STS-61-A

STS-61-A：スペースラブD-1ミッション

STS-61-Aは、アメリカ航空宇宙局（NASA）のスペースシャトル計画における22回目の飛行であり、同時に西ドイツが資金と運用を支援したスペースラブ・ミッションでした。そのため、D-1（Deutschland-1）という独自の番号も付与されています。1986年に発生したチャレンジャー号の爆発事故（STS-51-L）以前に成功した、最後のミッションとなりました。

ミッション概要

STS-61-Aの最大の特徴は、8人という最多の乗組員数で宇宙へ飛び立ったことです。この記録は現在も破られていません。ミッションの主な目的は、スペースラブを利用した76もの科学実験の実施であり、そのほとんどが微小重力環境下での研究に関連していました。ペイロードの運用は、NASAの管制センターではなく、ドイツ航空宇宙センター（DLR）のオーバーパッフェンホーフェン施設から行われた点も特筆されます。

打ち上げは1985年10月30日、ケネディ宇宙センター第39発射施設Aから行われました。このミッションは、資金と運用の大部分を他国が担当した初のスペースシャトルミッションであり、8人の乗組員が参加した唯一のミッションでもありました。

乗組員

船長：ヘンリー・ハーツフィールド
操縦手：スティーブン・ネーゲル
ミッションスペシャリスト1：ボニー・J・ダンバー
ミッションスペシャリスト2：ジェームズ・ブフリ
ミッションスペシャリスト3：ギオン・ブルーフォード
ペイロードスペシャリスト1：ラインハルト・フラー（DLR）
ペイロードスペシャリスト2：エルンスト・メッサーシュミット（DLR）
ペイロードスペシャリスト3：ウッボ・オッケルス（ESA）

スペースラブでの実験

スペースラブでは、流体物理学、材料科学、生物学、医学など、多岐にわたる分野の実験が行われました。

流体物理学実験：毛細管現象、マランゴニ効果、拡散、臨界点などの研究
材料科学実験：固化実験、単結晶成長実験、混合物実験
生物学実験：細胞機能、発生過程、植物の重力感知能力の研究
医学実験：ヒトの重力知覚、宇宙への適応過程の研究

特に注目を集めたのは、Vestibular Sledと呼ばれる実験装置です。これは、被験者を乗せたシートを正確に制御された加速度で前後に動かすことで、ヒトの前庭機能や微小重力下での適応に関するデータを収集するものでした。

ドイツの管制

NASAはスペースシャトルの運用と安全管理全般を担当し、西ドイツは7日間のミッションにおける科学研究に責任を負いました。そのため、ドイツの管制官が地上から軌道上の乗組員と連携し、24時間体制で実験をサポートしました。地上と軌道間の通信は、ミッション期間中、常に最適化されていました。

GLOMR衛星の放出と着陸

Global Low Orbiting Message Relay Satellite (GLOMR) の放出も成功し、ペイロードベイに搭載された5つの材料実験機器からも有益なデータが得られました。

チャレンジャーは1985年11月6日、エドワーズ空軍基地第17滑走路に帰還し、7日間と45分間のミッションを終えました。

STS-61-Aは、スペースシャトル計画における国際協力の成功例として、また、微小重力環境下での科学研究の推進に大きく貢献したミッションとして、その名を歴史に刻んでいます。

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