RSTコード

RSTコードとは

RSTコードは、無線通信、特にアマチュア無線において、相手局の受信状況を報告する際に用いられるコードです。了解度（Readability: R）、信号強度（Signal Strength: S）、そして電信における音調（Tone: T）の3つの要素で構成されています。

このコードを用いた報告は、RS(T)レポート、またはシグナルレポートと呼ばれます。信号強度は、本来は主観的なものでしたが、現代では受信機のSメーターの読みが報告されることが一般的です。了解度と音調は主観的な評価に基づいて報告され、電話（音声通信）ではRS、電信（モールス符号）ではRSTが使用されます。

歴史

RSTコードは、1934年にアマチュア無線分野で初めて使用され始めました。それ以前は、QSAコードと呼ばれる1から5までの数値が受信報告に用いられていましたが、信号の強さと了解度が混同されていたため、混信や雑音が多い状況では適切な報告が困難でした。

1925年からはRコードという1から9までの数値で信号の音の大きさを表すコードも使用され、QSAコードと組み合わせて使用されたため、混乱がさらに大きくなりました。この問題を解決するため、1934年8月に商用局で使用されていたトラフィック・フレーム・コードを基にした提案が行われました。同年10月には、アーサー・ブラーテン（W2BSR）によって、アマチュア向けのよりシンプルなRSTコードがQST誌上で提案されました。当初の提案では、了解度と信号強度は1から5、音調は1から9の数値で表されていましたが、すぐに現在の1から9の数値で表す形に変更されました。

シンプルで分かりやすいRSTコードは、すぐにアマチュア無線家の間で受け入れられ、1936年度版のARRLハンドブックには、アメリカ国内での受信報告のほとんどがRSTコードで行われるようになったと記載されています。また、国際的にも広く使われるようになりました。

了解度（R）

了解度（R）は、通信内容がどれだけ理解できるかを表し、1から5の数値で評価します。この値は、メリットと表現されることもあります。

信号強度（S）

信号強度（S）は、受信信号のレベルを表し、1から9の数値で評価します。本来は主観的なものでしたが、現在では受信機のSメーターの読みが報告されることが一般的です。信号強度が9を超える場合は、9+20dBのようにデシベルで表現したり、9+のように単純に表現することもあります。

異なる受信機間でのSメーターの読みの違いを解消するため、1981年に国際アマチュア無線連合（IARU）によってSメーター校正に関する勧告が合意されました。S値の1単位は6dBと定義され、Sが1増えるごとに電圧比は2倍、電力比は4倍になります。S9表示時の受信機の入力電力は、HF帯で-73dBm、VHF/UHF帯で-93dBmと定義されています。

Sメーターの歴史も古く、1935年にはSメーターを搭載した受信機が登場しており、1939年頃には、おおよそ50μVの入力電圧をS9として表示していました。S値の差はメーカーやモデルによって異なっていましたが、1940年代末には多くのメーカーで6dBがS値の単位として使われるようになりました。

音調（T）

音調（T）は、モールス符号を受信した際の音の質を表し、1から9の数値で評価します。通常は、特に問題がなければ9が報告されます。

初期のアマチュア無線では、電源の性能が悪く、リプルを含んだ音調の局がありました。また、初期の無線通信では、十分に平滑されていない直流電源を使用していたため、独特の音調で送信を行う局もあり、音を聞くだけで局を区別できたと言われています。音調の定義は、これらの歴史的背景を反映したものとなっています。

付加コード

あまり使用されることはありませんが、電信での信号音の品質を表すための付加コードとして、以下のものがあります。

X：水晶発振で制御された安定した音
C：チャープ（周波数の変化）がある音
K：キークリック音がある

これらのコードは、RSTコードの最後に記号として追加され、例えば「599K」のように使用されます。

RSQコード

RSTコードは、PSK31などの短波デジタルモードにはうまく適用できないため、RSQ（Readability Strength Quality）と呼ばれるコードが、IARUによって勧告されています。

RSQコードは、以下の要素で構成されます。

了解度（Readability）：読み取り可能なテキストの割合を示します。
強度（Strength）：スペクトル表示で読み取れるノイズに対する信号の強さを示します。
品質（Quality）：スペクトル表示でのスプリアス成分などから判断します。

まとめ

RSTコードは、アマチュア無線における通信状況を正確に伝えるための重要なツールです。その歴史や各要素の意味を理解することで、より効果的な交信が可能になります。また、デジタルモードで使用されるRSQコードも、現代の無線通信において重要な役割を果たしています。

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