TOI-1807 b

TOI-1807 b

TOI-1807 bは、地球から約130光年離れたりょうけん座の方向に位置する、太陽系外惑星の一つです。この惑星は、K型の若い恒星であるTOI-1807の周囲を非常に近い軌道で公転しています。

概要

この天体は、NASAの太陽系外惑星探査衛星TESSによる観測データから初めてその存在の可能性が示唆されました。TESSは恒星の手前を惑星が通過する際のわずかな明るさの変化（トランジット）を捉えることで惑星を探査しており、2020年の観測でTOI-1807に惑星候補があるとして「TOI 1807.01」という識別名が与えられました。その後の詳細な観測と分析を経て、TOI-1807 bは2021年に正式に太陽系外惑星として確認されました。この確認は、同じく若い恒星系であるTOI-2076を公転する3つの惑星と同時に報告されています。

TOI-1807 bの最も顕著な特徴は、その極めて短い公転周期です。主星のTOI-1807をわずか13時間という驚異的な速さで一周しています。これは、惑星が主星のごく近傍を軌道運動していることを示しており、「超短周期惑星（Ultra-Short-Period Planet, USP）」として分類されます。

主星であるTOI-1807の年齢は約1億8000万年と推定されており、これは太陽（約46億年）と比べると非常に若い恒星です。TOI-1807 bもまた若い惑星であり、現在、その大気が活発に進化している段階にあると考えられています。主星に近い軌道にあるため、TOI-1807 bは主星から非常に強いエネルギーを受けています。特に紫外線は、地球が太陽から受ける量の約22,000倍も多く降り注いでいると計算されており、これは惑星の大気や表面環境に大きな影響を与えていると予想されます。

TOI-1807 bは地球型惑星、すなわち岩石質の惑星であると考えられています。しかし、主星からの強烈な放射により、その表面は溶岩の海などで覆われた非常に高温な状態にあると推測されています。

超短周期惑星は、その存在自体が天文学者たちの関心を引いています。一般的に、恒星のごく近くでは惑星が形成されにくい環境であると考えられているため、TOI-1807 bのような惑星がどのようにして現在の軌道に到達したのかは大きな謎です。一つの有力な説として、惑星はまず主星から遠く離れた比較的低温な場所で形成され、その後、何らかのメカニズム（例えば、他の天体との重力相互作用など）によって現在の内側の軌道へと移動してきたという「軌道移動説」が提唱されています。

興味深いことに、TOI-1807の主星と、同時に惑星が報告されたTOI-2076の主星は、2017年に欧州宇宙機関のガイア衛星が行った精密な位置測定によって、宇宙空間をほぼ同じ方向、同じ速度で移動していることが明らかになっています。これは、これらの恒星が過去に同じ巨大なガスの雲の中で誕生し、その後、互いに離れていった可能性を示唆しています。

TOI-1807 bは、その極端な環境と若い年齢、そして超短周期軌道という特徴から、惑星の形成、進化、大気散逸メカニズムなどを研究する上で重要なターゲットとなっています。特に、若い超短周期惑星における大気の進化過程を理解する上で、貴重な情報を提供すると期待されています。

関連項目

太陽系外惑星
2021年に発見された太陽系外惑星の一覧

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