SL村上ひな街道号

SL村上ひな街道号は、東日本旅客鉄道（JR東日本）が羽越本線で運行している臨時列車の名称です。この列車は、新潟県村上市に春の訪れを告げる一大イベント「町屋の人形さま巡り」の期間に合わせて、2002年（平成14年）から毎年運転されています。村上市に残る歴史的な町屋や、そこで大切に受け継がれてきた雛人形を全国の人々に紹介し、イベントを盛り上げることを目的としています。

運行の特色と経路の変遷

列車名にもある通り、この列車の最大の特徴は蒸気機関車（SL）が客車を牽引することです。運行ダイヤは、一般的に午前中に新津駅を出発し村上駅へ向かい、午後に村上駅を出発する形が基本となっています。

運行開始当初の2006年までは、新潟駅と村上駅の間を往復する経路でした。しかし、2007年から2017年にかけては、往路は新潟駅発村上駅行き、復路は村上駅発新津駅行きという運転形態に変更されました。これは、復路が新発田駅から羽越本線を南下して、車両基地のある新津駅へ直通するためです。2006年の復路運転時には、途中で長時間停車する駅があり、新発田駅で先行する普通列車に乗り換えることも可能でした。その後、新潟駅の高架化が完成した2017年度以降は、往復ともに新津駅発着で運転されています。

停車駅は、基本的に新津駅、新発田駅、中条駅、坂町駅、村上駅です。

使用車両

牽引機関車としては、新津運輸区に所属するC57形180号機や、高崎車両センター高崎支所に所属するD51形498号機が主に用いられます。客車には、主に新潟車両センターに所属する「SLばんえつ物語」用の12系客車（7両編成）が使用されます。ただし、客車の検査や改造工事に伴い、「SLばんえつ物語」用の客車が使用できない年には、高崎車両センター高崎支所所属の12系客車（6両編成）や旧型客車（6両編成）が代用されることもありました（例: 2013年、2014年）。

沿革と代替牽引機

2002年にD51 498牽引で片道運行として始まったこの列車は、2003年には坂町駅の転車台修復により往復運転が可能となりました。その後、C57 180も牽引に加わり、SL牽引での運行が定着しました。しかし、蒸気機関車は検査や故障などにより使用できない場合があります。2011年には東北地方太平洋沖地震の影響で運休となり、計画されていたディーゼル機関車(DL)牽引での運行も実現しませんでした。2015年には、C57 180が全般検査中で、他のSLも使用できなかったため、DE10形ディーゼル機関車による「DL村上ひな街道号」として運転されました。さらに2019年には、C57 180の故障により、往路はEF81形、復路はEF64形電気機関車(EL)による「EL村上ひな街道号」として運転され、村上駅では両機関車が展示されるという珍しい企画も行われました。2020年はコロナ禍以前に運行設定がありませんでした。2021年は片道運行となり、2022年と2023年は「SL村上ひな街道号」としては運転されず、代わりに観光列車「ひな街道Shu*Kura」が運転されました。2024年、2025年は往路SL、復路ELという形で運行されています。

別愛称でのSL列車

「SL村上ひな街道号」以外にも、村上にちなんだSL牽引の臨時列車が運行されたことがあります。2003年と2004年には、毎年夏に開催される村上大祭に合わせて「SL村上大祭号」が運転されました。この列車は「SLばんえつ物語」と同じC57 180と客車を使用し、SL村上ひな街道号とほぼ同じ区間・ダイヤで運行されました。また、C57 180が1999年に復元されてから初めて白新線・羽越本線に乗り入れたのは、このSL村上大祭号（2003年）でのことでした。

さらに、2010年と2011年には、村上屏風祭りの時期に合わせた「SL村上屏風まつり号」が運転されました。2010年には、復路で一部車両を貸し切ってハイボールやビールを提供する「SLレトロ・ハイボールトレイン」が企画されました。2011年の運行では、座席指定券なしで乗車できる自由席車両が主体となり、「乗車券のみでSL列車に乗車できる」ことがアピールポイントとされました。この時期は新潟・福島豪雨で磐越西線が被災し「SLばんえつ物語」が長期運休していたため、羽越本線でのSL運行は貴重な機会となりました。

これらの臨時列車は、地域のイベントと連携し、鉄道ファンだけでなく多くの人々にとってSLとの触れ合いの機会を提供しています。

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