T級駆逐艦

T級駆逐艦：第二次世界大戦を駆け抜けたイギリス駆逐艦

T級駆逐艦は、イギリス海軍が第二次世界大戦中に建造した駆逐艦の艦級です。1940年度戦時予算に基づき、第6次戦時急造艦隊として8隻が建造され、1943年から1944年にかけて順次就役しました。これらの駆逐艦は、第二次世界大戦の激戦を戦い抜き、その後の時代には対潜フリゲートへと改装され、水中高速潜水艦が脅威となる時代の対潜戦を担いました。

開発の経緯

第二次世界大戦の勃発により、イギリス海軍は戦時緊急計画を発動し、駆逐艦の大量建造に着手しました。当初は、1940-1年度計画で建造が予定されていた中間的駆逐艦（J級に準じた設計）の建造を前倒しし、O級やP級が建造されました。その後、戦時の新たな要求や急造に適した設計を取り入れ、Q級やR級へと移行しました。

1941年3月14日に発注された第6次戦時急造艦隊は、その2ヶ月前に発注された第5次戦時急造艦隊（S級）と同様に、R級の準同型艦として計画されました。これが、T級駆逐艦です。これらの艦は、戦時下の厳しい状況の中で、イギリス海軍の戦力の中核を担いました。

設計の特徴

T級駆逐艦の設計は、S級とほぼ同様です。J級以来の単煙突・船首楼型という船型を踏襲しつつ、Q級で導入された燃料搭載量の増大や復原性の改善、艦尾のトランサム・スターン、そしてS級で導入されたトライバル級と同様の艦首形状も受け継ぎました。ただし、北極圏での作戦行動を考慮した防寒設備は省かれています。

機関は、S級と同様にQ級・R級の構成が採用されています。アドミラルティ式3胴型水管ボイラー（蒸気圧力300lbf/in2、温度332.2℃）と、パーソンズ式オール・ギヤード・タービンによる2軸推進、出力40,000馬力という構成です。

装備

装備面でも、おおむねS級の構成が踏襲されました。艦砲は、45口径12cm砲（QF 4.7インチ砲Mk.IX）を最大仰角55度のMk.XXII砲架と組み合わせて4基搭載しました。射撃指揮装置は、対空用に285型レーダーを備えたMk.II(W)方位盤とFKC射撃盤、対水上用に基線長3.66メートルの測距儀を備えたDCT方位盤とAFCC射撃盤が用いられました。

近距離対空兵器としては、当初はヘイズメイヤー式の56口径40mm連装機銃1基と70口径20mm連装機銃4基が基本とされました。しかし、一部の艦では異なる構成で竣工し、後に全艦が56口径40mm連装機銃を搭載するように改修されました。また、1944年3月には、地中海艦隊所属艦に対して陸軍式の56口径40mm単装機銃が搭載されました。1945年に東洋艦隊に投入された艦では、特別攻撃隊対策として、20mm連装機銃を40mm単装機銃などに換装し、対空能力が強化されました。

同型艦とその後

T級駆逐艦は、第二次世界大戦後、全艦が高速対潜フリゲートに改造されました。しかし、大規模なタイプ15改造を受けたのは嚮導艦「トラウブリッジ」のみで、他の7隻は改造費の低いタイプ16改造にとどめられました。これらのフリゲートは、1960年代後半まで運用され、冷戦期の対潜戦の一翼を担いました。

T級駆逐艦は、戦時下の緊急要求に応えて設計・建造された艦級であり、その後の改装を経て、第二次世界大戦から冷戦期まで、イギリス海軍の歴史において重要な役割を果たしました。


参考文献

『世界の艦船』
Jane's Fighting Ships

関連項目

* ウィキメディア・コモンズには、T級駆逐艦に関するカテゴリがあります。

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