シャトル・リモート・マニピュレータ・システム

シャトル・リモート・マニピュレータ・システム（SRMS）とは

シャトル・リモート・マニピュレータ・システム（SRMS）は、スペースシャトルに搭載されたロボットアームで、カナダの企業によって開発・製造されました。その開発元から「カナダアーム」という愛称でも知られています。このアームは、スペースシャトルの貨物室から様々な貨物を動かし、所定の位置に配置する役割を担っています。また、宇宙空間に浮遊する貨物を掴んで貨物室内に固定することも可能です。SRMSは、スペースシャトルの多用途性を支える上で欠かせない重要な装備の一つです。

初使用と改良

SRMSは、1981年11月13日に打ち上げられたスペースシャトル2回目のミッションSTS-2で初めて使用されました。2003年のコロンビア号事故後には、SRMSにセンサー付き検査用延長ブーム（OBSS）が追加されました。OBSSは、シャトルの外装を調査し、熱防護システムの損傷をチェックするための装置を搭載しています。現在では、ほぼ全てのミッションでSRMSがこの役割を担っています。

仕様

SRMSのブームは全長約15メートル、直径約38センチで、6つの自由度を持っています。重量は410キログラム、総重量は450キログラムです。6つの関節を持ち、人間の腕とほぼ同じような動きが可能です。肩は左右と上下、肘は上下、手首は上下、左右、回転が可能です。先端部にあるエンドエフェクタは物を掴むための機構で、上腕と下腕と呼ばれる2つの軽量ブームが、肩と肘、肘と手首の関節で繋がれています。SRMSは、オービタの貨物室にあるアーム保持機構（MPM）に取り付けられており、電力とデータの接続もMPMを通じて行われます。

性能

宇宙空間において、SRMSは29トン以上の質量を持つ物体を移動させることが可能です。しかし、地球上ではアーム自体の重量を支えることさえできません。高精度な操作が求められるため、動作速度は非常に遅く、まるで動いていないかのように見えることもあります。SRMSは、人工衛星の回収、修理、放出、宇宙飛行士の作業台や足場としての利用、搭載されたテレビカメラによる機体や貨物の表面調査など、多岐にわたる作業を支援します。

システム構成

SRMSの基本的な構成は、ロボットアーム本体、後部飛行デッキにあるディスプレイと制御パネル、回転・並進用のハンドコントローラ、オービタのコンピュータと接続されたインターフェースで構成されています。オペレーターは、コントローラの横にある宇宙視覚システム（ASVS）スクリーンを通して、作業状況を確認できます。
通常、1人の宇宙飛行士が後部飛行デッキの制御端末からSRMSを操作し、別の宇宙飛行士がテレビカメラの操作をサポートします。これにより、後部飛行デッキの窓越しや、有線テレビモニターを通して、SRMSの操作状況を確認できます。

開発

SRMSの設計、開発、試験、製造は、カナダのSpar Aerospace社が行いました。主要な制御アルゴリズムは、トロントのDynacon社が担当し、電子インターフェース、サーボアンプ、電力調整器はモントリオールのCAE Electronics社が供給しました。また、エンドエフェクタはトロントのDilworth, Secord, Meagher and Associates社が担当しました。SRMSをオービタの貨物室に取り付けるシステムの設計、開発、試験、製造は、ロックウェル・インターナショナル社の宇宙輸送システム部門が行いました。

使用状況

SRMSは、1981年のSTS-2ミッションでの初使用以来、50回以上のミッションで使用されています。チャレンジャーでは1983年のSTS-7が初使用となり、ディスカバリーでは1985年のSTS-51-Cで使用されました。1986年のチャレンジャー号爆発事故により、チャレンジャーに搭載されていたSRMSは失われました。アトランティスではSTS-27、エンデバーではSTS-49（エンデバーの初飛行）で使用されました。

国際宇宙ステーションにカナダアーム2が設置されてからは、ステーションの組み立て部材がSRMSからカナダアーム2へと受け渡されるようになり、この連携は「カナダ人の握手」という愛称で呼ばれています。また、コロンビア号事故以降、打ち上げ時の耐熱シールドの損傷をOBSSで確認するために、SRMSはシャトルの飛行に不可欠なものとなっています。

関連項目

カナダアーム2
欧州ロボットアーム (ERA) -- ISS に取り付け予定のロボットアーム

外部リンク

http://science.ksc.nasa.gov/shuttle/technology/sts-newsref/sts-caws.html#sts-deploy
http://www.space.gc.ca/asc/eng/exploration/canadarm/default.asp
* CBC Digital Archives - Canadarm - A Technology Star

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