S-8ロケット弾

S-8ロケット弾は、旧ソビエト連邦（ソ連）によって開発された、航空機から地上目標を攻撃するために用いられる直径80mmのロケット弾です。前任のS-5ロケット弾（直径55mm）の後継として位置づけられ、その弾頭部の容積を拡大することで、より多様な任務に対応できるよう設計されました。

開発と特徴

S-8の開発は1970年代に始まり、改良を経て1984年にソ連軍への実戦配備が開始されました。最大の特徴は、その豊富な弾頭バリエーションにあります。標準的な成形炸薬弾（HEAT）や、広範囲に被害をもたらす破片効果榴弾に加え、目標を視界から遮蔽するための煙幕弾、建造物などを炎上させる焼夷弾などが生産されました。

さらに、S-5からの直径拡大という利点を活かし、滑走路を破壊するためのS-8BMや、広範囲の目標に対して高い破壊力を持つサーモバリック弾頭（燃料気化弾頭）を備えたS-8DMといった特殊な弾頭タイプも登場しています。これにより、S-8は様々な地上目標（装甲車両、構造物、集結した兵員など）に対して効果的な攻撃手段となりました。

弾頭の種類によって若干の差異はありますが、S-8ロケット弾の標準的な諸元は以下の通りです。

全長: おおよそ1.5メートルから1.7メートル
重量: 11.3キログラムから15.2キログラム
有効射程: 2キロメートルから4キロメートル

運用とロケットポッド

S-8ロケット弾は、単体で航空機に搭載されるのではなく、Bシリーズと呼ばれる専用のロケットポッドに収容されて運用されます。これらのポッドは、航空機のパイロンなどに装着され、複数発のロケット弾を連続して発射することを可能にします。Bシリーズのポッドには、収容弾数や搭載可能な航空機の種類によって複数のモデルが存在します。

代表的なBシリーズのロケットポッドは以下の通りです。

B-8V7 (Б-8В7)
収容弾数: 7発
寸法 (長さ×直径): 1,700mm × 336mm
ポッド単体の重量 (空虚重量): 40kg
主な搭載航空機: 固定翼機、ヘリコプターの双方に搭載可能ですが、具体的な機種は多岐にわたります。

B-8V20 (Б-8V20)
収容弾数: 20発
寸法 (長さ×直径): 1,700mm × 520mm
ポッド単体の重量 (空虚重量): 123kg
主な搭載航空機: Mi-17、Mi-24、Mi-28、Ka-29、Ka-50、Ka-52など、主にヘリコプターに搭載されます。

B-8M1 (Б-8M1)
収容弾数: 20発
寸法 (長さ×直径): 2,760mm × 520mm
ポッド単体の重量 (空虚重量): 160kg
主な搭載航空機: MiG-27、MiG-29、Su-24、Su-25、Su-27など、主に固定翼機に搭載されます。

現状

S-8ロケット弾は、旧ソ連時代に開発された兵器ですが、現在もロシア空軍の攻撃機やヘリコプターに広く装備されています。また、旧ソ連・ロシア製の航空機を運用している世界中の多くの国々にも輸出され、対地攻撃の主力ロケット弾として使用され続けています。その豊富な弾頭と比較的簡便な運用性から、現代の紛争においても頻繁に使用されている汎用性の高い兵器システムと言えます。

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