PGM-11 (ミサイル)

レッドストーンミサイル：アメリカ初期の弾道ミサイルとその遺産

レッドストーンミサイルは、[アメリカ合衆国]]が初期に開発した短距離弾道ミサイル]です。第二次世界大戦後の冷戦期、[[アメリカ陸軍とヴェルナー・フォン・ブラウン率いるチームが中心となり、ナチス・ドイツのV2ロケット技術を基盤に開発されました。その名称は、ミサイルの開発拠点であるアラバマ州のレッドストーン兵器廠に由来しています。赤い土壌と岩が特徴的なこの地域の名を冠したミサイルは、後に宇宙開発においても重要な役割を果たすことになります。

レッドストーンミサイル：技術的詳細

全長約21メートル、直径約1.8メートル、重量約28,000kgという巨大なミサイルは、クライスラー社が生産を担当しました。推進システムには、液体酸素を酸化剤、水とエチルアルコールを混合した燃料を用いたA-6型ロケットエンジンが搭載され、真空中の推力は414.3 kNに達しました。

ミサイルの誘導システムには、慣性誘導装置が採用されました。これは、外部からの妨害を受けにくいという利点がありました。弾頭には、初期には500キロトン級の核弾頭が搭載され、後に3.8メガトン級の水素爆弾も搭載可能となりました。

レッドストーンミサイル：開発と配備

レッドストーンミサイルの開発は1950年にアラバマ州ハンツビルで開始され、1952年には生産が始まりました。1958年には西ドイツに配備され、核抑止力として重要な役割を果たしました。配備された部隊は、西ドイツ各地に駐留し、1964年まで運用されました。

ミサイルの生産には、複数の企業が関わりました。クライスラー社はミサイル本体の生産を、ノースアメリカン航空機会社のロケットダイン部門はロケットエンジンの供給を、スペリー・ランド社（フォードインスツルメント社）は誘導制御装置を、レイノルズメタル社は胴体組み立てを請け負うなど、複数の企業が協力して開発、生産にあたりました。ミシガン州ワーレンにあるアメリカ海軍のミサイル工場（元々は航空機工場）は、レッドストーンミサイルの生産拠点となりました。

レッドストーンミサイル：核実験と宇宙開発への貢献

1958年には、太平洋のジョンストン島で行われたハードタック作戦において、レッドストーンミサイルは核実験に使用されました。高高度での核爆発実験において、その高い信頼性と性能が実証されました。

レッドストーンミサイルは、軍事用途だけでなく、宇宙開発にも貢献しました。レッドストーンミサイルを改良したジュピターCロケットは、アメリカ初の人工衛星エクスプローラー1号の打ち上げに使用されました。さらに、マーキュリー計画においても、レッドストーン・マーキュリーロケットが有人宇宙船の弾道飛行試験に使用され、後の有人宇宙飛行への道を切り開く重要な役割を果たしました。

レッドストーンミサイルの派生型：ジュピターCとマーキュリー・レッドストーン

ジュピターC: レッドストーンミサイルをベースに、大気圏再突入実験や人工衛星打ち上げを目的として開発されました。レッドストーンの燃料タンクを延長し、エンジンも改良型を使用。固体燃料ロケットを複数段に追加することで、より高い高度に到達できるようになりました。 ジュノーIは、ジュピターCをさらに改良したもので、アメリカ初の人工衛星「エクスプローラー1号」の打ち上げに使用されました。

マーキュリー・レッドストーン: マーキュリー宇宙船の弾道飛行試験に使用されたロケットです。宇宙飛行士の安全性を考慮し、改良が加えられました。 ジュピターCをベースとしながらも、燃料の種類を変更するなど、有人飛行に適した改良が施され、アラン・シェパードとガース・グリソムを弾道飛行させることに成功しました。

レッドストーンミサイルの遺産

レッドストーンミサイルは、アメリカにおけるミサイル技術の発展に大きく貢献し、後の宇宙開発へと繋がる重要な役割を果たしました。その技術や経験は、後の弾道ミサイルや宇宙ロケットの開発に活かされ、現在もその影響は続いています。アメリカにおけるロケット開発の歴史において、レッドストーンミサイルは重要なマイルストーンとなっています。その開発に携わったヴェルナー・フォン・ブラウンを始めとする科学者、技術者、そして関係企業の功績は、現代の宇宙開発においても称えられています。

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