S/2003 J 24

S/2003 J 24とは

S/2003 J 24は、巨大ガス惑星である木星の周囲を巡る数多くの衛星のうちの一つです。この衛星は、その軌道の性質から不規則衛星に分類され、特に木星の自転とは逆向きに公転する逆行軌道を描いていることが特徴です。また、他のいくつかの衛星と共にカルメ群と呼ばれるグループに属する典型的な天体と考えられています。

S/2003 J 24が持つ最も特筆すべき点は、太陽系内の惑星を公転する衛星として、史上初めてアマチュア天文家によって最初の発見報告がなされた天体であるという歴史的な事実です。

発見の経緯

この衛星の存在は、カナダ・フランス・ハワイ望遠鏡 (CFHT) を用いて2003年の2月から3月にかけて撮影された画像データの中に潜んでいました。当時、天文学者のスコット・S・シェパード氏らが率いる観測チームは、これらの画像からすでに23個もの新しい木星衛星を発見しています。しかし、アマチュア天文家のKai Ly氏は、まだ未知の衛星がこのデータに含まれているのではないかと考え、2021年6月初旬から独自に詳細な分析を開始しました。

Ly氏は、2003年2月24日の異なる時刻に撮影された複数の画像を丹念に調べた結果、天球上を1時間あたり13秒角から21秒角という比較的速い速度で移動していると思われる天体を3つ見つけ出しました。これらの候補天体のうちの一つが、同年2月25日から27日に撮影された他の画像にも写り込んでいることを確認。さらに、同時期にあたる2月5日から6日にかけて、日本のすばる望遠鏡で撮影された画像にもこの天体が捉えられていることを突き止めました。これにより、この天体が一時的にEJc0061という名称で識別され、木星の重力によって捉えられた衛星である可能性が高いと判断されました。

確認と正式名称の付与

Kai Ly氏による発見報告の後、過去の観測データとの照合が進められました。その結果、2018年までにチリにあるセロ・トロロ汎米天文台やラスカンパナス天文台などで撮影された画像にも、予測される位置に近い場所に同じ天体が写っていることが確認されました。

これらの観測記録が統合され、天体の存在と軌道が十分に確認された後、2021年11月15日に小惑星センター (MPC) が発行する小惑星電子回報 (Minor Planet Electronic Circular、MPEC) にて正式に公表されました。この公表をもって、この天体には仮符号であるS/2003 J 24が正式に割り当てられることとなりました。

軌道の性質

S/2003 J 24は、木星の中心からおよそ2300万キロメートルという比較的遠い距離の軌道を周回しています。その公転周期は約2年弱です。軌道の傾斜角は162度と大きく傾いており、これは木星の自転方向とは逆向きに進む逆行軌道であることを示しています。このような遠距離で逆行軌道を持つことは、不規則衛星の典型的な特徴であり、S/2003 J 24も例外ではありません。既知の不規則衛星の多くがそうであるように、S/2003 J 24もまた、かつて木星のそばを通過した小惑星などが、その強い重力によって捕獲された結果形成されたと考えられています。カルメ群に属する他の衛星たちと同様の起源を持つ可能性が高いと推測されています。

S/2003 J 24の発見は、アマチュア天文家によるデータ分析の重要性を示す事例として、天文学史に新たな一ページを加えました。

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