POWER (マイクロプロセッサ)

POWERプロセッサ：高性能RISCマイクロプロセッサの進化

POWER（パワー）は、IBMが開発したRISC（Reduced Instruction Set Computing）マイクロプロセッサのシリーズです。Power Architectureをベースとしており、当初は32ビットでしたが、POWER3以降は64ビット化されています。また、派生製品としてPowerPCがあります。

POWERプロセッサの特徴

POWERプロセッサは、比較的低いクロック周波数でも高い性能を発揮できる点が大きな特徴です。これにより、同じ性能を達成する場合でも、消費電力や発熱量を抑えることが可能です。さらに、動作周波数を引き上げることで、さらなる性能向上が容易であるというメリットも持ち合わせています。これらの特性から、IBMのスーパーコンピュータをはじめ、UNIXワークステーションやオフィスコンピュータなど、幅広い分野で利用されています。

POWERプロセッサの歴史

POWERアーキテクチャのルーツは、1970年代のIBM 801や、1980年代のIBM RT-PC用ROMプロセッサであるROMPに遡りますが、POWERという名称が初めて登場したのは1990年のPOWER1（パワー・ワン）です。

POWER1 (1990年)：80万個のトランジスタを実装。
POWER2 (1993年)：浮動小数点ユニットとキャッシュを強化。1997年には、スーパーコンピュータ「ディープ・ブルー」がチェスチャンピオンのガルリ・カスパロフを破った際に搭載されていたプロセッサとして有名です。
POWER3 (1998年)：POWERシリーズ初の完全な64ビットプロセッサで、POWER1とPowerPCの両方との完全な互換性を持っています。POWER2とPOWER3はどちらも1500万個のトランジスタを実装。
POWER4 (2001年)：デュアルコア技術を採用し、1チップでSMPシステムを構築可能に。0.18ミクロンの製造プロセスルールとSOI技術により、1プロセッサあたり1億7400万個ものトランジスタを実装。POWER3と同様にPOWERアーキテクチャとPowerPCアーキテクチャ双方との互換性を維持。
POWER5 (2004年)：同時マルチスレッディング（SMT）などの新技術を導入。
POWER6 (2007年)：アウト・オブ・オーダー実行機能の一部を削除し、クロックを2倍に引き上げ、初めて4GHzに到達。その後、5GHzのプロセッサも登場しました。消費電力は1スレッドあたり35W。
POWER7 (2010年)：4、6、8コア版があり、SMTにより各コアで最大4つのスレッドを処理。前身のPOWER6とバイナリ互換性を保ち、最大32MBのL3 eDRAMキャッシュを統合。
POWER7+ (2012年)：45nmプロセスから32nmプロセスへ微細化し、クロックが高速化、L3キャッシュが最大80MBに増加。
POWER8 (2014年)：6、8、10、12コア版があり、SMTにより各コアで最大8つのスレッドを処理。最大96MBのL3 eDRAMキャッシュを統合。
POWER9 (2016年)：14nmプロセスで製造され、80億トランジスタを搭載。最大12コア、120MB L3 eDRAMキャッシュを統合。
POWER9 AIO (2019年)：POWER9からインターフェイスを高速化。
POWER10 (2020年)：7nmプロセスで製造され、180億トランジスタを搭載。最大15コア、120MB L3キャッシュを統合。

RS64系列：商用UNIXシステム向けの最適化

PowerPCアーキテクチャをベースに、商用UNIXシステムに必要な整数演算性能に最適化されたプロセッサファミリーがRS64系列です。開発コードネームは星にちなんだ名前が選ばれており、「Starプロセッサ」とも呼ばれます。RS64系列は、最初からすべて64ビットで実装されています。

RS64 (1997年発表)
RS64 Ⅱ (1998年発表)
RS64 Ⅲ (1999年発表)
RS64 Ⅳ (2001年発表)：POWERファミリのプロセッサとしては初めてハードウェアマルチスレッディング機能を搭載。

RS64系列は、長らくRS/6000シリーズやその後継のpSeries、AS/400シリーズやその後継のiSeriesの上位機種のプロセッサとして使用されていましたが、より高速なPOWER4にその役割を譲りました。

まとめ

POWERプロセッサは、その高い性能と省エネルギー性から、スーパーコンピュータなどのハイエンドシステムからワークステーションまで幅広い分野で利用されてきました。IBMの技術革新を支える重要な要素の一つとして、今後もその進化が期待されます。

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