TRAPPIST-1c

TRAPPIST-1c（トラピスト・ワン・シー） は、太陽系から約39.4光年離れた、みずがめ座の方向にある太陽系外惑星です。この惑星は、超低温の赤色矮星であるTRAPPIST-1と呼ばれる恒星の周りを公転しており、TRAPPIST-1系に存在する複数の惑星の一つとして知られています。その発見は2016年、TRAPPIST（Transiting Planets and Planetesimals Small Telescope–South）計画によって行われ、主星の手前を惑星が通過する際に起こる恒星の光のわずかな減光を捉えるトランジット法という手法が用いられました。

TRAPPIST-1cは、地球と比較して大きさと質量が近い、「地球型惑星」に分類される岩石質の惑星であると考えられています。詳しい観測に基づくと、その大きさは地球の約1.095倍と、ほぼ地球と同じスケールです。質量については、初期の観測結果によって若干のばらつきが見られましたが、2018年2月に発表されたより高精度な観測データからは、地球の約1.156倍という値が示されています。

質量の測定精度が向上したことで、惑星の密度と表面重力も詳細に算出できるようになりました。TRAPPIST-1cの密度は地球の約0.883倍、表面での重力の強さは地球の約0.966倍であることが判明しています。地球と比べてわずかに低い密度を持つものの、その値からTRAPPIST-1cは地球と同じように岩石を主成分とする固体惑星であると推測されています。この密度と主星からの距離の近さなどから、液体の水からなる海や厚い氷の層、あるいは金星のような非常に厚い大気は存在しない可能性が高いと考えられています。

TRAPPIST-1cが主星TRAPPIST-1から受ける放射エネルギーは地球が太陽から受けるエネルギーよりもかなり大きいですが、TRAPPIST-1が赤色矮星であり太陽よりはるかに低温であるため、TRAPPIST-1cの表面温度は極端には高くないと考えられています。しかし、主星からの距離は約0.0158天文単位（約237万km）と非常に近く、これは地球から月までの平均距離の約6倍に過ぎません。そのため、TRAPPIST-1cはわずか約2日半という極めて短い周期で主星の周りを一周しています。TRAPPIST-1cは、同じTRAPPIST-1系内の他の惑星、特に内側の惑星TRAPPIST-1bとは8:5、外側のTRAPPIST-1dとは5:3という整数の比に近い公転周期を持ち、重力的な相互作用によって互いの軌道が安定に保たれている軌道共鳴の状態にあることが分かっています。

TRAPPIST-1cの大気に関する研究も進められています。2016年5月4日には、TRAPPIST-1cが内側の惑星TRAPPIST-1bと共に同時に主星の手前を通過する現象が観測されました。このトランジットの様子は、ハッブル宇宙望遠鏡を用いて詳細に調べられ、そのデータからTRAPPIST-1cの大気成分を探る試みが行われました。この時の観測では、大気の具体的な化学組成を特定するには至りませんでしたが、少なくとも木星のようなガス惑星が持つ水素を主成分とするような、広がった厚い大気は存在しないことが示されました。

より強力な観測能力を持つジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡（JWST）を用いた観測も行われています。2023年6月に発表されたJWSTによる観測データは、TRAPPIST-1cの昼側の表面温度が約110℃（約380ケルビン）であることを明らかにしました。この比較的高い温度は、熱が惑星全体に効率的に再分配されていないこと、つまり、熱を惑星全体に循環させるような厚い大気が存在しないことを示唆しています。これは、太陽系の金星のように強い温室効果をもたらすような分厚い大気を持たないという研究結果と一致しています。ただし、完全に大気が存在しないわけではなく、薄いながらも大気が存在する可能性については、引き続き探求が行われています。

総合すると、TRAPPIST-1cは地球に似た大きさと質量を持つ岩石惑星ですが、主星に極めて近い軌道を公転しており、その環境は地球とは大きく異なります。厚い大気や液体の水の存在は否定的な見方が強いものの、薄い大気の可能性や、惑星の組成、形成過程など、今後も詳細な観測によってその性質が明らかになっていくことが期待される興味深い太陽系外惑星です。

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