SIGNAL (カシオペアのアルバム)

CASIOPEA『SIGNAL』

2007年11月7日に世に送り出された『SIGNAL』は、日本の代表的なフュージョンバンド、カシオペアにとって、記念すべき通算40作目にあたるスタジオ・アルバムです。この作品が発表された時期、カシオペアはレギュラーメンバーである野呂一生（ギター）、向谷実（キーボード）、鳴瀬喜博（ベース）に加え、強力なサポートミュージシャン「Synchronized DNA」として知られる神保彰と則竹裕之という二人のドラマーを迎えた、特徴的なツインドラム体制で精力的に活動しており、本作もこの盤石な編成によって制作されました。

参加メンバーを見てみましょう。カシオペアの創造性と演奏の要である野呂一生がギターを担当し、卓越した技術とメロディセンスで楽曲に彩りを加えます。キーボードの向谷実は、シンセサイザーや様々な鍵盤楽器を操り、楽曲に広がりと奥行きを与えるサウンドスケープを描き出します。そして、ベースの鳴瀬喜博は、その個性的なベースプレイでグルーヴを支えるだけでなく、本作では一部の楽曲でプログラミングやパーカッション、さらにはティンバレスも担当し、楽曲の多様性を豊かにしています。サポートとして迎えられたSynchronized DNAは、日本を代表するドラマーである神保彰と則竹裕之の二人組です。神保は楽曲の左チャンネル、則竹は右チャンネルに配置され、その驚異的な連携によるツインドラムパフォーマンスは、アルバム全体に圧倒的な迫力と複雑なリズム構造をもたらしています。神保はまた、一部の楽曲でプログラミングも手掛けており、リズムセクションの可能性をさらに押し広げています。このツインドラム体制こそが、この時期のカシオペアサウンドを象徴する最大の魅力であり、『SIGNAL』においてそのポテンシャルが最大限に引き出されています。

本作のリリースにおいて、特筆すべきは、通常盤と同時に特殊な形態のCDが発売されたことです。それが『CASIOPEA with Sync DNA Plays Guitar MINUS ONE SIGNAL』(GNCT-1005)と題されたディスクです。これは、アルバム本編から野呂一生によるギターパートのみを完全に抜き去った、いわゆる「ギター・マイナスワン」仕様となっています。カシオペアの音楽においてギターが担う極めて重要な役割を考慮すると、このマイナスワン盤は、リスナーであるギタリスト自身がバンドの一員として演奏に参加できるという、非常に画期的かつ実践的な試みでした。プロフェッショナルなリズム隊と鍵盤楽器の演奏をバックに、自分のギターで心ゆくまでセッションを楽しめるこのディスクは、楽器演奏者、特にギタリストにとっては非常に価値のあるツールとして注目を集めました。これは単なるカラオケ音源とは異なり、高度な技術と創造性が求められるカシオペアの楽曲に、リスナー自身が挑戦する機会を提供するものです。

アルバム制作は、多くのプロフェッショナルの手によって支えられています。作品全体のプロデュースは、メンバー自身であるカシオペアが担当し、バンドとしての音楽的方向性を確立しました。ディレクションはギタリストの野呂一生が務めています。サウンドの録音とミキシングは、高い評価を得ているランドマーク・スタジオおよびスタジオ・ジャイブで行われ、倉石裕治氏がメインエンジニアとしてその手腕を発揮しました。アシスタント・エンジニアとして内藤慎一氏と大川誠氏が参加し、制作をサポートしています。最終的な音質を決定づけるマスタリング作業は、FLAIRにて宮本茂男氏によって丁寧に行われました。また、現代的なサウンドメイクに不可欠なマニピュレーター・テクニシャンとして堀内靖氏が、そしてツインドラムという特殊な編成を支えるドラム・テクニシャンとして枝川光孝氏、Hajime Ishizuka氏、Yuhei Yamazaki氏がクレジットされています。アルバムのヴィジュアル面においても、Ken Narikawa氏がアートディレクションとデザインを手掛け、Misaki Shimamura氏、Masaru Sato氏がアート・コーディネーションを担当するなど、多くのスタッフが関わっています。アルバムジャケットを飾る写真は、ランドマーク・スタジオで小澤千香子氏によって撮影されたものです。

『SIGNAL』は、Synchronized DNAとの共演による強力かつ緻密なツインドラムをフィーチャーした、この時期のカシオペアのサウンドを代表する作品であり、同時にギター・マイナスワンCDというユニークな試みを行った点でも、ファンにとって記憶に残るアルバムと言えるでしょう。バンド自身の確固たるヴィジョンのもと、経験豊富なエンジニアチーム、テクニシャン、そして優れたアートスタッフといった多くの関係者が一丸となって制作にあたり、高いクオリティの作品が生み出されました。

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