TOI-755

TOI-755星系について

TOI-755は、地球からおよそ346.5光年（約106.2パーセク）の距離に位置する恒星です。この星は、南天の星座であるケンタウルス座の方向に見えます。別名HD 110113としても知られています。

この恒星は、スペクトル分類でG型主系列星に分類されており、一般には黄色矮星と呼ばれるタイプの星です。その特徴は、私たちの太陽とよく似ています。具体的には、表面温度は約5,730ケルビン（摂氏5,460度）であり、これは太陽の表面温度に非常に近い値です。また、質量も太陽と同程度であると考えられています。このような性質から、TOI-755は太陽の「兄弟」のような存在と言えるでしょう。

惑星系の発見

TOI-755星系において、その周囲を公転する2つの太陽系外惑星、TOI-755 bとTOI-755 cの存在が確認されたのは、比較的最近の2021年のことです。これらの惑星は、異なる観測手法を組み合わせることで発見されました。

惑星TOI-755 b

まず、NASAの宇宙望遠鏡TESS（トランジット系外惑星探索衛星）による観測で、惑星候補の兆候が捉えられました。TESSは、恒星の手前を惑星が周期的に横切る際に発生するわずかな明るさの低下（トランジット）を検出することで、惑星を発見するミッションです。

TOI-755星では、約2.54日の周期で恒星の明るさが410ppm（百万分の410）ほど暗くなる現象が観測されました。このトランジット信号から、最初の惑星候補としてTOI-755.01という名称が与えられました。後に、この候補が惑星であることが確認され、正式にTOI-755 bと名付けられました。「TOI」という名称は、TESSによって検出された「TESS object of interest」（TESSによる注目天体）であることを示しています。

TOI-755 bは恒星の非常に近くを公転しているため、表面温度が極めて高くなっています。計算によると、その温度は1,570ケルビン（摂氏約1,300度）を超えると推定されています。このような高温であることから、その質量やサイズが海王星のような氷巨大惑星に似ている可能性があり、ホット・ネプチューンというカテゴリーに分類されると考えられています。

惑星TOI-755 c

TOI-755 bの発見に続き、チリにあるラ・シヤ天文台の高精度視線速度系外惑星探査装置HARPS（High Accuracy Radial velocity Planet Searcher）を用いた追加観測が行われました。この観測では、ドップラー分光法という、惑星の重力が恒星をわずかに揺らす動きを捉える手法が用いられました。

HARPSによる観測データからは、TOI-755 bとは異なる、約6.75日の周期を持つ別の信号が検出されました。この信号が、もう一つの惑星TOI-755 cの存在を示唆しました。TOI-755 cもまた、恒星の比較的近くを公転しているため、表面温度は1,260ケルビン（摂氏約990度）と非常に高温です。この高温であることから、TOI-755 cもTOI-755 bと同様にホット・ネプチューンに分類されます。

興味深いのは、TOI-755 cはTESSによって観測されるようなトランジットを起こさないとされている点です。これは、惑星の軌道面が地球から見て恒星の手前を横切る角度になっていないことを意味します。

TOI-755星系は、私たちの太陽に似た恒星の周囲に、非常に高温なホット・ネプチューンが複数存在するという点で、太陽系とは大きく異なる惑星系の一例として、今後の詳細な研究が期待されています。

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