SAR-Lupe

SAR-Lupe（ザール・ルーペ）

SAR-Lupeは、ドイツが開発・運用する初めての軍事偵察衛星システムです。その名称は、中心技術であるSAR（Synthetic Aperture Radar、合成開口レーダー）と、ドイツ語で「拡大鏡」を意味する「Lupe」に由来し、地表を詳細に観測する能力を示しています。

このシステムは、ブレーメンに本拠を置くOHB-System AGが開発を主導しました。合計5機の人工衛星から構成されており、各衛星の重量は約770キログラムです。これらの衛星は、SAR技術を活用することで、悪天候下や夜間といった視界の悪い状況においても、高い解像度で地上の詳細な画像を撮影する能力を持っています。光学センサーに比べて、天候や時刻に左右されない点が大きな特徴です。

システムの軌道上への展開は段階的に行われました。初号機は、当初予定されていたスケジュールからおよそ2年遅れて、2006年12月19日にロシア北部のプレセツク宇宙基地から打ち上げられました。その後、約半年おきに残りの4機が順次打ち上げられ、最後の衛星が軌道に乗ったのは2008年7月でした。これにより、計画されていた全5機体制が整い、システム全体が完全に機能するようになりました。

SARセンサーの中核をなす技術は、フランスとイタリアに拠点を持つタレス・アレーニア・スペース社によって供給されています。彼らの専門知識が、SAR-Lupeシステムの高性能な画像取得能力を支えています。

SAR-Lupeは、ドイツ単独の能力に留まらず、国際的な連携も視野に入れています。特に、2002年7月30日には、ドイツとフランスの間で重要な合意が交わされました。これは、ドイツのSAR-Lupeシステムと、フランスが運用する光学偵察衛星システム「ヘリオス2A」との間で、取得した画像や情報の相互利用、共同運用を進めるという内容です。この連携により、両国は互いの強み（SARによる全天候観測と光学による高解像度観測）を補完し合うことが可能になりました。このフランスとの協力関係を皮切りに、イタリアを含む他の欧州連合（EU）加盟国も、将来的な連携の可能性に関心を示しています。このような国際協力は、欧州全体の宇宙からの地球観測能力を向上させる上で重要な意味を持っています。

OHB-System AGが主契約者として全体の開発・統合を担う一方、運用やその他のエンジニアリングについてはLSE Space Engineering & Operations AGなども関与しています。SAR-Lupeは、COSMO-SkyMedやTerraSAR-Xといった他のSAR衛星システムや、欧州連合衛星センター（EUSatCen）のような組織とも関連が深く、欧州の宇宙利用における重要な一翼を担っています。

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