とびうお座

とびうお座（Volans）

とびうお座は、現代の88星座の1つであり、16世紀末に考案された比較的新しい星座です。星座の名はトビウオに由来しており、天の南極に近い位置に存在します。そのため、北緯26°以上の地域に住む人々には、その姿を目にすることが困難です。

主な天体

とびうお座には、特に目立つ星団や星雲、銀河は存在しません。明るい星も最も明るいもので4等星というレベルです。以下は、この星座に属する恒星のいくつかです。

• - α星（3.990等）: A型主系列星であり、「Am星」という化学的特異性を持つ星です。また、ほぼ同じ明るさの星と連星系を形成しているとされます。
• - β星（3.759等）: 橙色の巨星で、この星座で2番目に明るく、4等星に属します。これもとびうお座の魅力の一部です。
• - γ2星（3.746等）: とびうお座で最も明るい星で、橙色の巨星です。6等星のγ1星との連星系を成すとされていますが、両者の距離は少なくとも6光年離れています。

星団・星雲・銀河

とびうお座の注目すべき天体の一つに、AM 0644-741と呼ばれる環状銀河があります。これは、天の川銀河から約2億9800万光年離れた位置にあり、1960年にエリック・マーヴィン・リンジーとハーロー・シャプレーによって発見されました。この銀河の中心部にはレンズ状の銀河が存在し、特異な構造を持っています。

由来と歴史

とびうお座の歴史は、ドイツの法律家ヨハン・バイエルが1603年に発表した星図『ウラノメトリア』で広まりましたが、実際の起源はそれ以前にあります。1598年、オランダの天文学者ペトルス・プランシウスがトビウオを描いた天球儀を制作し、それが後に星座として認知されます。このプロジェクトは、オランダの航海士らの観測記録をもとにしています。彼らは、この星座に「Viegenden Vis」という名前を付けました。

1603年にバイエルは、プランシウスが描いた星座の位置を基にラテン語名「Piscis Volans」を設定しました。この名称はしばらくの間使用され続け、19 世紀半ばには英国の天文学者ジョン・ハーシェルにより「Volans」に改名されました。この変更は、星座の公式の名称として定着しました。

星座に付けられたギリシア文字の符号は１８世紀の天文学者ニコラ＝ルイ・ド・ラカイユによるもので、彼は当時の南天の星座に新たに符号を付け加えました。1922年、国際天文学連合（IAU）が形成された際、この星座も正式に認定され、星座名は「Volans」と決まりました。

中国におけるとびうお座

中国では、歴代王朝の天文書でこの星座の記録は少なく、三垣や二十八宿には含まれていませんでした。初めての記載は明の時代の1631年頃に遡ります。当時、イエズス会士が編纂した天文書『崇禎暦書』において新たに記されたのが最初です。この星座は「飛魚」という星官に配されており、現代中国でも飛魚座と呼ばれています。

日本における呼称

日本では明治時代末期から「飛魚」という訳語が使われており、1910年に刊行された天文学会の会誌を通じて確認されています。その後もさまざまな改訂を経て、1952年には「とびうお」という表記が定着しました。この名称は今でも使用され続け、広く知られています。

とびうお座は独特な立ち位置を持つ星座であり、それにまつわる神話や伝承は存在しませんが、星座の成り立ちや歴史は天文学の興味深い一部分を形成しています。

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