TOI-763

TOI-763

恒星の概要

TOI-763は、地球からおよそ95.4パーセク（約311光年）の距離に位置する恒星です。スペクトル分類はG型であり、私たちの太陽に似た特徴を持っています。ただし、質量やサイズは太陽よりもやや小さいと考えられており、年齢も太陽より古いと推定されています。興味深い点として、TOI-763に含まれるヘリウムよりも重い元素の量、いわゆる金属量は太陽とほぼ同じレベルであることが分かっています。この恒星は、トランジット系外惑星探索衛星TESSによる観測プロジェクトで特定された天体の一つです。

惑星系の発見

2020年8月、TOI-763の周囲を公転する複数の太陽系外惑星の存在が明らかになりました。この発見は、複数の観測手法を組み合わせることによって実現しました。NASAのTESS衛星によるトランジット観測と、地上の望遠鏡を用いたドップラー分光法（ラジアルベロシティ法）が主な貢献をしています。この時点では、2つの惑星TOI-763 b、TOI-763 cが確定され、さらに1つの惑星候補TOI-763 dが報告されました。

TOI-763惑星系

確認された惑星であるTOI-763 bとTOI-763 cは、どちらもそのサイズから海王星に近い「海王星型惑星」に分類されています。これらの惑星は、TESS衛星が捉えた主星のわずかな減光、すなわち惑星が恒星の手前を通過（トランジット）する様子を観測することで発見されました。

TOI-763 b: 最も内側を公転する惑星です。その公転周期は約5.6日と非常に短く、主星のすぐ近くを回っていることが分かります。
TOI-763 c: bよりも外側を公転しており、その周期は約12.3日です。こちらも比較的短い周期で恒星を周回しています。

一方、惑星候補とされているTOI-763 dは、主星のスペクトルのわずかなドップラーシフト、つまり主星のふらつきを検出するドップラー分光法によってその存在が示唆されました。TOI-763 dの公転周期は約47.8日と見積もられています。しかしながら、TESSによる光度曲線データの詳細な分析からは、TOI-763 dによる明確なトランジット信号は検出されていません。これは、軌道の傾きがトランジットを起こす角度になっていないか、あるいはまだ確認が必要な状況であることを示唆しています。

観測手法について

今回の惑星発見に用いられた主な手法は以下の通りです。

トランジット法: 惑星が恒星の手前を通過する際に恒星の光がわずかに減光する現象を観測することで、惑星の存在やサイズ、軌道傾斜角などを推定する方法です。TESSのような宇宙望遠鏡がこの観測に適しています。
ドップラー分光法: 惑星の重力によって恒星がわずかに揺れ動くことで生じる、恒星の光のドップラー効果（スペクトル線のずれ）を観測する方法です。これにより、惑星の質量（下限値）や公転周期などを知ることができます。

TOI-763惑星系は、これらの異なる観測手法を組み合わせることで、その存在と特性が明らかになった事例と言えます。特に、トランジット法で見つかった惑星とドップラー分光法で見つかった候補が存在することは、系全体の理解を深める上で重要な情報を提供しています。今後の追加観測によって、TOI-763 dが真の惑星であるか、そしてTOI-763系全体の詳細な構造がさらに解明されることが期待されます。

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