M1897 75mm野砲

M1897 75mm野砲

M1897 75mm野砲（仏: Canon de 75 modèle 1897）は、フランスが1897年に正式に導入した、口径75mmの野砲です。この砲は、一般には“シュナイダー M1897”として知られていますが、実際にはフランスの国営兵器工廠によって生産されており、シュナイダー社は開発に関与していません。シュナイダー社が設計した他の砲と比較すると、全くの別物です。特に、M1897は同じくフランス製のM1912やM1914と弾薬の互換性がある一方、構造が複雑で小型軽量であるため、設計思想が異なることが特徴です。

特徴と性能

M1897野砲は、初めて液気圧式の駐退復座機を搭載したことで、既存の火砲に比べて連射速度が著しく向上しました。これによって、砲撃による反動で砲が後退することが軽減され、砲撃ごとに位置調整や照準をやり直す手間が省かれたため、1分あたりの発射速度が約15発に達することができました。これにより、歩兵部隊への火力支援が大幅に強化されました。この技術革新は、M1897の設計に続く多くの火砲の開発に影響を与えました。

M1897は、作動の基本能力だけでなく、採用された各国も含めて、その有効活用の場も多岐にわたっていました。例えば、第一次世界大戦から第二次世界大戦にかけて、フランスを中心にアメリカやポーランドなどで広く用いられました。フランス陸軍では主力野砲としての役割を果たし、戦争が塹壕戦に突入すると、砲弾の威力不足から榴散弾や毒ガス弾として用いられることが多くなりました。

開発の背景

1890年、ドイツのクルップ社が新設計の駐退復座機を搭載した野砲を開発しようとすると、フランスはその流れに対抗する形でM1897の開発を進めました。そして1894年に試作品が完成し、1896年に実用化した駐退復座機が完成に至ります。1898年には、照準器や防盾も装備され、正式に制式化されました。その後、1913年には大仰角を取れるように改造されたモデルが開発され、これが自走高射砲として活用されるなどしました。

各国の運用

フランス

第一次世界大戦当時、M1897はフランス陸軍の主力野砲の地位を占めましたが、塹壕戦における用途では威力不足が目立ち、主に機銃座の攻撃や榴散弾による曳火砲撃などに用いられました。戦後も長期間使用され、一部は対戦車砲に改修されることもあります。1940年のナチス・ドイツのフランス侵攻時には、ドイツ軍に接収され、多くはその後も戦場に姿を現しました。

アメリカ合衆国

アメリカでは、第一次世界大戦参戦時に当時フランスから1,900門を急遽導入し、その後は国内でライセンス生産が行われました。この砲は、M3ハーフトラックに搭載されるなど、戦場でも使用されています。1940年以降は自国製の104mm榴弾砲へと更新されますが、長く第一線を守っていました。

ポーランド

ポーランドは独立後、フランスから支援されたM1897野砲をロシアとの戦争時に使用しました。また、1939年の侵攻時には多数のM1897を保有しており、ドイツや赤軍と戦闘を展開しました。

ナチス・ドイツ

ドイツ軍は、ポーランド侵攻やフランスでの戦闘を通じ多くのM1897を鹵獲しました。鹵獲されたM1897は、そのまま7.5 cm F.K.231(f)として運用されるなど再利用がされましたが、初期には標的に対して効果的に活用されました。

諸元と最後

M1897の諸元は次のとおりです。種別は野砲で、口径75mm、砲身長は2700mm、重量は約1544kgです。射程は8,550メートル程度で、発射速度は最大15発/分となっています。生産総数は21,000門以上とも言われ、1940年まで生産が続けられたとされています。これにより、M1897は一著名な野砲として、光彩を放ちながら歴史の中にその名を刻んでいます。

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