TOI-715

TOI-715

TOI-715は、地球からおよそ138.5光年離れた宇宙の片隅、とびうお座の領域に位置する恒星です。特に、生命が存在しうる環境、いわゆるハビタブルゾーン内に惑星が発見されたことで、近年の系外惑星探査において重要な研究対象となっています。

恒星の特性

この恒星は、太陽よりも小型で低温な赤色矮星に分類され、スペクトル型はMです。『TOI』という名称は、NASAのトランジット系外惑星探索衛星TESSが観測した注目天体（TESS object of interest）であることを示しています。

TOI-715の物理的性質は、太陽の約23%の質量、約24%の半径を持ち、表面温度はおよそ3075ケルビンです。TESSによる観測期間中、恒星表面の爆発現象であるフレアが確認されなかったことから、この恒星は比較的穏やかで古い世代の恒星である可能性が示唆されています。詳細な年齢には不確実性が伴いますが、おそらく60億年から70億年程度と考えられており、若い赤色矮星に特有の激しい活動期は既に終えていると考えられています。

惑星系の発見

TOI-715の周囲に存在する惑星系は、主にTESS衛星によるトランジット法（惑星が恒星の手前を通過する際に恒星の光がわずかに暗くなる現象を利用する方法）の観測によって明らかになりました。最初の惑星候補の兆候は2019年に捉えられ、スーパーアース（地球より大きく海王星より小さい惑星）の可能性がある天体として公表されました。その後、地上に設置された複数の望遠鏡による詳細な追跡観測が約2年間にわたって行われ、2023年にこの系外惑星の存在が確認されました。

確認された惑星 TOI-715 b

この系外惑星はTOI-715 bと名付けられました。その大きさは地球の半径の約1.55倍で、スーパーアースの範疇に入ります。特筆すべきは、TOI-715 bが主星であるTOI-715の「保守的なハビタブルゾーン」内を公転している点です。これは、惑星の表面に液体の水が存在しうる温度条件が満たされる可能性が高い領域を示しており、生命の存在可能性という観点から極めて重要です。

大気の効果を考慮しない場合のこの惑星の平衡温度は、およそ234 ± 12 ケルビン（約-39℃）と推定されています。トランジット法だけでは惑星の質量を直接測定することは難しいため、TOI-715 bの正確な質量はまだ不明です。しかし、組成によって質量が大きく異なると考えられており、例えば、完全に岩石で構成されていると仮定すると地球の質量の約7倍、もし大部分が水で覆われた海洋惑星であれば地球の質量の約2倍程度になる可能性が推測されています。

もう一つの惑星候補

同じ研究チームは、TOI-715 bに加えて、もう一つ別の惑星候補が存在することを示唆しています。この候補天体は、TOI-715 bよりもさらに地球に近いサイズである可能性があり、この天体もまた、ハビタブルゾーン内（ただし、その外側の境界に近い領域）を巡っていると考えられています。この2番目の惑星候補について、大気の効果を無視した場合の平衡温度は約215ケルビン（約-58℃）と見積もられています。この候補の確認と詳細な性質の解明は、今後の観測に委ねられています。

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