QuickTime X

QuickTime Xとは

QuickTime Xは、Appleが開発したマルチメディア技術であり、動画や音声データの再生、変換、ストリーミングなどの機能を担います。従来のQuickTimeの後継として位置づけられ、iOSのメディアテクノロジーを中核としています。2009年8月28日に発売されたMac OS X v10.6 (Snow Leopard) で初めて実装され、インテルの64ビットCPUに対応しました。

概要

QuickTime Xは、AppleのソフトウェアであるiTunesやFinal Cut Proといったマルチメディア系アプリケーションの動作を支える重要な役割を担っています。開発者向けにはQuickTime Kit (QTKit) というAPIが提供されており、従来のQuickTimeとQuickTime Xの両方に同じAPIでアクセスできます。

Mac OS X v10.6のリリース時点では、多くのアプリケーションが従来のQuickTimeのネイティブAPIを使用していましたが、今後はQTKitを利用することでQuickTime Xへの移行が推奨されていました。ただし、QTKitはOS X Mavericks (OS X v10.9) において、後継のマルチメディア技術であるAVFoundation (AV Kit) に置き換えられ、その役目を終えました。

従来のQuickTimeでは、MPEG-4やH.264などの新しいコーデックが採用され、3GPPにも対応していました。QuickTime Xでは、H.264の再生処理をGPUにオフロードすることで、CPUの負荷を大幅に軽減するシステムが導入されました。また、Grand Central Dispatchの活用により、マルチコアCPUの性能を最大限に引き出すことが容易になりました。

しかし、従来のQuickTimeがプラグインシステムによって多様なファイル形式やコーデックに対応していたのに対し、QuickTime Xではプラグインがサポートされず、対応コーデックの種類は大幅に減少しました。

以前のQuickTimeでは、再生専用のQuickTime Playerと、メディアデータの編集、変換、保存が可能なQuickTime Player Proの2つが存在しましたが、QuickTime XではQuickTime Playerのみとなり、Pro版でなくてもトリミングや変換などの基本的な編集が可能になりました。さらに、新しいライブストリーミング技術として、HTTPライブストリーミングが導入されました。

QuickTime Xは64ビット対応であるため、Mac OS X v10.5以前のバージョンやWindowsでは利用できません。Windows版の従来のQuickTimeの提供も終了しています。ただし、Snow Leopardを搭載したMacであれば、32ビットCPUでもQuickTime Xを利用できます。

QuickTime 7との違い

QuickTime 7とQuickTime Xは、それぞれ独立したソフトウェアとして扱われます。Snow Leopardをインストールすると、デフォルトではQuickTime Xのみがインストールされます。QuickTime 7を使用するには、別途インストールする必要があります。このため、QuickTime 7とXの共存は可能です。QuickTime 7をインストールすると、QuickTime Xではサポートされない機能が必要な場合にのみQuickTime 7が呼び出されるようになります。

QuickTime 7以前向けのプラグインは、基本的にQuickTime Xでは利用できません。しかし、QuickTime XはQTKitを通じて、64ビット対応ではない古いコーデックも利用することができます。

QuickTime Player

QuickTime XのQuickTime Playerは、デザインや機能が従来のQuickTime Playerとは大きく異なります。

デザイン

黒を基調としたシンプルなデザインとなり、操作カーソルをしばらく操作しないか、ウィンドウから遠ざけると、ウィンドウのタイトルバーとコントローラが隠され、再生中の動画のみが表示されます。

編集機能

標準で「トリム」機能が搭載され、動画の一部を切り出すことが可能になりました。また、iPhoneやApple TV向けの書き出し機能や、YouTubeへのアップロード機能も追加されました。

録音・録画機能

QuickTime Playerで、マイクからの録音やiSightなどのWebカメラからの録画ができるようになりました。さらに、Macの画面を動画でキャプチャする機能も搭載され、MOV形式で書き出されます。

まとめ

QuickTime Xは、従来のQuickTimeから大きく進化し、新しい技術を取り入れながらも、よりシンプルで使いやすいものへと変化しました。プラグインの廃止や64ビットへの移行など、変更点も多いですが、現代のマルチメディアニーズに対応するための重要なアップデートでした。

脚注

出典

外部リンク

Apple - OS X アプリケーション QuickTime X

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