Powers of Ten
『Powers of Ten（パワーズ・オブ・テン）』は、チャールズ・イームズとレイ・イームズ夫妻によって1977年に制作された教育映画であり、同名の書籍（1982年刊、日本語版は1983年）も出版されています。この作品は、10の冪乗という概念を用いて、宇宙の果てからミクロの世界まで、スケールの変化を視覚的に体験させることを目的としています。1968年に試作された『Powers of Ten:A Rough Sketch（パワーズ・オブ・テン ラフ・スケッチ）』についても触れながら、この作品の魅力と背景を深く掘り下げていきましょう。
タイトルにある「Power」は、物理的な力ではなく「冪乗」を意味しています。映画は、1平方メートルの視野から始まり、その面積を10の冪乗で拡大・縮小することで、私たちの身の回りから宇宙、そして原子の世界へと視点を移動させます。この視点の移動を通して、物質の大きさの比較を一覧的に示すことを目指しています。
この作品は、その教育的な価値から、日本を含む世界中の教育現場で活用されてきました。その功績は、1998年にアメリカ国立フィルム登録簿に保存作品として指定されたことからも明らかです。
イームズ夫妻は、建築や家具のデザインで世界的に知られるデザイナーですが、その傍らで短編映画の制作にも力を入れていました。『Powers of Ten』は、IBMからの依頼で制作された作品で、オランダの作家キース・ボークの著書『Cosmic View』から着想を得ています。1968年にはパイロット版となる『ラフ・スケッチ』が制作され、その後1977年に正式版が完成しました。
作品を支えた主なスタッフは以下の通りです。
監督・製作: チャールズ&レイ・イームズ事務所
ナレーター: フィリップ・モリソン（物理学者であり、後に書籍版を執筆）
音楽: エルマー・バーンスタイン
原案: キース・ボーク
* 監修: ジョン・フェスラー、オーウェン・ギンガリッチ、ケネス・ジョンソン、ジャン＝ポール・ルヴェル、フィリップ・モリソン
映画は、シカゴの公園で昼食をとる男女の姿から始まります。画面中央には1辺が1メートルの正方形のフレームが表示され、カメラは徐々に上空へと上昇していきます。この時、フレーム外には視界の広さを示す数値が表示され、10秒ごとに視野の範囲が10の冪乗で拡大していきます。
最初は1平方メートルの範囲だったものが、公園全体、そしてアメリカ合衆国、地球、太陽系、銀河系へと拡大し、最終的には光を観測できない領域まで到達します。そして、カメラは急降下し、再び公園の男女へと戻ります。その後、カメラは男性の手の甲に接近し、今度は冪指数が負の数へと移行し、視野は縮小していきます。皮膚組織、毛細血管、細胞、DNA、原子核、そして陽子へと、ミクロの世界が映し出され、最終的にはクォークの存在を示唆するところで映像は終わります。
『ラフ・スケッチ』では、人物の部分のみモノクロで撮影されており、舞台もシカゴではなくマイアミに変更されています。また、フレーム外には視界の広さに加え、地球時間とカメラ時間の差、カメラの速度計も表示されています。これは、カメラが冪指数が1移動するごとに10秒で次の地点に到達するという設定によるもので、速度が上がるにつれて特殊相対性理論による時間の遅れを表現しようとしたものです。しかし、本編では、複雑さを避けるためにこれらの要素は削除されています。
本編と『ラフ・スケッチ』は、レーザーディスク、VHS、DVDなどで日本語吹き替え版や字幕版がリリースされています。教育施設での上映も行われ、新潟県立自然科学館や葛飾区郷土と天文の博物館などで独自の日本語ナレーション版が上映されたこともあります。2024年5月時点では、さいたま市青少年宇宙科学館で日本語吹き替え版が常設展示されています。
また、1987年には、フジテレビの番組『TV's TV』で『ラフ・スケッチ』の一部が放送されました。
名古屋市科学館では、2000年に開催された特別展「宇宙展2000」で、本作と同じコンセプトの映像が3DCGで制作・上映されました。この作品は名古屋大学と富士通との共同制作で、その後、同館のプラネタリウムや天文館で常設展示されています。
映画の監修者であるフィリップ・モリソンは、1983年に『パワーズ オブ テン―宇宙・人間・素粒子をめぐる大きさの旅』を出版しました。この書籍は、映画の内容をさらに深く理解する上で役立ちます。
『Powers of Ten』は、教育映画として非常に高い評価を受けています。CG技術がまだ存在しなかった時代に、実写からアニメーションへのスムーズな移行を可能にした技術は、当時大きな驚きをもって迎えられました。
この作品は、視覚的な表現を通して、宇宙やミクロの世界への興味を喚起し、科学的な思考を深める上で、今もなお重要な役割を果たしています。
作品の概要
タイトルにある「Power」は、物理的な力ではなく「冪乗」を意味しています。映画は、1平方メートルの視野から始まり、その面積を10の冪乗で拡大・縮小することで、私たちの身の回りから宇宙、そして原子の世界へと視点を移動させます。この視点の移動を通して、物質の大きさの比較を一覧的に示すことを目指しています。
この作品は、その教育的な価値から、日本を含む世界中の教育現場で活用されてきました。その功績は、1998年にアメリカ国立フィルム登録簿に保存作品として指定されたことからも明らかです。
制作の背景
イームズ夫妻は、建築や家具のデザインで世界的に知られるデザイナーですが、その傍らで短編映画の制作にも力を入れていました。『Powers of Ten』は、IBMからの依頼で制作された作品で、オランダの作家キース・ボークの著書『Cosmic View』から着想を得ています。1968年にはパイロット版となる『ラフ・スケッチ』が制作され、その後1977年に正式版が完成しました。
スタッフ
作品を支えた主なスタッフは以下の通りです。
監督・製作: チャールズ&レイ・イームズ事務所
ナレーター: フィリップ・モリソン（物理学者であり、後に書籍版を執筆）
音楽: エルマー・バーンスタイン
原案: キース・ボーク
* 監修: ジョン・フェスラー、オーウェン・ギンガリッチ、ケネス・ジョンソン、ジャン＝ポール・ルヴェル、フィリップ・モリソン
ストーリー
映画は、シカゴの公園で昼食をとる男女の姿から始まります。画面中央には1辺が1メートルの正方形のフレームが表示され、カメラは徐々に上空へと上昇していきます。この時、フレーム外には視界の広さを示す数値が表示され、10秒ごとに視野の範囲が10の冪乗で拡大していきます。
最初は1平方メートルの範囲だったものが、公園全体、そしてアメリカ合衆国、地球、太陽系、銀河系へと拡大し、最終的には光を観測できない領域まで到達します。そして、カメラは急降下し、再び公園の男女へと戻ります。その後、カメラは男性の手の甲に接近し、今度は冪指数が負の数へと移行し、視野は縮小していきます。皮膚組織、毛細血管、細胞、DNA、原子核、そして陽子へと、ミクロの世界が映し出され、最終的にはクォークの存在を示唆するところで映像は終わります。
パイロット版『ラフ・スケッチ』
『ラフ・スケッチ』では、人物の部分のみモノクロで撮影されており、舞台もシカゴではなくマイアミに変更されています。また、フレーム外には視界の広さに加え、地球時間とカメラ時間の差、カメラの速度計も表示されています。これは、カメラが冪指数が1移動するごとに10秒で次の地点に到達するという設定によるもので、速度が上がるにつれて特殊相対性理論による時間の遅れを表現しようとしたものです。しかし、本編では、複雑さを避けるためにこれらの要素は削除されています。
日本での上映と普及
本編と『ラフ・スケッチ』は、レーザーディスク、VHS、DVDなどで日本語吹き替え版や字幕版がリリースされています。教育施設での上映も行われ、新潟県立自然科学館や葛飾区郷土と天文の博物館などで独自の日本語ナレーション版が上映されたこともあります。2024年5月時点では、さいたま市青少年宇宙科学館で日本語吹き替え版が常設展示されています。
また、1987年には、フジテレビの番組『TV's TV』で『ラフ・スケッチ』の一部が放送されました。
日本での同趣向作品
名古屋市科学館では、2000年に開催された特別展「宇宙展2000」で、本作と同じコンセプトの映像が3DCGで制作・上映されました。この作品は名古屋大学と富士通との共同制作で、その後、同館のプラネタリウムや天文館で常設展示されています。
書籍
映画の監修者であるフィリップ・モリソンは、1983年に『パワーズ オブ テン―宇宙・人間・素粒子をめぐる大きさの旅』を出版しました。この書籍は、映画の内容をさらに深く理解する上で役立ちます。
評価
『Powers of Ten』は、教育映画として非常に高い評価を受けています。CG技術がまだ存在しなかった時代に、実写からアニメーションへのスムーズな移行を可能にした技術は、当時大きな驚きをもって迎えられました。
この作品は、視覚的な表現を通して、宇宙やミクロの世界への興味を喚起し、科学的な思考を深める上で、今もなお重要な役割を果たしています。
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