TI-89 シリーズ

TI-89/TI-89 Titanium: 高度な数式処理を可能にするグラフ電卓



TI-89およびTI-89 Titaniumは、テキサス・インスツルメンツ（TI）社が開発したグラフ描画機能付き電卓です。特に数式処理システム（CAS）の搭載により、高度な数式計算が可能であり、欧米の学生の間で広く利用されてきました。その高い機能性から、試験への持ち込みを禁止する学校も多く存在しました。

TI-89



1998年に発売されたTI-89は、160x100ピクセルの液晶ディスプレイとフラッシュメモリを搭載し、Advanced Mathematics Softwareを内蔵しています。2004年には後継機種であるTI-89 Titaniumに引き継がれましたが、デザイン面からTI-89を好むユーザーも存在します。

TI-89のマイクロプロセッサはMC68000で、10MHzまたは12MHzで駆動（バージョンによる）します。RAMは256KB（ユーザー利用可能領域は190KB）、フラッシュメモリは2MB（ユーザー利用可能領域は700KB）を備え、数式、変数、プログラムなどを保存できます。

機能



TI-89は、TI-92 Plusのキーボードと表示を小型化したもので、QWERTYキーボードを試験に持ち込めない状況を考慮し、電卓型の同等機能モデルとして開発されました。大学入試（ACT）では使用禁止ですが、SATなど一部の試験では使用可能です。

最大の特徴は、組み込み型の数式処理システム（CAS）です。これにより、以下のような機能が利用できます。

  • - 代数式の単純化: `(x^3-x^2-8x+12)/(x+3)` を入力すると `x^2-4x+4` と表示。
  • - 因数分解: `factor((x^3-x^2-8x+12)/(x+3))` と入力すると `(x-2)^2` と表示。
  • - 展開: `expand((x-2)^2)` と入力すると `x^2-4x+4` と表示。
  • - 通分: `comDenom(x/2+(y^2-6)/3-z^2/8)` は `(12x + 8y^2 - 3z^2 - 48) / 24` と表示。
  • - 部分分数分解: `propFrac((x^2-5)/(x-3))` は `4/(x-3) + x + 3` と表示。
  • - 三角関数: `sin(60°)` は `√3 / 2` と表示。
  • - 複雑な三角関数: `sin(arctan(x^2-6))` は `(x^2-6)√(1/(x^4-12x^2+37))` と表示。
  • - 三角関数の展開: `tExpand(sin(3x)cos(x))` は `4sin(x)(cos(x))^3 - sin(x)cos(x)` と展開。
  • - 逆変換: `tCollect` は `tExpand` の逆操作。
  • - 方程式の解: `solve(3x+3=12,x)` は `x=3` と解を表示。
  • - 連立方程式: `solve(x+y=4 and x^2-6x+3=y,x)` で解を表示。複素数解は`cSolve`で対応。
  • - 行列式入力: `simult`で最大16変数の連立方程式に対応。
  • - 微分: 各種初等関数の記号的な微分が可能。
  • - 数値微分: `nDeriv`関数で近似解を計算。
  • - 積分: 限定的ながら積分可能。
  • - 極限: 関数の極限を計算可能。
  • - グラフ表示: 二次元グラフや各種グラフ表示が可能。

プログラミング



TI-89は、TI-BASICというBASIC言語でプログラムできます。また、PC/AT互換機|PC_AT互換機上で動作するMC68000用のアセンブリ言語やC言語も存在します。発売以来、テトリスやマインスイーパーといったゲームからZX Spectrumのエミュレータ、チェスのプログラムまで、様々なプログラムが開発されています。

TI-89 Titanium



2004年夏にリリースされたTI-89 Titaniumは、TI-89の後継機種です。2006年にはRAMの増量と高速化（16MHz）が施されました。ミニUSBポートを搭載し、PCや他のTI-89 Titaniumとの接続が可能になり、表計算ソフトCellSheetが内蔵されています。また、数式処理システムも若干強化されています。

TI-89向けのプログラムの中には、メモリマップの違いからTI-89 Titaniumでは動作しないものもありますが、これらの問題を解決するユーティリティソフトウェアも存在します。

その他



株式会社ナオコが日本国内での取り扱いを行っています。

関連項目




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