PDP-6

PDP-6コンピュータ

PDP-6は、1963年にデジタル・イクイップメント・コーポレーション（DEC）によって開発された大型コンピュータで、PDPシリーズの一部を成すモデルです。このシステムは後にPDP-10という新たなモデルの基盤となるもので、二つの機種はほぼ同じ命令セットを共有しています。

ハードウェア仕様

PDP-6はDECにとって初めての大型機であり、当時の他の大型汎用機と同様に、36ビットワードのデータ形式を採用しています。アドレス指定に関しては、以前のDEC機と同じ18ビットを使用しており、最大で256Kワードの主記憶容量を持っています。また、一般的には32,768ワード、すなわち約144KBの磁気コアメモリを搭載していました。その命令セットアーキテクチャは「one-and-a-half address」の形式で、1つの18ビットアドレスに加えて、4ビットのアドレスが指定でき、これにより「アキュムレータ」（AC）を利用します。さらに、別のレジスタをインデックスとして設定する機能も提供していました。

多数のPDP-6システムには、Type 162というオプションの高速メモリが搭載されており、これはトランジスタ式のフリップフロップで作られた16ワードのメモリです。この高速メモリは、従来の磁気コアメモリの最初の16ワードを4倍の速度で動作させることができ、システム全体の処理速度を向上させる要素となっていました。

製造について

PDP-6が使用する6205基板は、サイズが11インチ×8インチと大きく、1ビット分の回路を構成しています。この基板一つにつき88個のトランジスタが必要とされ、基板の両端にはそれぞれ18ピンと22ピンのコネクタがあり、保守が非常に困難でした。特に電源がオフになるだけで故障することが頻発し、こうした問題を避けるためにPDP-10では小型基板に切り替えられました。

オペレーティングシステム

PDP-6は、タイムシェアリングシステムを支えるために2つの主要な機能を持っていました。一つは動作モードを切り替えるステータスビットで、もう一つはユーザーアドレス空間を制限するリロケーション/プロテクションレジスタです。これにより、複数のユーザーが同時にシステムを利用することが可能となりました。主に利用されたオペレーティングシステムは、後にTOPS-10となるものや、MITのITSオペレーティングシステムの開発もPDP-6上で行われました。

デュアルDECtapeを4台搭載することで、ディスクドライブが無くてもタイムシェアリングが実現でき、4～6人のユーザーが同時に利用することができました。さらに、PRO2ディスクドライブを一台追加することで、20～39人が同時に利用できる高い性能を発揮しました。

販売実績

PDP-6はわずか23台しか販売されなかったため、DECのモデルの中でも最も少ない存在です。複雑性と高コストが響き、導入時の手間も大きかったため、販売部門にとっても厳しい状況でした。さらに、DECが小型機市場に専念する計画を発表し、36ビット市場から撤退する方針が進められていたことも影響しました。その後の計画がPDP-10として具体化されることとなります。

DECの経営陣は、大学などの技術的リーダーからの受注があったPDP-6に価値を見出しました。これにより、科学技術分野への足掛かりを確保し、最先端のユーザーから技術動向を把握できる強みがありました。

博物館での保存状況

スタンフォード大学のPDP-6は、1984年12月にボストンコンピュータ博物館に寄贈されています。その後、多くの所蔵品が他の博物館に移されましたが、残念ながら完全な形のPDP-6は現存していません。現在、コンピュータ歴史博物館に残されているのはType 162の高速メモリのみです。PDP-6自身は貴重な資料として大切にされ続けています。

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