TOI-700

TOI-700は、地球からおよそ100光年離れたかじき座の方向に見える恒星です。この星の周りには、現在までに4つの太陽系外惑星が存在することが確認されており、特に生命居住可能な可能性のある領域（ハビタブルゾーン）に位置する惑星があることで注目されています。

恒星TOI-700の特徴

TOI-700自体は、私たちの太陽に比べて小さく、暗いタイプの星です。太陽の約4割の質量と半径を持つ典型的な赤色矮星であり、スペクトル分類はM型に属します。その明るさ（光度）は太陽のわずか2.3%しかありません。この星は少なくとも15億年以上前に誕生したと考えられています。これまでの11ヶ月間の観測では、太陽のような表面での爆発現象（フレア）などの活発な活動はほとんど確認されていません。興味深い点として、当初の観測では実際よりも高温であると誤って推定されていましたが、後の詳細な分析によって訂正されました。

「TOI」という名称は、アメリカ航空宇宙局（NASA）の太陽系外惑星探索衛星TESSによる観測で惑星の存在が期待される天体をリストアップするカタログ、「TESS Objects of Interest」に由来します。カタログに掲載された天体は、ドップラー分光法や直接観測など、他の手法による追加観測の対象となります。TOI-700は、TIC 150428135、2MASS J06282325-6534456といった別の名称でも知られ、また、欧州宇宙機関（ESA）のガイア計画による観測対象でもあったため、Gaia DR2 5284517766615492736という固有の識別子も与えられています。

惑星系の発見

2020年1月、TESS衛星が捉えたデータから、TOI-700の周囲を3つの惑星が公転していることが発表されました。これらの惑星は、恒星の手前を横切る際に星の光を一時的に遮る現象（トランジット）を観測することで発見されました。これらの惑星はすべて、自転周期と公転周期が同じになる「潮汐固定」の状態にある可能性が高いと推測されています。

TOI-700 b: 最も内側を回る惑星で、大きさは地球とほぼ同じくらいです。岩石でできた地球型惑星と考えられています。
TOI-700 c: 内側から2番目の惑星です。サイズは地球と海王星の中間に位置し、比較的大きな大気を持つガス惑星である可能性が高いと見られています。
* TOI-700 d: 一番外側を公転する惑星で、地球の約1.2倍のサイズを持つ岩石惑星と推定されています。特筆すべきは、この惑星がハビタブルゾーンと呼ばれる、液体の水が地表に存在しうる領域内を公転している点です。TESS衛星がこのハビタブルゾーン内で地球規模の惑星を発見したのは、これが初めての事例でした。

惑星bとcは、惑星系の初期段階で比較的速やかに形成された結果、大量のガスを大気としてまとったのかもしれません。一方で、惑星dはよりゆっくりと形成されたため、それほど多くのガスを取り込まなかったと考えられています。また、惑星cが他の2つの惑星と比べて際立って大きいサイズであることから、この惑星系では長い時間をかけて惑星の軌道が変化する「惑星移動」が発生した可能性も示唆されています。これらの発見は、ハワイのホノルルで開催されたアメリカ天文学会で公表されました。

4番目の惑星の確認

2021年11月には、TESSのデータを再分析した結果、新たに約27.8日周期で公転する別の惑星候補「TOI-700.04」の存在が指摘されました。この天体は、その後の詳しい観測によって2023年1月9日に惑星として正式に確認され、「TOI-700 e」と命名されました。惑星eは地球の約0.95倍の大きさを持つ地球型惑星で、軌道は惑星cとdの間に位置しています。この惑星eも、惑星dと同様にハビタブルゾーン内に存在することが判明しました。ただし、その位置は「楽観的なハビタブルゾーン」と呼ばれる、より広い定義に基づいています。

この4番目の惑星の確認により、TOI-700系にはハビタブルゾーン内に位置する惑星が少なくとも2つ存在する、極めて興味深い系であることが明らかになりました。このような複数のハビタブルゾーン内惑星を持つ惑星系は、現在のところ数えるほどしか知られていません。

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