SUSE Linux Enterprise

SUSE Linux Enterprise (SLE) について

SUSE Linux Enterprise (SLE) は、SUSEによって開発された、エンタープライズ向けのLinuxディストリビューションです。主にサーバー、メインフレーム、ワークステーションでの利用を想定して設計されていますが、テスト環境としてデスクトップコンピュータにもインストールできます。

SLEのメジャーバージョンは3～4年ごとにリリースされ、マイナーバージョン（サービスパック）は約18ヶ月ごとに提供されます。SUSE Linux Enterprise Serverのような製品は、openSUSEコミュニティ版よりも厳格なテストを経ており、安定性と信頼性が特に重視されています。

特徴

SLEは、IBMのワトソンやシリコングラフィックス (SGI) のHPC分野など、ミッションクリティカルな環境で豊富な実績を持っています。以前は非英語圏でのシェアが高かったですが、ノベルによる買収後は、英語圏でも導入事例が増加しています。ロンドン証券取引所、オフィス・デポ、三菱UFJ銀行などがSLEを採用しています。また、2014年7月までSAPが唯一認定し、チューニングしたLinuxディストリビューションでもありました。

オープンソースでありながら、顧客ニーズを重視し、マイクロソフトとの相互運用提携も行っています。初期のHyper-V 仮想化環境で唯一動作が認定されたLinuxディストリビューションであり、Hyper-V統合サービスが標準で組み込まれています。

堅牢性と高信頼性に加えて、YaSTツールによるCUIおよびGUIでのインストールと設定、管理自動化ツールにより、コマンドライン操作に不慣れな管理者でも容易にセットアップが可能です。YaSTには、パッケージマネージャーに登録されていないアプリケーションをopenSUSE/SLE用のオープンソースソフトウェアとして検索し、ブラウザからダウンロード、YaSTでインストールできる「1クリックインストール」機能も備わっています。

SUSE Linux Enterprise Desktop (SLED) とは異なり、LibreOfficeなどのオフィスアプリケーション、マルチメディアアプリケーション、GIMPのような画像処理ソフトウェアは含まれていません。また、xglのような3Dデスクトップ環境も省かれています。

YaST

YaST (Yet another Setup Tool) は、CUI版とGUI版の2種類が利用できる、SUSE Linuxシリーズ共通のツールです。HTTPサービスやSambaなど、主要なサーバー向けサービスは、メニュー形式のYaSTを通じてインストールから設定、サービスの起動・停止まで一括管理できます。パーティション設定、ネットワーク設定、パッケージ管理などの管理作業も、コマンドラインを意識せずに行えます。

CUI版はTABキーやカーソルキー、スペースキーで、GUI版はマウスクリックで操作できます。

1クリックインストール

SLEでは、公式リポジトリ以外のパッケージはサポート対象外ですが、openSUSEとの共通性が高いため、openSUSEのリポジトリから各種オープンソースプログラムを自己責任で利用できます。openSUSEのソフトウェア配信サイトから、インストールしたいソフトウェアをブラウザ上でクリックするだけで、YaST2のGUIインストーラでインストールが可能です。

SUSE Studio

SUSE Studioは、openSUSE/SLES向けに提供されているオンラインアプライアンス作成ツールです。

VMDP

VMDP (SUSE Linux Enterprise Virtual Machine Driver Pack) は、SLESをハイパーバイザーとした際に、Windows仮想環境のディスクIOとネットワーク性能を向上させるための準仮想化ドライバです。ハイパーバイザーからのシャットダウンやポーズなどの動作も実現します。

Xenの準仮想化では、ホストOSとゲストOSの両カーネルにパッチが必要ですが、VMDPはWindowsのデバイスドライバとして動作し、デバイスを抽象化・準仮想化します。これにより、VMDPを搭載したSUSE Linux Xen上のWindowsは、仮想環境でベアメタルに近いパフォーマンスを発揮できます。

SUSE Linux Enterprise 11 SP2以降ではKVMも公式サポートされており、VMDP 2.0以降ではKVM環境でも最適に動作します。これにより、WindowsゲストOSをXenとKVMの間で簡単に移行できます。

サポートするオペレーティングシステム

Windows Server 2012 R2
Windows Server 2012
Windows Server 2008 SP2
Windows Server 2008 R2
Windows Server 2003 SP2
Windows 8.1
Windows 8
Windows 7 SP1
Windows Vista SP2
Windows XP SP3

歴史

SLEは、Joachim Schröder氏のサポートの下、Josué Mejía氏とDavid Áreas氏が率いるチームによって、SUSE Linuxをベースに開発されました。最初にリリースされたのは2000年10月31日で、IBM S/390用のバージョンでした。その後、2000年12月には最初の企業クライアントが導入し、2001年8月にはx86版がリリースされました。

SLES 9は2004年8月にリリースされ、IBM、HP、サン・マイクロシステムズなどの主要ハードウェアベンダーにサポートされました。SLES 10は2006年7月にリリースされ、同じく主要ハードウェアベンダーにサポートされました。

SUSE Linux Enterprise 11は2009年3月24日にリリースされ、Linuxカーネル 2.6.27、OCFS2、OpenAISクラスタコミュニケーションプロトコル、Mono 2.0などが含まれました。

IBMのワトソンは、SLESを使用したIBM POWER7システムで稼働していました。

SUSE Linux Enterprise 12は2014年10月27日にリリースされ、Docker、シボレス、ネットワークチーミングなどの機能が追加されました。

サポート終了までのスケジュール

各バージョンのサポート終了スケジュールは、SUSEの公式サイトで確認できます。

バージョン履歴

SuSE Linux Enterprise Server
S/390用: 2000年10月31日
SPARC用: 2001年4月
IA-32用: 2001年4月
SUSE Linux Enterprise Server 7: 2001年10月13日
SUSE Linux Enterprise Server 8: 2002年10月
SUSE Linux Enterprise Server 9: 2004年8月3日
SUSE Linux Enterprise Server 10: 2006年6月17日
SUSE Linux Enterprise Server 11: 2009年3月24日
SUSE Linux Enterprise 12: 2014年10月27日
SUSE Linux Enterprise 15: 2018年7月19日

ハイパーバイザカーネルのサポート

SLES 10: Xen 3.2
SLE 11 SP1: Xen 4.0, KVM (QEMU 0.12)
SLE 11 SP2: Xen 4.1, KVM (QEMU 0.15)

バリエーション

SLEには、以下のバリエーション・ソリューションがあります。

SUSE Linux Enterprise Server for System z／LinuxONE
SUSE Linux Enterprise High Availability Extension
SUSE Linux Enterprise High Performance Computing
SUSE Linux Enterprise Point of Service
SUSE Linux Enterprise Real Time Extension
SUSE Linux Enterprise Server for SAP Applications
SUSE Linux Enterprise Server for Raspberry Pi
SUSE Linux Enterprise Server for ARM
SUSE Linux Enterprise Workstation Extension
Geo Clustering for SUSE Linux Enterprise High Availability Extension

派生版

Open Enterprise Server

参考文献

(書籍情報)

外部リンク

 SUSE Linux Enterprise Serverの公式ページ
SUSE Linux Enterprise Server Cool Solutions
パッケージ追加ページ

SUSE Linux Enterprise