STANAG

STANAG：NATOの軍事標準化規格

北大西洋条約機構（NATO）加盟国は、軍事作戦における相互運用性の向上を目的として、様々な装備や技術に関する標準化規格STANAG（Standardization Agreement）を策定しています。STANAGは、NATOの公用語である英語とフランス語で公開されており、加盟国間の武器や弾薬、装備品の共通化を促進する役割を担っています。

STANAGで規定されている項目は多岐に渡り、弾薬、小火器、機関砲、戦車砲、榴弾砲といった兵器類から、ピカティニーレールなどの装備品、戦術データリンクシステムまで網羅しています。例えば、7.62x51mm NATO弾を始め、NATO標準の多くの弾薬はSTANAGで定義されています。また、STANAG 2324はピカティニーレールに関する規格を定めており、これはアメリカのMIL-STD-1913と同一の内容となっています。

STANAGの例

STANAGは、番号と内容で構成されており、以下にいくつかの例を示します。

弾薬:

小火器用: 9×19mm弾（STANAG 4090）、4.6×30mm弾（STANAG 4820）、5.7×28mm弾（STANAG 4509）、5.56×45mm弾（STANAG 4172）、7.62×51mm弾（STANAG 2310）、12.7×99mm弾（STANAG 4383）など
機関砲用: 20×102mm弾（STANAG 3585）、25×137mm弾（STANAG 4173）、27×145mmB弾（STANAG 3820）、30×113mmB弾（STANAG 3231）、30×173mm弾（STANAG 4624）、35×228mm弾（STANAG 4516）など
戦車砲用: 105×617mmR弾（STANAG 4458）、120×570mm弾（STANAG 4385）など
榴弾砲用: 105mm口径（STANAG 4425）、155mm口径（STANAG 4425）など

その他の装備:

STANAGマガジン（STANAG 4179）
ピカティニーレール（STANAG 2324）
軽装甲車両および輸送車両の対弾丸・対地雷能力（STANAG 4569）

戦術データ・リンク:

リンク11（STANAG 5511）
リンク14（STANAG 5514）
リンク16（STANAG 5516）
* リンク22（STANAG 5522）

STANAGの課題：互換性の問題

STANAGは加盟国間の装備品共通化を目指していますが、現実には完全な互換性が確保されているとは限りません。各国で製造方法が異なるため、ある国で製造された弾薬が、他の国のSTANAG規格対応兵器で問題なく使用できるかどうかは、必ずしも保証されていません。実際に試験が行われることは稀であり、多くの場合、互換性は未検証です。

例えば、ロシアのウクライナ侵攻において、ドイツが供与したゲパルト自走対空砲に、ノルウェーから供与された35mm口径弾を使用しようとした際に、砲弾がゲパルトで認識されないというエラーが発生しました。この事例は、STANAG規格の遵守だけでは、完全な相互運用性が確保されないことを示しています。そのため、既存弾薬のアップグレードや、改善型の弾薬生産が必要となる事態も発生しています。

STANAGはNATO加盟国間の相互運用性を高めるための重要な取り組みですが、現実的な課題も多く存在します。完全な互換性の実現には、更なる努力と検証が必要となるでしょう。

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