Risc PC

Risc PC：拡張性に優れた高性能RISCコンピュータ

Risc PCは、エイコーン・コンピュータが1994年にリリースした、RISC OSを搭載した画期的なコンピュータです。Acorn Archimedesの後継機として開発され、開発コードネームは「Medusa」と呼ばれていました。その特徴は、モジュール構造による高い拡張性と、当時としては先進的なARMプロセッサの採用にありました。

Risc PCの特徴

RISC OSの搭載:
Archimedesと同様に、RISC OSオペレーティングシステムはROMモジュールに格納されています。Risc PCではROMベースのOSを拡張し、ディスク上の設定情報や、以前はROMにあったアプリケーションを含むディレクトリ構造を扱えるように改良されました。
モジュール構造:
Risc PCの最大の特徴は、拡張筐体「スライス」を重ねることで、内部の拡張スペースを広げられる点です。各スライスには2つのPoduleベイ（拡張カードスロット）と、2つのドライブベイが備わっており、ユーザーは必要に応じて機能を追加できました。
強力なプロセッサ:
ARMプロセッサを採用し、初期のモデルから、後にStrongARMプロセッサにアップグレードすることで、非常に高い処理能力を発揮しました。また、コプロセッサとして、Intel 486やPentiumベースのCPUカード、DSPカードなども利用可能でした。

仕様詳細

メモリ: SIMMスロット x2 最大256MB
ビデオ: VIDC20コントローラ、オプションでデュアルポートVRAM（最大2MB）
拡張バス: EurocardサイズのPoduleに対応、最初の2つはDMAをサポート
オペレーティングシステム: RISC OS 3.5, 3.6, 3.7, 後にRISC OS 4
ケース: Cambridge Product Design Allen Boothroydのデザイン、スライス構造
ポート: シリアル、パラレル、PS/2キーボード、Acornマウス、ヘッドフォン音声出力、VGA、ネットワーク（オプション）
CPU: ARM610、ARM700（プロトタイプ）、ARM710、ARM810（プロトタイプ）、StrongARM。Intel 486/Pentium CPUカード、DSPカードも利用可能
サイズ: 117(2段重ね時182) x 355 x 384 mm (高さx幅x奥行き)

Risc PCの歴史

1994年: Risc PC 600 発売（30MHz ARM6 CPU搭載）
1995年: ARM7 CPUアップグレード、Risc PC 700 発売
1996年: StrongARM CPUアップグレード開始
2000年: Castle TechnologyからKinetic Risc PC発売
2001年: Viewfinder PoduleによりIBM PC用AGPグラフィックカードが利用可能に
2003年: エイコーンによるRisc PCの製造終了

Risc PCの現在と後継機

Risc PC自体の製造は終了しましたが、その設計思想は以下のような後継機に受け継がれています。

Iyonix PC: XScaleプロセッサとPCIバスを採用(Castle Technology)
A9Home: サムスン電子 S3C2440 ARMプロセッサを採用(Advantage6)
RiscStation R7500: ARM7500-FE プロセッサを採用



Risc PCは、その先進的な設計と拡張性により、多くのユーザーに愛されたコンピュータです。その独特なスライス構造や、ARMプロセッサによる高性能は、当時のコンピュータ業界に大きな影響を与えました。



[参考資料]

Acorn's famous 10-slice Rocket Ship RiscPC including pizza oven and kitchen sink - ウェイバックマシン
Advantage six reveal A9Home to the press
Castle reveal Kinetic Risc PC to the press
Risc PC 10th Birthday
Risc PC production ceases
Castle bids farewell to Risc PC

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