QF 25ポンド砲

QF 25ポンド砲：イギリス軍を支えた多用途野戦砲

QF 25ポンド砲は、第一次世界大戦後から第二次世界大戦、そして戦後までイギリス軍で主力野戦砲として活躍した、野砲と榴弾砲の機能を兼ね備えた火砲です。その高い汎用性と信頼性から、イギリス連邦諸国にも広く配備され、数々の戦場でその威力を発揮しました。本稿では、QF 25ポンド砲の開発から実戦での運用、そして戦後の状況までを詳細に解説します。

開発の経緯

第一次世界大戦後、イギリス陸軍は既存のQF 18ポンド砲とQF 4.5インチ榴弾砲の後継となる新型火砲の開発に着手しました。戦後の財政難という制約の中、開発目標として「QF 18ポンド砲の砲身を改良して使用可能にする」という条件が加えられました。この条件を満たすべく開発されたのが、口径87.6mm、重量25ポンドの新型榴弾で、これを発射可能なQF 25ポンド砲が1935年に完成しました。

最初のモデルであるMk.I型は、QF 18ポンド砲Mk.IV型の砲身を改修して製造されました。そのため、安定性にやや欠け、新型榴弾の性能を十分に発揮できませんでした。この課題を克服するため、新規設計の砲身と砲架を採用したMk.II型が開発され、性能の大幅な向上が達成されました。

砲弾と射撃性能

QF 25ポンド砲は、榴弾の他に徹甲弾、発煙弾、照明弾、毒ガス弾など、様々な種類の砲弾を使用することができました。さらに、成形炸薬弾や粘着榴弾も開発され、状況に応じた柔軟な運用が可能でした。分離薬莢式で、火薬量は3段階に調整可能でしたが、Mk.I型は仰角と火薬量の制限から射程が不足していました。Mk.II型以降は、スーパーチャージと呼ばれる強装火薬の使用が可能となり、対戦車戦闘にも効果を発揮しましたが、マズルブレーキの装着が必要でした。現在でもパキスタンで榴弾などの生産が続けられている点は特筆に値します。

実戦での活躍

第二次世界大戦では、イギリスだけでなく、カナダ、オーストラリア、ニュージーランド、南アフリカ連邦など多くのイギリス連邦諸国で採用され、師団砲兵の主力火砲として活躍しました。野砲としての直接照準射撃と、榴弾砲としての間接照準射撃の両方に対応できる汎用性の高さは、他の参戦国の師団砲兵装備と比較して大きなアドバンテージでした。

エル・アラメインの戦いでは、ドイツ戦車の装甲強化に対抗して、QF 2ポンド砲に代わって対戦車戦闘にも使用されました。その後、より強力なQF 6ポンド砲やQF 17ポンド砲が開発されると、QF 25ポンド砲は主に歩兵や戦車部隊の火力支援に役割を転換しました。移動にはモーリスC8やCMPといった牽引車を使用し、32発分の弾薬を搭載可能でした。また、ビショップ自走砲やセクストン自走砲といった自走砲への搭載も実現しました。

戦後も朝鮮戦争や第二次中東戦争で使用され、1960年代にNATO標準の105mm砲に更新されるまで、長きに渡って活躍しました。イギリス連邦諸国や旧植民地では、印パ戦争やキプロス侵攻など、1980年代まで使用された記録が残っています。現在でも一部の国で予備兵器や儀礼用として保管されています。

派生型

QF 25ポンド砲にはいくつかの派生型が存在します。Mk.I型はQF 18ポンド砲の砲身を改修したもので、安定性や射程に課題がありました。Mk.II型は新規設計の砲身と砲架を採用し、性能が大幅に向上しました。Mk.III型はMk.II型の改良型で、排莢性能やマズルブレーキの改良が施されています。オーストラリアでは、軽車両で牽引可能な短砲身型のShort Mk.I型も開発されました。

まとめ

QF 25ポンド砲は、その高い汎用性と信頼性から、第二次世界大戦におけるイギリス軍の戦力に大きく貢献しました。戦後も長期間に渡って使用され続け、世界各国の戦場でその存在感を示しました。現在では、その多くは退役していますが、歴史的な遺産として、そして一部の国では予備兵器や儀礼用として、その姿を残しています。その歴史的意義は、現代においてもなお高く評価されています。

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