Sylera

Sylera（シレラ）とは

Syleraは、Geckoレンダリングエンジンを利用して開発された、個人制作のウェブブラウザです。開発者はIZMI氏で、その名称はアイヌ語の「シ・レラ」（凄い風）に由来します。

概要

Syleraは、その軽快さと高度なカスタマイズ性が特徴です。キーボード操作を重視し、ユーザーがインターフェースの細部に至るまで自由に設定できます。しかし、この高いカスタマイズ性は、設定作業自体が複雑になるという側面も持ち合わせています。

元々、Mozilla Firefoxなどで採用されているXULは、複数のOSで同じ動作をするように設計されているため、動作が重くなるという課題がありました。Syleraは、この問題を解決するために、Gecko Embedをブラウザエンジンとして利用し、その他のクライアント部分はWindowsネイティブコードで独自に作成しています。これにより、軽快なインターフェースでGeckoエンジンを利用することが可能になっています。SeaMonkeyなどのGeckoベースブラウザに依存するバージョンと、Sylera単体で動作するバージョンが存在しますが、Mozilla Firefoxには対応していません。

Syleraは、軽快さに加えて多機能性も重視しており、UserAgentの切り替えやサイトごとのセキュリティ設定など、頻繁に利用される機能が標準で実装されています。また、ツールバーアイコンやメニュー、ショートカットキーなども自由に変更でき、ユーザーは好みに合わせて任意のアクションを割り当てることも可能です。ただし、一部機能はGUIからではなく、テキストエディタなどを通じて設定する必要があるため、ある程度の知識が求められます。

2007年以降、Syleraの更新は停止しており、GRE同梱版はSeaMonkey 1.1.7までのアップデートにしか対応していません。また、2009年以降は公式サイトにアクセスできない状況が続いており、開発再開の見込みは薄いと考えられています。

特徴

タブブラウズ（グループタブ）機能

一つのウィンドウ内で、複数のウェブページをタブで切り替えて表示する機能です。Syleraでは、ビュータブとレイヤータブという2種類のタブ形式を採用しています。ビュータブは個々のWebページを表示し、レイヤータブはそれらをグループ化する役割を果たします。

ブックマーク切り替え

Sylera独自の形式、Gecko独自の形式、IEのお気に入り共有の3種類のブックマーク形式をサポートしています。さらに、RSSなどのWebフィードにも対応しています。

セキュリティ

Geckoエンジンを使用しているため、Internet Explorerに起因するセキュリティホールの影響を受けません。また、タブごとやブックマークごとに、スクリプトやプラグインの実行許可・不許可などの設定を行うことができます。SSLなどのサポートも実装されており、SSLを使用するサイトではアドレス表示欄の色が変わる機能も備えています。

ドメイン別セキュリティ設定

ドメインごとにスクリプトやプラグインの実行許可・不許可を切り替える設定が可能です。前方一致、後方一致、完全一致に加え、指定文字列を一部に含むパターンを判定する機能も備えています。

メニュー設定・ツールバー設定

UIから設定可能な部分もありますが、メニュー項目を直接編集することで、詳細なカスタマイズが可能です。

マウスジェスチャ

マウスの右ボタンを押しながらドラッグすることで、戻る・進むなどの任意のアクションを割り当てることができます。

カスタムボタン

ツールバーに任意の文字や画像を表示させ、それに任意のアクションを割り当てることができます。割り当て可能なアクションは拡張機能によって追加可能で、画像も自由に設定できます。

拡張機能の利用

Sylera専用拡張：JavaScriptで記述された拡張機能を、メニューやマウスジェスチャに割り当てることで、Syleraの機能を拡張できます。JavaScriptからGeckoの機能を呼び出すことに加え、GUIで設定できない機能も利用可能です。
XUL拡張：SeaMonkeyで利用可能な拡張機能は、Syleraでも利用できます。Sylera用の拡張機能を使用すれば、オプション画面などもメニューから直接操作できます。ただし、ブラウザの描画部分に関連する拡張以外は効果がありません。
IEコンポーネントの利用：IEでしか表示できないWebページに対応するため、IEのブラウザエンジンによる表示も可能です。ただし、SyleraはIEコンポーネントブラウザとして利用することを主眼としていないため、IEのブラウザエンジンから利用できる機能は一部に限られます。

常駐・高速起動

設定により、タスクトレイに常駐させることができ、ウィンドウを閉じてもアプリケーションを終了させずに状態を保持できます。また、起動時にタスクトレイへ常駐させることで、アプリケーションの起動を高速化する機能も備えています。

主要なリリース

以下に主なリリース履歴を記載します。細かいバグ修正やセキュリティフィックスなどのバージョンアップも頻繁に行われています。セキュリティフィックスは、Mozilla (SeaMonkey) のセキュリティアップデートと並行して行われています。

2001年9月21日 - Version 0.0.0 リリース
2002年8月4日 - Version 1.0.0 リリース
2003年11月29日 - Version 2.0.0 リリース
2004年3月15日 - Version 2.0.12よりGecko同梱版の提供開始
2004年6月17日 - Version 2.1.0 にてIEコンポーネントが利用可能に
2004年9月21日 - Version 2.1.14にて「お気に入り」「Bookmark」「RSSリーダー」が利用可能に
2005年9月15日 - Version 2.1.37にてアイコンを変更（月から譜面へ）
2006年6月2日 - Version 3.0.0 リリース（しおり、スキンの仕様変更、単体版Geckoのバージョンが1.7から1.8へ移行）
2006年6月14日 - Version 3.0.5 リリース（SeaMonkeyに対応）
2006年9月6日 - Version 3.0.12 リリース（SeaMonkey 1.1系に対応、Mozilla 1.7系が非対応に）
2007年1月19日 - Version 3.0.15 リリース（Webサイト別セキュリティ）
2007年5月19日 - Version 3.0.17 リリース（単体版Geckoを1.8.1系列に移行）

脚注

関連項目

タブブラウザ
Gecko'>Gecko
SeaMonkey'>SeaMonkey
Mozilla'>Mozilla
Netscapeシリーズ
Bagel)

外部リンク

配布サイト - ウェイバックマシン（2009年6月9日アーカイブ分）
公式Wiki - ウェイバックマシン（2009年3月1日アーカイブ分）
Vectorの配布ページ

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