QF 18ポンド砲

オードナンス QF 18ポンド砲：イギリス陸軍の主力野砲

オードナンス QF 18ポンド砲、通称18ポンド野砲は、イギリス陸軍が第一次世界大戦で主力として使用した野砲です。第二次世界大戦初期までその姿を見ることができました。その開発の背景には、当時の軍事技術の進歩と、他国との競争がありました。

開発の経緯

19世紀末、第二次ボーア戦争において、イギリス軍が使用していたBL 15ポンド砲やBL 12ポンド 6cwt砲は、フランス製のM1897が登場したことで旧式化しました。これに対抗するため、イギリス陸軍は「速射砲」（Quick Firing, QF）と呼ばれる新型野砲の開発に着手します。ドイツ製の野砲をQF 15ポンド砲として採用し、BL 15ポンド砲に駐退復座機を取り付けたBLC 15ポンド砲を製作するなど、技術的なノウハウを蓄積しました。これらの経験を経て、1904年にQF 18ポンド砲が制式採用されるに至りました。

多様なバリエーション

QF 18ポンド砲は長期間にわたり使用されたため、その間に砲身や砲架に様々な改良が加えられ、多くの派生型が存在します。

Mk.I: 初期型であり、円柱形の砲脚と液圧駐退・ばね圧復座式の駐退復座機を装備していました。
Mk.II: Mk.I砲身を軽量化したMk.II砲身を搭載した改良型。駐退復座機が気圧復座型に変更されたMk.II砲架も開発され、後にサスペンションやゴムタイヤを装備したMk.II Pに改修されました。
Mk.III: Mk.IV砲身と新規設計のMk.III砲架を組み合わせた型で、高仰角による射程延伸を実現しました。
Mk.IV: Mk.IV砲身とMk.IV砲架を組み合わせた型。Mk.IIIとの区別は困難です。自動車牽引に対応したMk.IV Pに改修された他、一部はQF 25ポンド砲Mk.1に改造されました。
Mk.V: 開脚式砲脚を備えたMk.V砲架とMk.IV砲身を組み合わせた最終生産型。水平射角が大幅に拡大しました。自動車牽引に対応したMk.V Pに改修され、一部はQF 25ポンド砲Mk.1に改造されました。

砲身の進化

Mk.I砲身: ワイヤーで緊縛された内側の砲身を外側の砲身で覆う構造でした。
Mk.II砲身: 内側の砲身を外側の砲身が緊縛する二重構造を採用しました。
Mk.III砲身: 半自動開閉機構を有する垂直鎖栓式尾栓を採用し、連射速度の向上を図りました。
Mk.IV砲身: 新型の尾栓を採用し、連射速度を向上させました。一部はQF 25ポンド砲Mk.1に改造されました。

砲架の改良

Mk.I砲架: 円柱形の砲脚を使用し、液圧駐退・ばね圧復座式駐退復座機を砲身上部に配置していました。初期には液圧駐退機の故障が頻発しました。
Mk.II砲架: 駐退復座機を気圧復座式に変更し、整備性を向上させました。
Mk.III砲架: 四角柱型砲脚の採用により高仰角化を実現し、射程を延伸しました。駐退復座機の配置も変更されました。
Mk.IV砲架: Mk.III砲架の改良型で、仰角がさらに向上しました。
Mk.V砲架: 開脚式砲脚を採用し、水平射角を大幅に拡大しました。防盾の形状も変更され、車輪がゴムタイヤに変更されました。

その他の派生型

QF 13ポンド砲: 王立騎馬砲兵用に設計された軽量小型の砲。機動力に優れますが、火力や射程は劣ります。
M1917 75mm野砲: アメリカでライセンス生産されたQF 18ポンド砲Mk.II。口径が75mmに変更されています。

実戦での活躍

第一次世界大戦において、QF 18ポンド砲はイギリス陸軍の主力野砲として、QF 4.5インチ榴弾砲と共に各戦線で活躍しました。同時期の他国製野砲と比較して大口径であり、榴弾の威力が高かったことが特徴です。榴弾以外にも、榴散弾、徹甲弾、照明弾、発煙弾、毒ガス弾などが製造されました。

戦間期には、自動車牽引に対応するための改修が施されました。また、一部はQF 25ポンド砲Mk.Iに改造されました。

第二次世界大戦初期にも投入されましたが、QF 25ポンド砲の増産に伴い、訓練用や沿岸砲として使用されるようになり、終戦までに退役しました。アイルランド内戦やフィンランドの冬戦争にも投入されています。

登場作品

マイケル・コリンズ: 映画の中で、イースター蜂起やアイルランド内戦の戦闘シーンに登場します。