QF 3インチ 20cwt高射砲

QF 3インチ 20cwt高射砲：第一次世界大戦の主力高射砲

QF 3インチ 20cwt高射砲は、第一次世界大戦においてイギリス本土の防空を担った重要な兵器です。ドイツの飛行船や爆撃機に対抗するため、そして西部戦線での対空砲火として広く使用されました。また、第一次世界大戦時のイギリス海軍艦艇や、第二次世界大戦時の潜水艦にも搭載されるなど、多岐にわたる戦場で活躍しました。

名称の「20cwt」は、砲身と砲尾の合計重量（約1,016kg）を示し、他の3インチ砲と区別するためのものです。第一次大戦中、「3インチ」という言葉は、この砲を指す代名詞として用いられるほどでした。

設計と開発

本砲は、1914年にイギリス陸軍省の指示に基づき、ヴィッカース社製のQF 3インチ艦砲を改良したものが原型となっています。初期型（Mk.I）は、半自動射撃を可能にする垂直鎖栓式閉鎖機を搭載していました。この機構により、砲の発射後の反動で砲身と閉鎖機が後退・前進し、自動的に空薬莢の排出、撃発機のコック、そして装填準備が行われました。砲手が砲弾を再装填すると、砲尾が閉鎖され射撃が可能になるという画期的なシステムでした。

初期の砲弾は、弾量12.5ポンド（5.7kg）・初速2,500フィート/秒 (760 m/秒)の榴散弾でしたが、砲身への負担が大きく、飛翔時の安定性にも課題がありました。その後、1916年には弾量16ポンド（7.3kg）・初速2,000フィート/秒 (610 m/秒)の砲弾が導入され、弾道特性が向上し、榴弾の使用にも適するようになりました。

改良は続き、ライフリングの異なるMk.I*、半自動機構を廃止したMk.II、生産性を考慮して2段階動作式閉鎖機に戻したMk.III、そしてウェリン式閉鎖栓とアズベリー式砲尾を備えた1段階動作式閉鎖機を持つMk.IVが登場しました。

1917年のアメリカ陸軍の報告書によると、本砲の半自動装填システムは高仰角での動作が困難なため、ヴィッカース型の直線引き抜き式閉鎖システムに置き換えられたとされています。これにより、発射速度は若干低下しましたが、より確実な動作が期待されました。

1930年代の改良

1930年代初頭には、新型の緩衝ばね付き4輪トレーラー式砲床が導入され、旧式の運搬車が更新されました。また、新型砲身が使用されるようになり、照準算定機としてヴィッカース社製No.1照準算定機が導入されました。戦間期には、8つの派生型が新たに開発されています。

1934年までに、ロッキング・バー式の偏差照準機は、照準算定機からの情報を受信するマグスリップ式受信ダイアルに置き換えられました。[1937年]]以降は、アメリカのスペリー社製M3A3高射電算機を基にしたNo.2照準算定機が導入され、速度400マイル/時 (640 km/h)・高度25,000[[フィート]で飛行する目標の追尾が可能になりました。これらの照準算定機は、バー&ストラウド社製UB7測遠機と組み合わせて使用されました。

戦歴

第一次世界大戦

イギリスは第一次世界大戦開戦当初、高射砲を保有していませんでした。ドイツ軍がベルギーとフランス北東部を占領し、イギリス本土が空からの攻撃を受ける可能性が高まると、高射砲の必要性が高まりました。海軍から3インチ砲が転用され、イギリスの重要施設の防空に投入されました。

本砲は、高高度を飛行するツェッペリン飛行船や爆撃機からイギリス本土を防衛するのに適しており、16ポンド砲弾を使用することで、高度15,000フィート（4,600 m）まで到達することができました。これにより、砲兵隊は航空機の未来位置を予測し、偏差を計算して射撃する必要がありました。

1916年6月までに、202門の本砲がイギリス本土防空のために展開され、イギリスが保有する高射砲の総数は371門となりました。西部戦線への配備は1916年11月からです。

第二次世界大戦

1939年の第二次世界大戦勃発時には、約500門の本砲が運用されていました。新型の3.7インチ高射砲に代替されるまで重防空任務に就き、その後イギリス空軍連隊に移管され、飛行場防衛などの軽防空任務に就きました。一部は対戦車砲に転用され、本土防衛に備えました。

潜水艦備砲

第二次世界大戦中、本砲は海軍の潜水艦にも搭載されました。

フィンランドでの運用

冬戦争の期間中、イギリスはフィンランドに24門の3インチ高射砲Mk.IIIと火器管制電算機を供給しました。継続戦争でも使用されました。

現存する本砲

現在、王立砲兵博物館（イギリス）、ペンデニス城（イギリス）、非合法移民・海軍博物館（イスラエル）、対空兵器博物館（フィンランド）などに本砲が展示されています。

QF 3インチ 20cwt高射砲は、第一次世界大戦から第二次世界大戦にかけて、イギリスの防空を支えた重要な兵器であり、その歴史的価値は今日でも高く評価されています。

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