RCASS

RCASS：幻の農業用無線操縦ヘリコプター

RCASS（Remote Control Splay System、遠隔操作式噴霧装置）は、1980年代に農林水産航空協会が開発を試みた農業用無線操縦ヘリコプターの試作機です。農薬散布作業の省力化を目指し、当時としては画期的な技術が導入されましたが、実用化には至りませんでした。

開発の経緯

1980年、農林水産省の外郭団体であった農林水産航空協会は、農薬散布作業の省力化を目的に、遠隔操作による無人ヘリコプターの開発に着手しました。米海軍の艦載無人対潜ヘリコプターQH-50 DASHを参考に、二重反転ローター式の無線操縦ヘリコプター、遠隔誘導式小型飛行散布装置の開発が進められました。

エンジンの提供をきっかけに、ヤマハ発動機が開発に参加。1983年には再設計が行われ、1984年に二重反転ローター式のRCASS1号機が完成しました。しかし、安定性に問題があり、実用性に欠けるという課題が残りました。1986年に開発は終了し、翌1987年にはRCASS2号機が初飛行しましたが、結局、2機の試作機が製造されたのみで、量産化には至りませんでした。

1987年11月には、農林水産航空協会から産業用無人ヘリコプター展示デモフライトで試作機が公開されましたが、100kgを超える重量や不安定性の問題が解決されず、1988年3月に開発は打ち切られました。

二重反転ローター式での開発が難航したため、1985年からは並行して、趣味用の無線操縦ヘリコプターの開発で実績があったヒロボーが計画に参加。オーソドックスなテールローターを装備した形式に変更して開発が進められ、1987年にR-50が完成しました。

性能・主要諸元

RCASSの主要諸元は以下の通りです。

形式：同軸反転式ヘリコプター
エンジン：水冷・2サイクル・単気筒・292cc・28ps
総重量:80kg(ドライ)、100kg(グロス)
姿勢安定装置:ジャイロ安定式
全長:1.4m
全幅:1.4m
全高:1.8m
ローター直径:2.6m

RCASSが残した教訓

RCASSの開発は、当時の技術では克服できない課題が多く、実用化には至りませんでした。しかし、その開発過程で得られた知見や技術は、その後の無人ヘリコプター開発に大きく貢献しました。特に、ヤマハ発動機が培ったエンジン技術や機体制御技術は、RMAXなどの実用的な農業用無人ヘリコプターの開発に活かされています。

RCASSは、幻の機体としてその名を知られるのみですが、日本の無人ヘリコプター開発の黎明期における重要な足跡として、記憶されるべき存在と言えるでしょう。

関連項目

R-50
RMAX
RMAX Type II
RMAX Type II G
FAZER
RPH-2

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