PV-2 (航空機)

ロッキード PV-2 ハープーン：第二次世界大戦における哨戒・爆撃機の詳細

ロッキード PV-2 ハープーンは、第二次世界大戦中にアメリカのロッキード社によって製造された哨戒・爆撃機です。この機体は、イギリス空軍向けに開発されたPV-1 ベンチュラの性能向上型として設計され、1943年11月に初飛行しました。「ハープーン（Harpoon：捕鯨用銛の意）」という愛称で知られています。

開発の背景と特徴

PV-1からの大きな変更点として、翼の形状と爆弾等の搭載量があります。特に、PV-1の片発停止時の操縦特性と地上滑走時の操作性を改善するために、尾部は完全に新しい設計となりました。武装も大幅に強化され、機首に5挺の12.7mm機銃、胴体背面に連装の12.7mm機銃、胴体後方下部にも連装の12.7mm機銃が装備され、双発機でありながら4発重爆撃機並みの重武装を誇りました。爆弾倉も大型化され、1,000ℓb（455kg）爆弾を6発、または11.75インチのティニー・ティムロケット弾かMk13魚雷を2発搭載できるようになりました。この爆弾倉の拡大は、PV-1では搭載重量の制約ではなく、爆弾倉のサイズによってティニー・ティムロケット弾を1発しか搭載できなかった反省に基づいています。さらに、翼下のパイロンには5インチロケット弾（HVAR）を片翼あたり4発ずつ搭載できました。

しかし、これらの強化によって機体重量が増加し、最大速度が当初の見積もりより大幅に低下しました。セルフシーリング式燃料タンクの燃料漏れや主翼桁の強度不足の改修にも時間がかかり、部隊への本格的な配備は1944年春にずれ込みました。速度低下は実戦において致命的な弱点でしたが、この頃には日本の軍事力が低下していたため、PV-1と同じP&W R-2800-31エンジン（離昇出力2,000馬力）の換装は計画されませんでした。

戦争での活躍とその後

PV-2はアリューシャン方面で実戦配備され、1945年からは南太平洋方面にも展開しましたが、日本軍の活動が鈍化していたため、特筆すべき戦果を挙げることはありませんでした。戦後はアメリカ海軍の主力対潜哨戒機となりましたが、後継機であるロッキード P2V ネプチューンの配備により、すぐに予備役に回されました。主な改良型として、機首の武装を12.7mm機銃5挺から8挺に強化したPV-2Dがありましたが、大戦終結とともに少数の生産に留まりました。余剰となった機体は、戦後、日本、ブラジル、フランスなどのアメリカ同盟諸国に供与されました。

日本での運用

海上自衛隊の前身である警備隊は、1954年（昭和29年）に日米間でMSA協定が締結されたことにより、アメリカ軍から航空機の供与を受けることになりました。1955年（昭和30年）1月16日には、アメリカ海軍岩国航空基地で17機のPV-2Dを受領し、鹿屋航空基地所属の鹿屋航空隊で運用を開始しました。しかし、居住性が悪く長時間飛行に向かない、着陸が難しい、機体の老朽化が進んでいる、予備部品が不足しがちで整備に支障があるなどの問題から、運用部隊での評価は低いものでした。そのため、主に鹿屋基地での操縦や哨戒作業の訓練用に使用されました。

1956年（昭和31年）には新型哨戒機としてグラマン S2F-1 トラッカーとロッキード P2V-7 ネプチューンの導入が決定し、PV-2はこれらと交代して1958年（昭和33年）頃には哨戒機としての任務を終えました。その後、6機が計器飛行訓練機、2機が機上作業練習機として運用されましたが、訓練/練習機としての運用期間も短く、1961年（昭和36年）8月には全機が除籍されました。その後は地上教育機材として使用され、機体は消火訓練や救助・脱出訓練に使用された後、1970年代末には全機が処分されました。

スペック

出典：文林堂刊航空ファンイラストレイデットNo73『第二次大戦米海軍機全集』108頁。

全長：22.9m
全幅：15.9m
全高：4.00m
翼面積：63.7m2
自重：9,530kg
全備重量：15,270kg
エンジン：P&W R-2800-31 空冷星型18気筒 離昇出力2,000馬力×2
最大速度：456km/h
巡航速度：275km/h
着陸速度：150km/h
上昇率：341m/min
実用上限高度：7,280m
航続距離：4,720km
武装：
爆弾6,000ℓb（2,710kg）または11.75inティニー・ティムロケット弾かMk13魚雷×2
機首上面に前方固定式12.7mm機関銃×2
機首下面のガンポッドに前方固定式AN/M2 12.7mm機関銃×3
胴体背面の旋回機銃塔に連装のAN/M2 12.7mm機関銃
胴体下後方のトンネル・ガンポートに連装のAN/M2 12.7mm機関銃
翼下に5in ロケット弾×8
乗員：5名

登場作品

『サブマリン707』：海上自衛隊第1航空群基地から飛び立った本機が、U結社のU3号怪潜水艦を爆撃で撃沈する。

出典・参考文献

航空ファンイラストレイテッドNo.73『第二次大戦米海軍機全集』文林堂、1994年、107-108頁

関連項目

爆撃機一覧
偵察機・哨戒機の一覧
PV-1 ベンチュラ - 原型機
* ロッキード P2V ネプチューン - 後継機

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