T30 75mm自走榴弾砲

T30 75mm自走榴弾砲

T30 75mm自走榴弾砲（T30 Howitzer Motor Carriage、T30 HMC）は、第二次世界大戦中にアメリカ軍が使用した自走砲です。元々は機甲科が戦車部隊や装甲偵察部隊向けの近接支援用車両として開発を要求したもので、M3軽戦車の派生型として計画されましたが、開発に時間を要したため、M3ハーフトラックをベースとした設計に変更されました。

開発の経緯

1941年、アメリカ機甲科は、戦車部隊や装甲偵察部隊に随伴し、直接的な火力支援を行う自走砲として「アサルトガン」の概念を提唱しました。当初はM3軽戦車をベースとした開発が進められましたが、設計に時間を要することが判明したため、より迅速な実現を目指し、M3ハーフトラックをベースとした代替案が採用されました。

試作車両は1941年10月に完成し、M1A1 75mm榴弾砲をハーフトラックの戦闘室前部に搭載するという、比較的単純な構造でした。量産は1942年1月に承認され、翌月にはアメリカ陸軍への配備が開始されました。しかし、T30はあくまで暫定的な装備とみなされたため、制式化されることはなく、「T」記号（試作）のまま運用されました。

構造

T30は、M3ハーフトラックの車体をベースに、戦闘室前部に75mm榴弾砲を搭載した構造をしています。榴弾砲は、シャーシに直結された箱型の台座に上部砲架をそのまま搭載するという、シンプルな方法で固定されました。また、操縦室前面のフロントガラスは廃止され、開閉式の前面装甲板が下開き式に変更されています。これは、砲が俯角を取った際に干渉しないように考慮された設計です。

当初、砲は装甲板で囲まれていませんでしたが、M3 75mm対戦車自走砲の実戦経験から、防御力向上のために防盾が追加されました。防盾は、間接射撃時の高仰角を考慮した背の高い形状で、約9.5mmの装甲厚を持ち、近距離からの小銃弾を防ぐことができました。

戦歴

T30は、1942年11月の北アフリカ戦線で初めて実戦投入されました。しかし、対戦車戦闘においては、低初速の榴弾砲ではドイツ軍戦車に有効なダメージを与えることができず、アメリカ軍は榴弾砲の対戦車能力の限界を認識することとなりました。その後、T30は歩兵部隊への火力支援任務に用いられ、シチリアやイタリアへの侵攻作戦にも参加しました。

しかし、1943年3月には、歩兵大隊の再編成に伴い、歩兵師団での運用から外され、M5軽戦車をベースとしたM8 75mm自走榴弾砲に更新されました。アメリカ軍は少数のT30を自由フランス軍に貸与し、一部は第一次インドシナ戦争でも使用されました。

性能

T30の基本性能は、ベースとなったM3ハーフトラックとほぼ同様です。全長6.28m、全幅1.96m、全高2.51m、全重9.3t。エンジンはホワイト160AXガソリンエンジン（147馬力）を搭載し、最高速度は64km/h、航続距離は240kmでした。搭載する75mm M1榴弾砲は、俯角9度、仰角50度、水平旋回は左右22.5度が可能でした。75mm弾薬を60発搭載し、必要に応じてトレーラーを牽引して予備弾薬を携行しました。また、戦闘室後部にはM2 12.7mm機関銃を搭載することも可能でした。

まとめ

T30 75mm自走榴弾砲は、M3ハーフトラックをベースに開発された、アメリカ軍の初期の自走砲です。対戦車能力には限界がありましたが、歩兵部隊への火力支援において一定の役割を果たしました。その開発経緯や構造は、後のアメリカ軍自走砲の開発に影響を与えたと言えるでしょう。

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