TOKYO FIST

TOKYO FIST

『TOKYO FIST』（トウキョウフィスト）は、1995年に公開された日本の長編映画。監督は、『鉄男』シリーズなどで国内外にその名を轟かせた塚本晋也が務めた。東京国際ファンタスティック映画祭やバンクーバー国際映画祭にも出品され、強烈なインパクトを残した作品である。

本作は、塚本監督が一貫して追求してきたテーマ、「都市と肉体」の関係性をさらに深く掘り下げた作品と言える。特に、暴力と肉体改造という要素を前面に押し出し、そこに人間の欲望と倒錯した愛情が絡み合った、異様な三角関係を織り交ぜることで、独特の世界観を構築している。

監督の実弟であり、元プロボクサーという経歴を持つ塚本耕司が、物語の鍵を握るライバル役として出演。その迫真の演技は高く評価され、第69回キネマ旬報ベスト・テンにおいて新人男優賞を受賞する快挙を成し遂げた。作品自体も同ベスト・テンで第10位にランクインしており、その年の日本映画界における重要な一本として位置づけられている。

あらすじ

物語は、ごく普通の保険会社のサラリーマンである津田義春が、偶然ボクシングの試合会場を訪れたことから始まる。そこで彼は、高校時代の後輩である小島拓司と思いがけない再会を果たす。二人の間には、かつて共通の女友達を失った過去があり、それ以来連絡を絶っていた。この再会を機に、ボクサーとなった小島は、津田の婚約者であるひづるに対して執拗な誘惑を開始し、さらには津田自身を挑発する。激しい怒りに駆られた津田は、小島のアパートに乗り込むが、あっけなく叩きのめされてしまう。この屈辱的な敗北が、津田の人生を大きく変えるきっかけとなる。彼は肉体を鍛え直し、小島を見返すため、ボクシングジムに通い始める。一方、ひづるは津田のもとを離れ、小島と奇妙な共同生活を送り始める。ここから、常軌を逸した、凄まじいまでの三角関係が展開していくことになる。

キャスト

本作には、個性豊かな俳優陣が集結した。

津田義春 - 塚本晋也: 主人公。平凡なサラリーマンからボクシングにのめり込み変貌していく男を演じる。
ひづる - 藤井かほり: 主人公の婚約者であり、三角関係の中心となる女性。その複雑な心理と行動を表現する。
小島拓司 - 塚本耕司: 主人公のライバルとなるボクサー。監督の実弟であり、元プロボクサーというバックグラウンドを持つ。
白田会長 - 輪島功一: ボクシングジムの会長。元世界チャンピオン。
長谷 - 六平直政
大泉 - 竹中直人
入れ墨師 - 田口トモロヲ

その他、宮田正明、柚木健吾、雑賀俊光、飯田正人、叶岡伸、塩田時敏、松本コンチータ、三留まゆみ、武藤起一、小松沢陽一、ジュリー・ドレフュス、松沢呉一らが出演している。

スタッフ

塚本晋也は本作で監督を務めただけでなく、脚本、プロデューサー、撮影、照明、編集をも兼任しており、その多才ぶりと作家性が強く反映されている。原案は斎藤久志と塚本晋也。美術は塚本晋也、小出健らが担当。音楽は石川忠、録音は川島一郎が手掛けた。

受賞

本作は国内外で高い評価を受け、数々の賞を受賞している。

1995年 サンダンス・フィルム・フェスティバル・イン東京 グランプリ
1996年 ロカルノ国際映画祭 ヤング審査員特別賞
第69回キネマ旬報ベスト・テン
新人男優賞（塚本耕司）
日本映画 第10位
第10回高崎映画祭
最優秀監督賞（塚本晋也）
* 最優秀助演女優賞（藤井かほり）

『TOKYO FIST』は、塚本晋也監督の作家性が爆発したバイオレンス・アクションであり、人間の内面に潜む狂気や欲望、そして肉体というプリズムを通して映し出される都市の現実を、容赦なく描き出した作品として、今なお強い印象を与えている。

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