Netscapeシリーズ

Netscapeシリーズの概要

Netscapeシリーズは、ジム・クラークとマーク・アンドリーセンらが設立したネットスケープコミュニケーションズによって開発されたウェブブラウザシリーズです。その中心となるNetscape Navigatorは、1990年代のインターネット黎明期において圧倒的なシェアを誇り、「ネスケ」や「NN」といった愛称で親しまれました。

Netscape Navigatorは、当初ウェブブラウザ単体としてリリースされましたが、バージョン4以降はメールクライアントやウェブページ作成ソフトなどを統合したNetscape Communicatorとしても提供されるようになりました。その後、Netscape CommunicatorはNetscapeに名称変更され、旧版のNetscape Navigatorも名称をNavigatorに変更されました。また、バージョン8ではNetscape Browserに名称変更されましたが、バージョン9では再びNetscape Navigatorに戻るなど、名称の変更が繰り返されました。

Netscape Navigatorは、セキュリティホールへの対応として、Internet Explorerがパッチ配布で対応していたのに対し、バージョンアップで対応していました。

Netscape Navigatorの変遷

バージョン1から4

Netscape Navigatorは、バージョン1.0から4.8まで存在しました。最初のベータ版は1994年にリリースされ、当初はMosaic Netscapeという名称でしたが、開発元である米国立スーパーコンピュータ応用研究所からの法的な異議申し立てにより、Netscape Navigatorに改名されました。同時に会社名もモザイクコミュニケーションズからネットスケープコミュニケーションズに変更されました。

Netscape Navigatorは、高機能で使いやすかったため、ベータ版の段階で市場を席巻し、短期間でトップシェアを獲得しました。バージョン2.0では、メールクライアントのNetscape Mailが追加され、ウェブブラウザからインターネットスイートへと進化しました。また、この時期にはAOLがInternet ExplorerとともにNetscape Navigatorのバンドルを開始しています。

バージョン3.0では、Internet Explorer 3.0という初の強力な競争相手が登場しましたが、ネットスケープはこれを打ち破り、依然として最も使われるブラウザであり続けました。バージョン3.0では、WYSIWYGのHTMLエディタ機能を持つGoldバージョンも提供されました。Netscape Navigator 3は、プラグイン、テーブルの背景色、APPLET要素など、多くの新機能を導入し、ウェブブラウザ市場の巨人としての地位を確立しました。

バージョン4では、インターネットスイートの名称をNetscape Communicatorに改名し、ウェブブラウザ単体との名称の混乱を解消しました。しかし、Netscape Communicatorに同梱されているウェブブラウザの名称はNetscape Navigatorのままでした。

1997年6月には、Netscape Communicatorの最終バージョンがリリースされました。このバージョンでは、CSS1の一部サポートやダイナミックフォントのサポート、独自のHTML拡張などが導入されました。激化するInternet Explorer 4との競争や、ウェブブラウザの基幹部分が時代遅れになりつつあるという問題があったにもかかわらず、この新しいインターネットスイートは成功を収めました。Netscape Communicatorは、ウェブブラウザのNavigator、メールクライアント兼ニュースリーダーのMail and Newsgroups、アドレス帳、HTMLエディタのComposerで構成されていました。

1998年10月にはNetscape Communicator 4.5がリリースされました。このリリースでは、メールクライアント/ニュースリーダーのコンポーネントを中心に機能向上が行われましたが、ウェブブラウザの基幹部分はバージョン4.08とほぼ同じでした。その1か月後、ネットスケープコミュニケーションズはAOLに買収されました。スタンドアローン版のNetscape Navigatorは引き続き提供されましたが、Microsoft Windows向けのバージョン4.08以降はリリースされていません。UnixやLinuxなどの他のOS向けのスタンドアローン版は、バージョン4.8まで保守されました。

幻のバージョン5

1998年1月、ネットスケープコミュニケーションズは、今後のすべてのバージョンを無償で提供し、コミュニティによって開発と保守を行うと発表しました。これが後の[[Mozilla Application Suite]]です。そしてNetscape Communicator 5.0が発表されました。しかし、元になったソースコードが長年使われ複雑化していたため、NetscapeとCommunicatorのメジャーバージョンアップには大幅な遅れが生じました。その結果、HTML4、CSS、DOM、JavaScriptの高度な実装が進んだInternet Explorer 5.0がマーケットリーダーとなりました。

1998年11月、Netscape 5の開発は中止され、まったく新しいプログラムをゼロから作成することになりました。ソースコードのつながりが失われたことと、マーケティング的な意図から、次にリリースされるバージョンは6となりました。そのため、バージョン5は幻のバージョンとなりました。ちなみに、そのソースコードは「Mozilla Classic」と呼ばれ、現在でもmozilla.orgからダウンロードできます。

バージョン6と7

バージョン6と7については、詳細な情報が提供されていません。

バージョン8

2005年から2007年にかけて、Netscape Browserという名称のウェブブラウザがリリースされました。AOLは、比較的成功していた[[Mozilla Firefox]]をNetscape Browserのベースに選びました。このリリースは、従来のインターネットスイートではなく、単一のウェブブラウザでした。また、Windowsのみを対象としており、HTMLレンダリングエンジンとしてGeckoとInternet Explorer用のTridentの両方を使えるように実装されていました。

AOLは、Netscapeチームを解雇し、Mercurial Communicationsに開発を外注しました。ネットスケープコミュニケーションズは数年前に買収されていたため、この解雇は驚きではありませんでした。

バージョン8.0から8.1.2までに存在した一般的なバグを修正したNetscape Browser 8.1.3は、2007年4月3日にリリースされました。

バージョン9

2007年1月23日、新しいスタンドアローン版ウェブブラウザのNetscape Navigator 9のリリースが発表されました。このバージョンでは、ニュースフィードのサポートやウェブページ上での議論・投稿・投票手段の強化、インターネットポータルPropellerとの統合が強化されました。また、Windows、Linux、Mac OS Xをサポートするマルチプラットフォームとなりました。このバージョンは[[Mozilla Firefox]] 2.0をベースにしており、FirefoxのアドオンやNetscapeが提供しているプラグインを完全にサポートしていました。

最初のベータ版は2007年6月5日にリリースされ、最終バージョンは2007年10月15日にリリースされました。

シリーズの終焉

2007年12月28日、Netscape全バージョンのサポートが2008年2月1日をもって終了することがNetscape公式ブログで発表されました。Netscape公式ブログでは、ユーザーにFirefoxへの移行を推奨していました。その後、NetscapeからFirefoxやFlockへの移行機能を追加するため、開発・サポートの終了が1か月延長されました。これを受け、Mozilla JapanではNetscapeからFirefoxやThunderbirdへの移行ガイドを公開しました。サポート終了後には、Netscape日本語版公式ページでも同様の移行ガイドが紹介されました。

Netscape Messenger 9

2007年11月15日には、「Netscape Messenger」という名称の電子メールクライアントの開発が発表され、最初の評価版である9.0α1が公開されました。Netscapeブランドのメールソフトは、2004年8月の7.2以来、3年ぶりの復活となりました。Messengerの名前は、1997年のCommunicator 4.0でメール機能の名称として採用されていたものであり、2002年の4.78以来、5年ぶりに復活しました。

Messenger 9は[[Mozilla Thunderbird]] 2.0.0.9をベースにしており、Navigator 9と同様にThunderbird 2.0.0.xの拡張機能をサポートし、Windows以外の環境もサポートしました。AOL Instant Messengerのアドレス帳との統合機能も実装されていましたが、AOLがNetscapeの開発終了を宣言したため、Messengerは正式版のリリースがなされることなく、その役目を終えることになりました。

バージョンの変遷

* 2007年11月15日 - Messengerに関する情報が開発元のブログで公開され、α1が公開されました。

もう一度検索