ビット上位機種が主流になりつつあった当時、PC-6601SRはPC-6000/6600シリーズの最終モデルとなりました。工学社からは、PC-6601SR専用の「56K CP/M|CP_M V2.2」が通信販売限定で販売されました。

PC-6601SRの主な仕様

CPU：μPD780C-1 3.58MHz
RAM：64KB+1KB（FDバッファ）
テキスト表示：最大80桁×25行
グラフィック表示：640×200ドット 15色中4色、320×200ドット 15色
サウンド：YM2203 / 音声合成
BASIC：N66SR-BASIC、N66-BASIC、N60-BASIC、N60-拡張BASIC
インタフェース：専用デジタルRGBモニタ、オーディオ出力、CMT、プリンタ（セントロニクス準拠）、専用カートリッジスロット、RS-232C（オプション）、アタリ規格ジョイスティック×2、スーパーインポーズ（専用ディスプレイテレビ接続時のみ）

PC-6000シリーズとの互換性

PC-6000シリーズとPC-6600シリーズは、機能面では大きな違いはありません。しかし、内蔵FDDに関してはBASICおよびBIOSレベルでの互換性しかなく、BASICやBIOSを使用せずに直接FDDを操作する場合は互換性がありませんでした。これは、PC-6000シリーズが「インテリジェントタイプ」のFDDユニットを使用していたのに対し、PC-6600シリーズはコスト削減のため「ノンインテリジェントタイプ」を採用したためです。

この非互換性は、PC-6000シリーズでは外付けFDDを使うケースが少なく、FDDを直接制御するソフトウェアもほとんど存在しなかったため、ほとんど問題になることはありませんでした。ただし、ソフトウェアのコピープロテクトやCP/M|CP_Mなどの移植においては、この非互換性が影響を与えたケースもありました。PC-6000/6600シリーズ用CP/M|CP_Mの中には、ROMのルーチンを用いた実装により、両シリーズで相互利用できるものもありました。

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