TGV IRIS 320

TGV IRIS 320 (TGVイリス320)

TGVイリス320は、フランス国鉄（SNCF）が運用する高精度な電気軌道総合試験車です。この車両の名称「IRIS」は、フランス語で「目」を意味し、まさに鉄道のインフラ状態を見守る役割を担っています。

編成の背景と導入経緯

1988年に、SNCFは高速鉄道（LGV）区間での架線や軌道の検測のために、メリュジーヌという車両を導入しました。この車両は営業用TGV編成の一部として機能していましたが、高速化とともにより正確な保守作業が求められるようになりました。そのため、新たな高速試験車「MGV」（Mesure à grande Vitesse）の導入が必要とされ、2006年にはTGV Réseau第4530編成を改造したIRIS 320が採用されました。

IRIS 320は、年間約20万kmを検測することができ、SNCFのLGV区間だけでなく、在来線およびベルギー国内の高速新線の検測にも対応しています。特にLGV東ヨーロッパ線では、320km/hという驚異的なスピードでの検測走行も可能です。

高度な測定技術と運用

この車両には、20台のカメラと150個の各種センサーが装備されています。これにより、軌道や架線の状態、信号通信設備の正常性、さらにはトンネル通過時に列車にかかる圧力の状態を綿密に測定できます。測定結果は「正常」、「危険」、「緊急」の3つに分類され、異常が発見された箇所の情報は関係部署に迅速に送信される仕組みが整っています。また、GPSによる位置確認も可能で、運行の可視性が高まっています。

運行時には、運転士が2名、技術者が7名乗務し、厳格な管理の下で運行されております。このようにして、TGVイリス320はフランスの鉄道路線の保守管理における要として稼働しています。

車両の外装

車両の外装は、最初に登場した際のカラーリングから変更され、現在はTGV Lyriaに似たVIGIRAIL（ヴィジレイル）のカラーリングが採用されています。このカラーは、フランス国鉄のインフラ整備を担当する機関に由来しています。

車両の組成について

TGVイリス320の編成は、以下のように構成されています：

• - M: 動力車
• - R1: 測定車
• - R2、R3: 制御システム
• - R4、R5: バー、見学者用客室
• - R6、R7、R8: 休息用車両（10室、10人用サロン）

このように、多目的で利便性の高い構成となっており、検測業務を行う上で不可欠な要素を網羅しています。

関連情報

TGVイリス320に関する文献や情報は、三浦幹男と秋山芳弘著の『地球の歩き方 世界の高速列車』などで確認できます。さらに、公式サイトでは、IRIS 320に関する詳しい情報が掲載されています。

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