TESS object of interest

TOI（TESS object of interest）

TOI（テス・オブジェクト・オブ・インタレスト）は、アメリカ航空宇宙局（NASA）の宇宙望遠鏡TESS（Transiting Exoplanet Survey Satellite）による観測データから、周囲に太陽系外惑星が存在する可能性が示唆された恒星のリスト、すなわち天体カタログです。
TESSは主に恒星の手前を惑星が横切る際に生じるわずかな明るさの変化（トランジット）を捉えることで惑星候補を探します。TOIに登録された恒星は、その後の詳細な性質を明らかにするための追跡観測（フォローアップ観測）の優先的な対象となります。

命名規則

TESSによって惑星候補のトランジット信号が検出されると、その主星である恒星には「TOI-NNNN」という固有の番号が割り当てられます。さらに、検出された個々の惑星候補には「TOI-NNNN.NN」という形式の名前が与えられます。ここで、NNNNは主星の番号、小数点以下のNNは惑星候補を示す二桁の番号です。同じ恒星に対して複数の惑星候補が見つかった場合、これらは発見順に.01, .02, .03…と番号が振られていきます。例えば、TOI-700という恒星の周りで3つの惑星候補が見つかった場合、それぞれTOI-700.01、TOI-700.02、TOI-700.03と命名されました。

先行するケプラー宇宙望遠鏡の惑星候補リストであるKepler object of interest（KOI）がKOI-1から始まるのに対し、TOIリストでは当初の1から100までの番号は意図的に欠番とされており、最初のTOI番号はTOI-101から始まっています。

候補の中から実際に惑星であることが確認されると、国際的な太陽系外惑星の命名規則に基づき、TOI-NNNN b, c, d...のように、主星名の後に発見順を示すアルファベット小文字を付した正式な名称が与えられます。例えば、TOI-700の3つの惑星候補は後に確認され、内側から順にTOI-700 b, TOI-700 c, TOI-700 dと名付けられました。

カタログの内容と現状

TOIカタログは2018年9月5日に初めて公表されて以来、TESSによる観測ミッションが継続されているため、現在も定期的に更新・追加されています。カタログには、恒星の位置（赤経・赤緯）、惑星候補の推定される公転周期、半径、平衡温度、そして主星までの距離やその物理量といった観測データや推定値が含まれています。

TOI惑星候補の総数は急速に増加しており、例えばTESSによる初期の2年間の観測で合計2241個が特定されたと発表されています。2020年末時点で約2400個だった候補数は、わずか1年後の2021年12月には5000個を超え、倍増以上のペースで増加しました。この中には、地球からの距離が比較的近く、より詳細な追跡観測に適した、これまであまり知られていなかった恒星の周りを回る小型の惑星候補も多く含まれています。

TOIリストには、TESS Follow-up Observing Program Working Group（TFOPWG）によって評価された、各惑星候補の現在の状況（確認済み、誤検出の可能性など）が記載されています。すべての候補の現況が確定しているわけではないため、リスト全体の総数と特定の現況に分類された候補の数を合計しても、必ずしも一致しない場合があります。2025年1月1日現在、TOIの総数は7358個に達し、番号はTOI-7175まで割り当てられています。このうち、惑星として確認されたものは471個となっています。

フォローアップ観測

TOIの追跡観測は、TESSが用いるトランジット法の再観測に加え、ドップラー分光法や補償光学を用いた直接撮像など、多様な観測手法を組み合わせ、世界各地の望遠鏡や宇宙望遠鏡を用いて実施されます。主要な観測施設としては、地上の次世代トランジットサーベイ（NGTS）、宇宙望遠鏡CHEOPS、チリにあるVLT望遠鏡の高精度分光器ESPRESSOなどが挙げられます。

観測成果の多様性

追跡観測によって、TESSのデータだけでは検出が難しかった新たな惑星が発見されることもあります。特に、ドップラー分光法は惑星の重力による恒星の揺らぎを捉えるため、TESSのトランジット法では原理的に見えない、恒星面を通過（トランジット）しない軌道を持つ惑星も発見できます。例えばTOI-130系では、TESSが発見したトランジット惑星TOI-130 b（候補名TOI-130.01）に加え、地上のESPRESSOによるドップラー分光観測によって、トランジットを起こさない惑星TOI-130 cが追加で発見されました。

また、追跡観測を進め、惑星候補の性質を詳しく調べる過程で、最初にTESSが見出した候補の数や推定される公転周期などが、実際に存在する惑星の数やその軌道と異なることが判明する場合があります。興味深い例としてTOI-178系があります。当初、TESSは3つの惑星候補（TOI-178.01, .02, .03）を示唆しましたが、詳細な追跡観測の結果、実際には6つの惑星が存在することが確認されました。内側からTOI-178 b, c, d, e, f, gと名付けられたこれらの惑星のうち、候補.01と.03はそれぞれTOI-178 dとeに対応しました。また、候補.02のトランジット信号は当初一つの惑星によるものと思われましたが、後の観測でTOI-178 fとgという二つの惑星によるものであることが明らかになりました。

反対に、複数の候補が実際には一つの惑星であった例がTOI-712系で見られます。この系では、TESSデータからTOI-712.01, .02, .03, .04という4つの惑星候補が検出されました。特に候補.02（周期約51日）と.03（周期約53日）は周期が非常に近く、軌道の安定性に疑問符がついていました。さらに候補.04（周期約679日）も存在しました。しかし、追跡観測の結果、候補.01と.02はそれぞれTOI-712 b（周期約2.5日）とTOI-712 c（周期約18.6日）として確認され、候補.03と.04は実際には同じ一つの惑星TOI-712 dによる信号であり、その公転周期は約85日であることが判明しました。このように、候補段階での推定と最終的な確定では大きな違いが生じることがあります。

さらに、TOIリストの中には、惑星候補と思われた天体が、詳細な観測によって質量がより大きい褐色矮星であったと判明するケースもあります。TOI-569やTOI-1406などがその例です。

関連項目

太陽系外惑星
TESS Input Catalog (TIC)
Kepler object of interest (KOI)

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