TOI-700 e

概要

TOI-700 eは、地球から約102光年離れた、かじき座の方向にある恒星TOI-700の周囲を公転する太陽系外惑星の一つです。2023年にその存在が確認されたこの惑星は、地球と似たサイズと質量を持つ地球型惑星である可能性が高く、特に、液体の水が存在しうる領域とされる「ハビタブルゾーン」内に位置していることで注目されています。主星であるTOI-700はM型矮星と呼ばれる種類の恒星で、太陽よりも小型で温度が低い特徴を持っています。TOI-700系には、TOI-700 eを含め、少なくとも4つの惑星が見つかっており、その中でもTOI-700 dとTOI-700 eの2つがハビタブルゾーン内を公転していると考えられています。

発見の経緯

TOI-700系における惑星探査は、NASAのトランジット系外惑星探索衛星（TESS）によって進められました。TESSは、恒星の手前を惑星が通過（トランジット）する際に発生するわずかな光量の変化を捉えることで、惑星の存在を示唆する信号を検出します。

既に2020年には、この恒星の周囲に3つの惑星（TOI-700 b、TOI-700 c、TOI-700 d）が存在することが確認されていました。しかし、4番目の惑星となるTOI-700 eの発見は、これらとは同時には至りませんでした。

TOI-700 eに繋がる最初の惑星候補信号は、2021年7月に検出され、同年11月には「TOI-700.04」としてTESSの惑星候補リストに追加されました。この時点での観測データから、TOI-700.04は約27.8日周期で主星を公転しており、以前発見されたTOI-700 dよりも内側の軌道を回っている可能性が示唆されました。

TOI-700.04が実際に惑星であるかどうかの確認には、さらなる観測と分析が必要でした。TESSによる約1年間にわたる追加観測データ（TESSの拡張ミッションによるもの）と、その他のフォローアップ観測データを統合して解析が行われました。その結果、2023年に「TOI-700.04」が確かに惑星であることが最終的に確認され、「TOI-700 e」と正式に命名されました。この確認を発表する論文は、2023年1月9日にプレプリントサーバーであるarXivで公開されました。

TOI-700 eのトランジット信号は、先に発見されていたTOI-700 dなどの他の惑星の信号と比較して非常に微弱でした。これが、最初の観測期間中にその存在を特定できなかった主な理由です。もしTOI-700 eが、主星により近い軌道を公転していたり、あるいはサイズが大きかったりすれば、そのトランジット信号はより顕著になり、初期の観測段階で発見されていた可能性もあったと考えられています。微弱な信号から惑星の存在を確実に検出するためには、TESSの継続的な観測能力と高度なデータ解析技術が不可欠でした。

特徴

TOI-700 eは、その物理的特徴において地球と多くの類似点を持っています。推定されるサイズは地球の約95%と、ほぼ同等です。質量に関しても、約0.845地球質量と予測されており、これも地球に近い値を示しています。これらの特徴から、TOI-700 eは岩石質の表面を持つ地球型惑星である可能性が極めて高いと考えられています。

この惑星は約27.8日という比較的短い公転周期で主星TOI-700の周囲を回っています。主星からの平均距離は約0.1340天文単位（地球と太陽の平均距離の約13.4%）と見積もられています。この軌道位置は、TOI-700のハビタブルゾーン内にあたります。特に、液体の水が惑星表面に存在する可能性が比較的高いとされる「楽観的なハビタブルゾーン」に位置していることが判明しています。受ける日射量は地球が太陽から受ける量の約1.27倍と計算されています。

また、TOI-700 eは主星に近いため、自転と公転の周期が同期している、いわゆる潮汐ロック状態にある可能性が指摘されています。この場合、惑星の片面は常に主星の方を向き続け、もう片面は常に反対側を向くことになります。

TOI-700系には、TOI-700 eの他に、2020年に発見されたTOI-700 dもハビタブルゾーン内に位置することが知られています。TOI-700 dは、より保守的な定義に基づくハビタブルゾーン内にあると考えられています。TOI-700 eが楽観的なハビタブルゾーンにあるのに対し、TOI-700 dが保守的なハビタブルゾーンにあるという違いは、惑星表面に液体の水や大気が存在する可能性について、TOI-700 dの方がより高い可能性を示唆しています。しかし、TOI-700 eについても、その可能性は完全に排除されていません。TOI-700系は、一つの恒星の周囲に二つものハビタブルゾーン内惑星（しかもいずれも地球型と推定される）を持つ、珍しい系として、今後の詳細な研究が期待されています。

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