STS-32

STS-32ミッション：通信衛星の展開とLDEF回収

STS-32は、NASAのスペースシャトル計画における33回目のミッションであり、スペースシャトルコロンビアの9回目の飛行でした。1990年1月9日にケネディ宇宙センター第39発射施設のA発射台から打ち上げられ、1986年以来初めて同発射台が使用されました。また、移動式発射プラットフォーム-3(MPL-3)が初めてスペースシャトルの打ち上げに用いられたミッションでもあります。

ミッションの目的と概要

このミッションの主な目的は、防衛通信衛星Syncom IV-F5（後のLeasat 5）の展開と、長期曝露実験施設(LDEF)の回収でした。LDEFは、チャレンジャー号爆発事故の影響で回収が4.5年も遅れていました。Syncom IV-F5は、飛行2日目に展開され、3段目のキックモーターによって静止軌道に投入されました。飛行4日目には、ボニー・J・ダンバーがシャトル・リモート・マニピュレータ・システムを用いてLDEFを回収しました。

LDEFの回収は、太陽放射の影響や衛星周辺の環境によって軌道減衰が加速していたため、非常に重要なタイミングでした。専門家は宇宙船の軌道の安定性を注意深く監視し、LDEFが時間通りに回収されなかった場合、軌道が低くなりすぎてスペースシャトルでは安全に近づけなくなり、1990年2月頃に大気圏に再突入して破壊されると予測していました。そのため、このミッションの正確な打ち上げ時刻は、打ち上げの12時間前にLDEFの最新の追跡データを用いて決定されました。

長期滞在と科学実験

STS-32は、約11日間に及ぶミッションであり、当時のスペースシャトルのミッションとしては最長記録となりました。NASAは、ミッション終了後、乗組員が長期間無重力に曝露されたことによる影響と、それが着陸時の乗組員のパフォーマンスに与える影響に関するデータを収集しようと計画していました。このミッションで得られたデータは、後のスペースシャトルの運用に役立てられました。

ミッドデッキには、Syncom IV-F5衛星の他に、以下の科学ペイロードが搭載されました。

Characterization of Neurospora Circadian Rhythms (CNCR)
Protein Crystal Growth (PCG)
Fluid Experiment Apparatus (FEA)
American Flight Echocardiograph (AFE)
Latitude / Longitude Locator (L3)
Mesoscale Lightning Experiment(MLE)
IMAXカメラ
Air Force Maui Optical Site (AMOS)

これらの実験は、宇宙環境における様々な現象や、それが生物や材料に与える影響を調べるために行われました。

発射台の改修と打ち上げ

第39発射施設A発射台は、STS-32の打ち上げのために大幅に改造されました。1986年のSTS-61-C以来、改修を終えた発射台の初めての利用となりました。NASAは、乗組員の緊急時脱出システムとシャトルのペイロードルームを改良し、水系システムの凍結防止装置を増やし、推進剤の積載時に作動させるデブリトラップを設置し、耐気候性を高め、電源ケーブル等を増設しました。

アポロ時代の3つの打ち上げ構造の中で最も古いMPL-3も、スペースシャトルで使用するために大幅な改造を受けました。塔が撤去され、3つの排気口が再配置され、電気系、機械系の地上の支援システムが改修されました。

打ち上げは当初1989年12月18日に予定されていましたが、発射台Aの改修のために延期されました。次に1月8日に予定されましたが、悪天候のために中止されました。コロンビアの打ち上げ時の重量は、116,117 kgでした。

着陸とその後

コロンビアは1990年1月20日午前1時35分37秒(PST)に、カリフォルニア州のエドワーズ空軍基地第22滑走路に安全に着陸しました。スペースシャトル計画で3度目となる夜間着陸でした。帰還時の重量は、103,571 kgでした。ロールアウト距離は3,271 m、ロールアウト時間は62秒間でした。オービタは、1990年1月26日にケネディ宇宙センターに戻りました。

LDEFの回収はIMAXカメラで撮影され、1994年のIMAX映画「Destiny in Space」で公開されました。このカメラで観測された地球も、1991年の映画「Blue Planet」で使用されました。

STS-32ミッションは、通信衛星の展開とLDEFの回収という重要な目的を達成し、その後のスペースシャトル計画に貴重なデータを提供しました。

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