プレセツク宇宙基地

プレセツク宇宙基地：ロシアの極北に位置するロケット発射場

プレセツク宇宙基地は、ロシア連邦アルハンゲリスク州に位置するロケット発射場です。モスクワから北へ約800キロメートル、州都アルハンゲリスクの南方にあるこの施設は、旧ソ連時代に極秘裏に建設され、その存在は長らく公表されませんでした。

歴史：ICBM発射場から宇宙拠点へ

プレセツク宇宙基地の建設は1957年に始まり、当初は大陸間弾道ミサイル（ICBM）の発射場として設計されました。1959年12月、R-7ロケットの初打ち上げによって運用が開始されました。基地建設にあたり、ミサイル部品輸送の要衝となるアルハンゲリスク近郊のプレセツクに鉄道駅が利用され、基地周辺には「ミルニィ」（平和な、を意味するロシア語）という町が建設されました。

ソ連時代には、1500発以上のロケットが発射されるなど、主要な発射場として機能しました。その存在は当初極秘でしたが、1960年代半ばに英国の物理学者ジェフリー・ペリーとその学生による軌道の分析によってその存在が明らかになり、冷戦終結後にはCIAが1950年代後半からその存在を疑っていたことが公表されました。旧ソ連政府が公式に基地の存在を認めたのは1983年になってからのことです。

運用：高傾斜軌道衛星の主要拠点

プレセツク宇宙基地は、タイガと呼ばれる北方針葉樹林に囲まれた平坦な地形に位置しています。北側が開けているため、ロケット残骸の落下地点が主に無人地帯となることから、モルニア軌道（準天頂軌道）や極軌道といった、高い軌道傾斜角を持つ軍事衛星の打ち上げに最適な場所です。この地理的特性から、プレセツク宇宙基地は、アメリカ合衆国カリフォルニア州のヴァンデンバーグ空軍基地と比較されることがあります。

ソ連崩壊後、カザフスタン領となったバイコヌール宇宙基地の利用に制約が生じたことから、プレセツク宇宙基地の重要性はますます高まっています。ただし、低軌道傾斜角の衛星や静止軌道衛星の打ち上げには、低緯度に位置するケネディ宇宙センターやギアナ宇宙センターの方が有利です。それでも、新型ロケットであるアンガラは、主にプレセツクから発射される予定です。

現在、ソユーズ、ロコット、アンガラといったロケットがプレセツクから打ち上げられています。一方、プロトンやゼニットといった大型ロケットは、バイコヌール宇宙基地からのみ発射されます。また、プレセツク宇宙基地では、旧式化したミサイルの新型への置き換えのための試験発射も実施されています。2012年には、長年使用されたソユーズUロケットの最終打ち上げが行われました。

ロシアは、バイコヌール宇宙基地の代替として、極東アムール州にボストチヌイ宇宙基地を建設しており、2016年には最初のロケット打ち上げに成功しています。

発射台と地理：閉鎖都市と軍事施設

プレセツク宇宙基地は、ミルニィ町に位置しています。ミルニィ町は、基地を含む軍事施設のため、1966年から閉鎖都市として指定されており、一般人の立ち入りは制限されています。基地から9キロメートル離れた場所には、プレセツク町があります。最寄りの空港はプレスツイ空港、鉄道駅はGorodskaya駅です。

事故：幾度かの悲劇

プレセツク宇宙基地の歴史には、数々の事故が記録されています。1973年と1980年には、ロケット発射準備中の爆発事故が発生し、多数の犠牲者を出しました。2002年には、ソユーズロケットの打ち上げ失敗による事故が発生し、負傷者が出ています。2024年には、新型大陸間弾道ミサイル「サルマート」の発射実験失敗により、宇宙基地に大きなクレーターが発生したと報じられています。これらの事故は、宇宙開発におけるリスクの高さを改めて認識させるものです。

まとめ

プレセツク宇宙基地は、ロシアの宇宙開発において重要な役割を果たすロケット発射場です。その歴史、運用、そして幾多の事故は、宇宙開発の困難さと、その進歩の歴史を物語っています。今後も、ロシアの宇宙活動における重要な拠点として、その役割を果たし続けるでしょう。

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